葛藤

心がざわざわと動くのは、貴方の事が好きだからと思ってた。
貴方の事が、まだ好きであるからだと。

交わす会話が減っても、共に居る時間が減っても、
それでも耐えようと努めてた。

ずっと心が荒れていた。
たとえ笑顔を作ってても、穏やかなつもりでも、隠せやしない。
台詞の端々に出てしまう、棘。

いま欲しい物は、甘いお菓子なんかじゃない。
苦くていいから、本音を頂戴。
あの時、何があったのか、何を思ったのか。

「何で話してくれないの?」

悩みぬいて考えぬいて。教えてほしいと願い続けて、打ち明けて。
すると貴方は優しい顔で、何にもないよと言うけれど。
ごめん。それが嘘だって事、とっくに分かってる。

許せないのに。それなのに。
いい人なのに。それなのに。
そんな、アンビバレンスに挟まれて。

そんな時。ついに壊れた、最後の砦。
貴方は良かれと思ってしただろう事。残念、それが致命傷。
親切とお節介とは、紙一重である事、ゆめゆめ忘れるなかれ。

どうか知らないでいてくれと祈ってる。
席を外してた私が、暫く蛇口を全開にしてた事を。

やがて瞼が重苦しくなるまで、思いを吐き出した時。
私自身も、自分に嘘をついていた事に気づいた。

ああ、そうか。
私は、貴方を嫌いになったんだ。
そう認めた瞬間、殻が破れた。

私は貴方が好きだった。過去の貴方が好きだった。
だけど、今の貴方は好きでない。それだけの話。

今まで何度も体験してきた事じゃないか。何を嘆く事がある?

そう考える、冷静な自分に戻っていくのが分かる。頭の中で、演算が始まる。
邪魔な暗闇を切り裂くために、武器を鋭く研ぎ澄ます。一閃の光と共に。

最後に残されている、我が武器――その名は理性(ロゴス)。





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