Backstage 2  (灰原哀編)

コナン「皆様、前回はお見苦しい所をお見せしまして大変申し訳ありませんでした。
     深く慎んで、心よりお詫び申し上げます。
     ホラ、お前もさっさと頭下げろよ、服部!」

平次「せやから、何でオレらが謝らなあかんねん。何も悪い事してへんのに」

コ「話を途中で放り出した時点で充分悪い。
  ったく、無責任極まりねーんだから。司会役が聞いて呆れるよ」

平「ホンマどうしようもない奴っちゃな、うん」

コ「てめーで言うなよ! 大体このシリーズ続けたがってるのはお前――」

平「主役はお前。このシリーズの言い出しっぺもお前」

コ「うっ……」

平「で、やっぱり来てくれへんのん? その、哀ちゃんとか言う子」

コ「みたいだな。まぁ当然だろ。それに、あんな奴わざわざ呼んだところで」

哀「私がどうかした?」

コ「わっ!?」

平「じょ、嬢ちゃん、あんたドコからわいて出たっ!?」

哀「ひとを微生物みたいに言わないでくれる?」

コ「で、でもお前、こんなトコ来る暇なんかないって言ってなかったか? なのに」

哀「私も来たくて来たんじゃないわよ。でも吉田さんが、
  どうしても行ってあげてって言うから、顔だけは出そうと思って」

コ「はぁ」

哀「ま、せいぜい頑張ってね。それじゃ」

平「コラコラ、せっかくのゲストが消えてどないすんねん――
  て、オレ前も言うたな……こんな台詞」

哀「だって、話す事なんて特にないもの。ええと、確かあなたは」

平「大阪在住、西の高校生名探偵・服部平次や。
  銭形でも半蔵でもあらへんから、よーく覚えとくようにな?」

コ「……前回のが相当響いてるな。顔笑ってても、目が笑ってねーでやんの」

哀「大丈夫よ。あなたの事なら、工藤くんからちゃんと聞いてるわ。
   『色黒で自信家で目付き悪くてお節介で生意気な男だけど、悪い奴じゃない』って」

コ「お、オイ灰原……」

平「あのな、お前一体どういう紹介の仕方を……て、
  ん? 待て嬢ちゃん、あんた今コイツの事、何て」

コ「そんな驚く事ねーだろ。コイツはオレと同類。例の事件の関係者なんだから」

平「あ、そうやったな。ちゅう事は、つまり」

コ「そう。つまり、組織の――」

平「実は女子高生名探偵だとか」

コ「!? なっ……何でそうなるんだっ!?」

平「冗談やよ。何も引っくりこける事ないやろ、この程度のボケで」

コ「お前の言い方は冗談に聞こえねーんだってば。いい加減にしろよ」

平「イヤイヤ、大阪人たるもの、常に相手の意表を突いた事をかまさんと」

コ「突かなくていい、突かなくて! ったくもう……。
  って灰原、お前さっきから何ジロジロ見てんだよ」

哀「別に。仲がいいんだなと思って」

コ「仲ぁ!? どういう意味だよ、ソレ」

哀「言葉の通り。あなた達、確かにいいコンビよ。客観的に見ても」

コ「あのな、バカなこと言ってるなよ、灰原。何だってオレがこんなのと」

平「こんなのとは何や。オレはいつでもお前の事を一番に考えとんのに」

コ「だ・か・ら、そういう表現は使うなって言ってるだろ。
  わざわざおかしな方向に持っていこうとするんじゃない!」

哀「おかしな方向って?」

コ「え」

平「オイ、ここは嬢ちゃん、サラっと流さな……」

哀「ああ……、『既存のテキストから複数の登場人物を任意に抽出し、それらが
  恋愛関係に置かれていると仮定した上で展開される作品、もしくはそのジャンル』
  への方向の事ね。
  アラ、どうしたの? 二人ともボーッっとして」

コ「イヤ……そんな厳密な定義聞いたの初めてだったから」

平「それ以前に、よう舌噛まんで言えたな、今の長台詞。それも一息で」

哀「これくらい常識よ。ナンセンスな議論をしてる暇があったら覚えとくのね」

コ「ナンセンス?」

哀「分からない? 私たちはフィクション――それもミステリの作中人物なのよ。
  事件がなければ動けない。書き手がなければ存在すら出来ない。そんな私たちが、
  描かれ方に文句を言ったところで、状況は何も変わらないわ。違う?」

平「違う? て真顔で聞かれても、なぁ……」

コ「だから言ったんだよ。コイツは呼ばねー方がいいって」

哀「アラ、冷たいのね。せっかく今日は面白い物も持って来てあげたのに」

コ「面白い物って、その小瓶か?」

哀「ええ。博士と共同開発した、一時的な成長促進剤よ」

コ「せ……!? って事は、ソレを飲めば」

哀「マウスはちゃんと大人になったわ。
  目立った副作用も認められないし、飲んでも取りあえず害はないわね」

コ「ほ、ホントにホントか!?」

哀「要る?」

コ「要らねーわけねーだろ! じゃあ服部、オレ先に帰るから。後ヨロシク」

平「よ、ヨロシクって……ったく、あのアホ、勝手に飛び出して行きよって。
  って嬢ちゃん、あんた何変な顔しとるん?」

哀「いえ、別に。ただ、一つ言い忘れちゃって」

平「何を?」

哀「あの薬、成人には確実になれるはずなの。でもキッチリ17歳に戻れる
  わけじゃないのよね。多分20代くらいになるんじゃないかしら」

平「……………………へ?」

(某日某所より実況中継)





Backstage 3  (怪盗キッド編)へ続く

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