最後の手紙

あなたの事が好きでした。
尊敬とか、憧憬とか、そんな難しい言葉なんて
吹き飛ぶくらい好きでした。

あなたと一緒に笑えて幸せでした。
あなたと一緒に泣けて幸せでした。

あなたの喜びとともに私はいました
あなたの悲しみとともに私はいました。

あなたからは、たくさんの宝物をいただきました。
ありがとうございました。

ですが、私は気づいてしまいました。
私が求めていたのは、あなたではなかったという事に。
私が求めていたのは、「私の求めているあなた」に過ぎなかったという事に。

その真実を見抜けずに、暗闇に囚われた時もありました。
迷った時もありました。壊れた時もありました。

その暗闇から抜け出せた今だから言えます。
あなたが何を背負っていようと、
あなたからいただいた宝物には、何も罪はないのだと。

ですから、どうか一つだけ、わがままを言わせてください。
あなたを憎ませてください。
あなたに会わなければ良かったと悔やませてください。

あなたを忘れたくないから。
あなたを思い出せなくなる事こそが、何よりも怖いから。
私の最後のその時まで、あなたを思い続けていたいから。

そうやって、忘れさえしなければ、
いつかどこかで、あなたの事を笑顔で語れるような日が、
やって来るかもしれないと祈って。

結びの言葉は書かないままに、この手紙は終わります。






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