3.

「それで? それで? 一体どうやって上ったの?」
 まさに興味津々といった様子で、真宵ちゃんは、ぼくに尋ねた。
「別に、大した答えじゃないよ。
 脚立を置けるスペースがあったから、ソレを使って、何とか」
「きゃたつ?」
「ほら。真宵ちゃんが、いつもハシゴとごちゃ混ぜにしてるアレ」
「って、何よ。ごちゃ混ぜって」
 と、むくれる真宵ちゃん。
「あたしに言わせれば、なるほどくんの方が細かすぎるんだってば。
 どっちも同じような物じゃない」
 ……同じじゃないんだけどなあ……。
「でも、驚いたなあ。まさか、はみちゃんがそんな凄い術を使えるなんて」
「うん、そうだね。
 あんな事があったから、ぼくもその後すぐに信じられたんだよ。
 彼女の言っていた、勾玉の霊力って話も」
「大体あたし、全然知らなかったもの。
 倉院の岩座の所に、そんな秘密の場所があるなんて事も」
 ……ソレはどうかと思うけど……。
「ああ……ところで」
 真宵ちゃんは、ふと思い出したように言ってきた。
「その、はみちゃんが創った“道”ってのは、結局どうなったの?
 もしかして……」
「残念でした。彼女には、すぐに塞いでもらったよ。
 あんなアヤシイ物が堂々と事務所にあるってのも、マズイだろうからね」
「なんだ、つまんないの。
 残ってたら、絶対に楽だったのにな。里に帰るのも」
 真宵ちゃんは不満そうな顔で、事務所の天井を見上げた。
「この部屋に、ハシゴを置いといてさ。それで自由に『いってきまーす』『ただいまー』って。
いいな、いいなあ……」
「だから、ハシゴじゃなくてキャタツだって。
 そりゃ確かに、そういう事だったら楽だったんだけど。でも、あんな所じゃあ……」
「え?」
 真宵ちゃんは、目をぱちぱちさせて、ぼくに尋ねた。
「どういう意味? それ。
 もしかして、その“道”が出来たのって、この部屋じゃないの?」
「あ。それはその。……いいじゃないか。もう、過ぎた事なんだし」
「あー。また、そうやって隠そうとするー! 教えてよー!」
 いや。コレばっかりは、そう簡単に明かすわけにはいかない。
 ――ぼくが「事務所」という言葉から、真っ先にイメージした場所が、果たしてドコだったのか。
 真宵ちゃんの追及から逃れるために、ぼくはもう一度、掃除でもしようと、トイレへと向かった。

〈了〉



《※筆者注》
この話は、私の『再会、そして逆転』のプレイ1周目の実体験に基づいています。
新聞記事をGetし忘れたり、肝心な話を聞きそびれたりして、
留置所と倉院の里を、一日に何度も往復。
今も私は、倉院の里には、絶対に「旅の扉」(byド○クエ)が有るに違いない!と信じております。




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