≪エピローグ≫


「知ってる? 『Black Star』が守られたって」

翌日の、高校からの帰り道。青子は全開の笑顔でオレに話しかけてさた。
オレは目を泳がせて、

「まぁな。一応、新聞で」

「それじゃ、その宝右を守ったのが誰か知ってる?」

「へ?」

「聞いて驚かないでよ」

と前置きしてから、青子は自分の方がよっぼど驚いた顔で、

「まだ小学1年生の男の子なんですって!」

「はぁ」

「ビックリしないの?」

「だから『新聞で知ってる』って言ってるだろ。
頼むからあんまり超音波で喚かないでくれよ。
頭は痛いわ洟は出るわで、今辛いんだから」

「風邪引いたの? この暖かい時に。健康管理も出来ないなんて、まるで子供ね」

「ちげーよ! オレはただ、例のセリザベスの見物に行っただけで」

「それがどうして風邪なのよ?」

「だから、その。港で足滑って、あの」

しどろもどろな説明が、情けないクシャミに遮られる。
青子は眉を寄せた。今まで以上の大声で、

「まーったく! セリザベス号を見物に行って海に落ちるなんてバッカみたい」

「うっせーなぁ……」

文句なら、あの年齢不明のガキに言ってくれ。
アイツのせいで海から逃げるしかなかったんだよ!

──って、正直に言えたらどんなに楽か。

ああ……最近、運悪いのかなぁ。船では船で痛かったしさ。
そうそう、ガキで思い出した。
アイツと工藤って奴との関係の調査。アレは完全に行き詰まっていた。
なんでもジイちゃんによると、アイツの個人データが全然ドコにも
見つからないとか何とかって……オーイ、それじゃアイツは宇宙人か何かか?

「!」

唖然となった。今オレ達の後ろを歩いてる奴等。女三人に子供一人。
あの三人じゃねーかよ。ホント世間て狭いな。
オレは半ば呆れて、少年の様子を見やった。
その姿にダブって、あの夜の幻が再び見えた──ような気が、オレにはしたのだった。


〈了〉





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