『SNK VS CAPCOM カードファイターズDS』レポート

……ピッ……。(録音媒体、再生開始)

「遅いぞ成歩堂。呼びつけた方が遅れるとは不甲斐ない」
「ぼくが遅いんじゃなくて、御剣が早すぎるんだよ。まだ約束した時刻より前なのに」
「集合は事前行動が鉄則だろう。…………それより今回は何の用だ?
 真宵くん曰く、キミが困っているから助けてやってくれという伝言だったが」
「うん、まあね。この依頼はちょっと、ぼく一人じゃ無理だから」
「依頼?」
「そう。ここのサイト管理人から頼まれたんだ。この場を会話で埋めていってくれってね」
「…………なるほど。それで我々の台詞が、こうして記録されていっているわけか」
「このサイトを始めた時から、どうしても一度やってみたかったんだってさ。
 ここの隣――『異説会』の住人さんたちみたいな、こういう会話の形式を」

「より正確には……、リンク先として世話になっている別のサイト様や、
 何よりゲーム本編原作者が既に執り行っている形式である以上、
 今まで始めるに始められなかったというのが真情だろう。恐らく」

「う」
「ところで。私たちが話すべき事柄というのは、何かあるのか?
 断っておくが、私には、さしたる議題もないのに長話をするような暇は無いぞ」

「それなら大丈夫。このゲームソフトについてレビューすればいいんだ。
 タイトルは……コレ」

「うム。……『SNK VS CAPCOM カードファイターズDS』……か」
「何でも、格闘ゲームのキャラを配したカードでのバトルゲームって事らしいけど。
 ……きみも嫌いじゃないだろう、こういうの?」

「………………何故にそう思う?」
「だって。第1作攻略本の番外編を見る限りじゃあ、
 絶対に集めてそうだもの。あの例のトレカ。……どうなんだ、実際のところ?」

「その件に関しては、ノーコメントとさせて頂くが……。
 キミがそう思いたいならば、そういう事にしておきたまえ」

「じゃ、そういう事にしておいて。さっそく始めるよ。レビュー。
 まず、予備知識として。この『カードファイターズDS』っていうのは、
 カードゲームを使っての世界征服のため、コンピューターのAIを暴走させて
 ビルを占拠した悪の組織と、主人公である少年との戦いの物語であって――」

「…………ちょっと待て」
「何?」
「何なのだ、その難儀な世界観は。
 今時の子供番組でもそのような感覚の展開は無いと思うが。
 そもそも、その悪の組織とやらがビルをジャックしたというなら、
 まずは速やかに脱出したまえ主人公よ。それから警察に通報だ」

「うん。ぼくもそう思う。
 っていうか、ぼく自身、真面目に説明してて虚しいよ……凄く」

「もっとも、我々が物語の世界観に文句を言うのは、ある意味、天に唾する行為だな。
 むしろ重要なのは、カードゲームのシステムの方だ」

「そうだな……。ルールは一見複雑だけど、コツさえつかめばCPU戦は簡単らしい。
 とにかく自分側の場に、相手より多くのカードを並べるようにするらしいんだ。
 で、相手の攻撃をしのいだ後、逆転の総攻撃。この方法で、ほとんど勝てるらしい」

「どうも気になるが、先程から『らしい』が多いな。実際に試していないのか? キミは」
「それが、まだ序盤しか解いてないんだよね、ぼく。……管理人の方はともかく。
 だから、ここからはこのDSの画面を見せて話そうと思って……るん……だけ、ど……」

「どうした成歩堂。続けたまえ、説明を」
「いや……だってその。この『カードファイターズDS』っていうのは、
 格闘ゲームのキャラクターを配したカードでのバトルゲームって事だったよな?」

「ああ、そうだな。30行前の台詞で、キミ自身がそう述べている」
「でも、コレ。今このDSの画面に出てる、主人公側の、このカードの画。
 どこからどう見ても、お前、だよな。――――『御剣怜侍』って」

「まあ、我々もゲーム世界の住人だからな。
 カードなどのアイテムとして扱われる事態もいずれ有るのが自然の摂理」

「う、うん。それは確かにその通り……って、
 いやいやいやいや! コレはあくまでも、格ゲーキャラのゲームなんだろ!?
 でもぼく達は間違いなく、テキスト推理アドベンチャーゲームの人間であって。
 にも関わらず、このカード達の中に存在してるという点は、明らかに矛盾している!!」

