六連発のLove Song

※カラオケボックスにて。リョウ・香・冴子・麗香・海坊主・美樹・ミック・かずえ、計8人の会話劇。


香「助かったわ。今日このお店安くなってて」
美樹「ありがとう香さん、よく気づいたわね」
ミック「日本のこの『カラオケ』って文化は興味深いね。教わった時は驚いたよ」
冴子「麗香はまた新しいの覚えたのね。熱心だこと」
麗香「探偵業やってると自然にね。これで一通り歌ったかしら」
リョウ「海坊主。お前も何かやれよ。注文用のタッチパネルばっか触ってないで」
海坊主「リハビリだ。邪魔するな」
かずえ「あら? 次の曲入れた人って誰ですか? もう始まってますよ」
リョウ「なら俺、代わりに歌っとこうか?」


『Nothin' On You』


リョウ「……ま、こんなもんかね。次入れる奴は気をつけろよ」
冴子「昔から知っててもびっくりするわね。リョウのこの歌唱力は」
麗香「リョウの今の洋楽、聞いた事はあるわね。あのラップ、何て言ってたか聞き取れた? 姉さん」
ミック「はあ。例によって、まどろっこしい真似を」
リョウ「何の事だよ、ミック」
ミック「カオリ。今のはアメリカで流行った曲でね。実は熱烈なラブソングなんだ」
香「そうなの。教えてくれてありがとうミック」
美樹「あ、そうか。そういう事ね」
リョウ「何だい美樹ちゃん。その意味ありげな目は」
美樹「ねえ冴羽さん、次は私からリクエストしていい? 皆もちょっと考えて」


『千の夜をこえて』
『ラブレター』
『コイスルオトメ』
『告白』


リョウ「なあ。お前ら、俺を使って遊んでないか?」
ミック「いやいや! 俺たちはお前を褒め讃えてるんだ」
美樹「凄まじい履歴ね。千の夜をこえて、ラブレターが臆病風に吹かれて、
   コイスルオトメになって、水晶体から告白して」
かずえ「でも、まさかこんなに。冴羽さんのレパートリー、どれだけあるんです?」
リョウ「ふっふっふ、リョウちゃんの頭脳にはね、この世のあらゆる曲が入ってんのよ。
    もっこりを賭けてもいい、俺に不可能な歌はないと!」
冴子「それはまた大きく出たわね。その言葉に二言はなくて?」
リョウ「何だ冴子。お前こそ、そんな事言うなら覚悟しろ。借りを全部払うくらいは考えてもらうぜ」
冴子「じゃ、こうしましょ。私たちが選ぶ曲で満点を出せたら、あなたの要求を呑む。
    さもなければ、こっちの仕事をタダ働きしてもらう」
リョウ「その勝負乗った!! 見せてやるよ俺の本気」
冴子「というわけで。麗香お願い」
麗香「わ、私?」
冴子「私が勝ったら、あなたにもリョウを雇わせてあげるから。ね?」
かずえ「何だか……変な事になってない、ミック?」
ミック「そうだな、論点がズレてるような」
美樹「それに、このままだと延長になっちゃうわ。香さんいいの?」
香「うーん? 楽しいのは、いいと思う」
美樹「あ。かなり酔ってるわねその顔」
麗香「なら、そうね。前に依頼で知ったやつ。これなら……!」


『乙女の祈り』


冴子「……責任とりなさいよ麗香。いったい何を召喚したの」
麗香「けど姉さん、普通歌えるって思う? 大の男が、TVアニメの女の子が歌ってる曲を!」
美樹「ねえファルコン。コレ吹き替えじゃないわよね」
海坊主「落ち着け美樹。声の本質は変化していない。あくまで表層的な声帯模写だ」
かずえ「それより待って、そもそもコレ、二人分の声で歌ってない!?」
ミック「リョウならこれくらい簡単さ、カズエ。昔の事件では、同時に3役こなしてた」
麗香「そ、そんな事よりどうすんの姉さん、この調子だと満点でもおかしくないわ。音ピッタリ合ってるもの」
冴子「大丈夫。最終手段があるわ。ほら香さん、起きて」
香「んー? ああ……キレイな声ね。素敵」
リョウ「!!!!」




きぃぃぃん、ざざざざ!



海坊主「くっ、何だ今のハウリングは!」
リョウ『
すまん、マイク落とした
かずえ「え?」
麗香「今の何!?」
美樹「やめて冴羽さん、可愛い声で言わないでー!」



後日談。リョウは声が元の調子に戻るまで、香から発声禁止令が下された。

リョウ
あの……香?
香「ダメよリョウ、お願いだから黙ってて。……ぷっ」




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