「……はあ……はあ……。……くそっ! なんでぼくがこんな目に……」
と、冒頭で呻いているのは、主人公の成歩堂。
……そこまでだ!……。
……もう、逃がしませぬぞ……成歩堂龍一ッ!
バッハ作曲の「トッカータとフーガ ニ短調」(←リンク先で音楽が流れます)をBGMに、
逃げる成歩堂の前に立ちはだかる巨大な謎の影、とゆーか裁判長。
……あなたを生かしておくわけには行かない……。
…あなたを弁護士としては認めません…。
問答無用とばかりに振り下ろされる巨大な木槌が、容赦なく成歩堂に襲いかかって――。
暗転。
成歩堂「……ひ、ひどいユメだった……」
いきなり夢オチかい。
成歩堂「開廷前に、イネムリなんてするもんじゃないな……」
朝っぱらから、青スーツの上着を脱ぎ、裁判所の休憩室にあるソファで、
堂々と横になって寝こけてた成人男性。(職業:弁護士)
なお、夢の中でトッカータが流れていたのは、
成歩堂が持っていた携帯電話の着信メロディのせいだったようで。
ともあれ。そうして目を覚ました成歩堂に――――人知れず迫る、謎の男。
その男は、抱えていた消火器を成歩堂の頭に叩きつけてから、独り呟いた。
「悪く思わないでくれたまえよ……センセイ」
で、その数分後。
同じく裁判所の中にて。
成歩堂「………………アタマが……ズキズキする……」
ああ、良かった。生きてた。
そんな彼の前に、何故か婦人警官が。
「おはよーございますッ!」
「今日はスズキ マコ、成歩堂さんにこの命を預けますからねッ!」
「約束してくれましたよね! 必ず無罪にしてくれるって!」
「『ぼくにまかせろ!』のヒトコト。……あの、成歩堂龍一がッスよ!」
どうやら彼女――須々木マコは、今回の事件の依頼人、そして成歩堂の大ファンらしい。
傍聴にもよく来ているそうだ。
(なお、このキャラ、個人的にはお気に入りの一人。
困ってる時の、眼鏡越しに上目遣いする仕草、好みです)
ただ、普段なら成歩堂、そろそろこの辺りで、
「あ、ああ。そうだったね。うん」
とでも言ってくれるはずなのに。状況説明してくれるはずなのに。
今回に限って、一段と反応が鈍い。鈍すぎる。
まるで、生まれて初めてこの作品をプレイしてる人(とゆーか、1周目当時の私)そのものの態度。
成歩堂「あの……悪いんだけどさ……。どなたでしたっけ? きみ」
いくら何でも、この台詞。
カンベンしていただく。……私も知りたい。
成歩堂「……人ちがいだよ、弁護士なんて。だってぼくは……」
「……ぼくは………………ダレだ?」
…………………………………………ハイ? (←思考停止状態)
まぁ確かに、作者の意図は分からないでもないが。
『逆転裁判』の第1話は、毎回チュートリアルを兼ねているのだから。
つまり、たとえ続編の第2作であっても、
第1話に限っては、主人公(=プレイヤー)は素人レベルでなければならない。
言うなれば、主人公の弁護士としての経験を、一旦「リセット」する必要があるのだ。
……と、いろいろ理屈を言ってもみるが。それでも唖然呆然の始まり方。
前代未聞。冒頭で記憶喪失になってる主人公。(成人男性。職業:弁護士)
「リセット」するにも程があるだろ。いくら何でも。
信じられない事態に、茫然自失の私、じゃなかった成歩堂。
あれよあれよと言う間に、気づいたら始まってしまった審理。
今回、成歩堂に対する相手は、例によって亜内検事。
因みにこの時、裁判長の席をよく見ると、背景の柱がグレードアップしている。
第1作では単に書かれていただけの模様が、この第2作では立体的な浮彫(レリーフ)に。
裁判長「できていますか、準備の方は?」
こう訊かれて、当然「いいえ」を選んでみる。(だって出来てないもん準備なんて)
で、その結果は。
……所詮は無駄な抵抗でした……。
亜内「ふっふっふっ……。ひさしぶりですね、成歩堂くん」
「ムネを借りるつもりでかかってきなさい」
そりゃこっちの台詞だ、と言ってやりたい。第1作での亜内を知ってる者としては。
最初の証人は、例によって例の通り。イトノコ刑事。
話を聞くと、イトノコ刑事は一時期、マコの上司だったらしい。
亜内「くわしいことは、きのうみなさんに提出した報告書に……」
裁判長「それから……きのうの予備審問の際に、
かなり重要な証拠品について、お話がありましたね」
ドンドン進んでしまう、皆の弁論。
私、もとい成歩堂は、ソレをボンヤリと聞いている事しか出来ない。
そのあまりのボンヤリぶりに、とうとうマコが一大決心。チュートリアル役を申し出る。
Rボタン・Lボタンの使い方を、一通り教えてもらえる。
しかし……。
警察官とは言え、「素人からチュートリアルを受ける弁護士(プロ)」ってのも、
如何な物かと思いますが。
閑話休題。イトノコ刑事の話に戻る。
何でも、被害者のダイイングメッセージに、マコの名字が記されていたという。
もっともコレ、言われたマコ本人としては、ツッコミを入れる気にさえならないレベルのはず。
きっと事あるごとに、「違うッス! 確かにアタシは『スズキ』ッスけど、その『スズキ』じゃないッス!」
と、周りに訴え続けてる人生に違いない。(断言)
てなわけで。何はともあれ、尋問開始。
第1作と同じ要領で、丹念に「ゆさぶる」を行っていく。
なお、この第2作から、尋問でのボタン操作が微妙に変化。
発言を読む手段は、Aボタン連打に限られる。
(第1作では十字ボタンでも良かったが、ソレだと第2作では読めないコメントが出てくる)
そして、やはり第1作と同じ要領で、発言の矛盾に対してAボタンを押した――その瞬間。
成歩堂(なんだ、この感じ……。
気がついたら思わず叫んでいた! ……”異議あり”って……。
それもハラの底から、大声で。人さし指までつきつけて!
感じるぞ……体中にチカラがみちていく!)
と、何だか半分トランス状態のような興奮をおぼえつつ、論を鋭く叩きつける成歩堂。
続いて、イトノコ刑事から、マコと被害者・警察官の町尾守(まちお まもる)との関係を訊く。
糸鋸「”ケッコン”の話も、ボチボチ出ていたみたいッス……」
結婚でなく、実は血痕の話だったりして。
……いや、殺人事件の話題を話してたとかで。
成歩堂「ケッコン……って、トシが8つもはなれてますね……」
そう言う成歩堂だって、例えば真宵とは7つ離れてるのだが。
イトノコ刑事じゃないが、恋人は同級生に限るのか?
そうやってイトノコ刑事を締め上げながら、しみじみ考える成歩堂。
成歩堂(そういえば、こうやってビシバシ人にツッコミまくっていたような気もするなあ……)
冷静に考えると……法廷でのコヤツって、
すこぶる嫌なタイプかもな。もし身近に居たら。実際問題。
かくして、証拠品として提出される、野球のグラブ。
その特徴には、画像を見ると同時に気づけたため、我ながらアッサリ突破。
(けれどコレは、野球を少しは知っていないと、思い当たるのは難しいかも)
第1作なら、この辺りまで論が進めば事件解決。
しかし。第2作は一味違う。
終わったのは、あくまで第1ラウンドに過ぎない。
ココからメインイベント――第2ラウンド突入である。