「……………………」
「ん? 何だよ、急に黙っちまって」
「……………………はあ」
「だから何だよ。ため息なんかついて。肩なんて竦めて」
「成歩堂。……よもやキサマ、この期に及んで、
 自分の依頼された本当の趣旨を理解していないのではあるまいな?」

「え?」
「このゲームのタイトルを、よく読みたまえ。ちゃんと、“最初から”だ」
「タイトルって……そりゃ、『SNK VS CAPCOM』………………あ。
 ああああああッ! ま、まさか……コレって……」

「左様。要するに、このカードゲームにおける私たちは、推理ゲームの者ではない。
 あくまでも“CAPCOMで創られた”者として処理されて、こうして扱われているのだ。
 でなければ、格闘ゲームのタイトルの区別さえ出来ぬ管理人が、
 このようなゲームソフトなど買うものか。
 だからこそ、このゲームを議題に話し合えと依頼されたのだよ。キミは」

「そういえば……最初にそんな事を言われたような気もするなあ……。管理人から」
「もっと言えば。確かこのゲーム作品については、我々の街の弁護士協会や検事局の
 上層部を通じて一斉に通達がなされたはずだが……。まさかソレも知らんのか?」

「え……ええと、ええと。いやその、ぼく、そういう役所関係の書類を読むのって、
 昔から苦手で。ははは」

「笑ってゴマカすな!
 ……ただ、あの通達は、個別には充分に行き届いていなかったという情報もある。
 そのじつ私も、関連書類には軽く目を通しただけだ」

「ふうん、そうなんだ。
 …………うん。そう。そうだよな。
 でなきゃ、お前がこんなゲームを簡単に受け入れるワケないもんなあ……」

「ム? 何なのだ、その思わせぶりな発言は」
「だってコレ。攻撃されるカードは、炎で焼かれたり氷漬けにされたり撃ち抜かれたり、
 本当にロクな目に遭わないんだから…………。
 わ! よく見たら、CPUの方、千尋さんのカード使ってきてる!
 お前と千尋さんとの直接対決が、今ここに再び!!」

「ほう……。カードの形とは言え、なかなかの演出ではないか。CPUも粋な事を」
「ああもう、何でぼく達がこんな格ゲーの世界に交ざらなきゃならなかったんだか。
 こっちは今日のご飯を何にしようか悩んでるような、ごく慎ましい身だってのに」

「……などと何をしおらしい事を言っているかソコの弁護士。
 ムチやらコーヒーやら、まさしく格闘の如き物理的攻撃までが飛び交う法廷に
 立ってきている身でありながら何を今更」

「そんな事言うんなら。お前も見てみろよ、御剣。自分の描かれたカードの対戦を。
 このボタンを押せば、カードに添えられている解説文も全部読めるから」

「そうか……?
 …………む。むむむむ……む……むゥゥゥッ! こ、コレは……ッ!」

「だろ? やっぱり見てて心臓に悪いっていうか」
「何だこの解説文は! 私の事を紹介するなら、検事である事を記せば足りるだろうに、
 こんな余計な事まで! 折り鶴がまともに折れなくて悪いかッッ!」

「って、そっちの部分なのかよ、お前が怒る論点は!
 ……まあ確かに、このキャラ紹介の文章たちも凄まじいよな。色んな意味で。
 DL6号事件についての事も、微妙にだけど、何だかネタバレしてるし」

「ああ。その辺りに関しては、もとより覚悟の上だ。
 もし万が一、本当に不本意なネタバレ箇所があるならば、
 その時は正当な形で論を組み、心置きなく意見を訴えればそれで済む事」

「あの…………。よりによって、あなたがその言葉を言うと、
 『断固として法的に公訴する』って意味にしか聞こえないんですけれど。御剣検事」

「それに。このゲーム自体にも、制作者の意図とは異なる視点から
 楽しめる要素は非常に多いが。何よりも呆れるしかない対象が、確実に一つある」

「何だよ、ソレ?」
「街中のゲーム店を駆け回り、恥も外聞も捨てて店員に尋ねまくって手に入れた上、
 延々とネットの海を駆け回り、攻略情報を集めまくった上、
 挙げ句にこの我々の会話記録まで録っている――――このサイト管理人自身だ」

「……あ。それは確かにごもっともで……って、だからお前、
 そうやって『話を上手くまとめる癖』、何とかした方がいいぞ。ホントに……」


……ピッ……。(録音媒体、再生終了)


《※筆者注》
以上は、初見の感覚で書いた雑感です。
『カードファイターズDS』の具体的な攻略はこちらに、
解き進めてからの雑感についてはこちらにまとめてあります。
どうぞご参考までに。




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