今回の目的は、貸しボート屋の管理人の証言を崩す事――ではない。
狩魔豪「本日の法廷は、これより3分以内で終わるだろう!」
こう予告した狩魔豪は、さっそく貸しボート屋の管理人を召喚する。
ここで普通なら、証人の名前を尋ねるところだが。
狩魔豪「この証人には、数年前より記憶がないのだ。したがって、名前もわからない」
と強引に押しきられ、管理人の証言開始。
さあ今度は尋問だーと思ったその時。
狩魔豪「うおおおおおおおおおおおおおッ!」
いきなり絶叫された。しかも、その理由がコレ。
狩魔豪「……3分たってしまった」
……………………大丈夫ですか??(色んな意味で)
だがしかし。
管理人の証言は、「ゆさぶり」をかければかけるほど、弁護側に不利になっていく。
とうとう終いに、
管理人「間違いないぞお、ユキヒロ!
”まさか撃ってしまうとは”と言ったんだよあの男は!」
狩魔豪「証人! それは御剣怜侍に間違いないか!」
管理人「そいつだあ! ……その、ミツルくんだあ!」
言いたい事だけ言いまくった挙げ句……
管理人、失神。
……………………大丈夫ですか??(色んな意味で)
決定的すぎる証言に、いくら異議を申し立てても、もはや勝ち目はなくて。
裁判長「被告、御剣怜侍に判決を言い渡します!」
この瞬間。表示される漆黒の「あの言葉」を見た瞬間。
思わずゲーム機の電源をOFFにした奴は私です。
普段の自分なら、ここで攻略本に頼るところだが。
『逆転裁判』第1作(GBA版)の攻略本は、ド○クエ公式ガイドブックより情報量が少ない仕様。
そのため、必死に攻略サイトを読み返して、
推理ミスをしてない事を念入りに確認してから再挑戦。
心臓に悪い展開に耐えて耐えて、一体どうなる事かとAボタンを押し続けた、その先。
矢張「ちょっと、待てぇぇぇぇぇぇぇい!」
矢張、超法規的に乱入。
と言いますか……この男、入って来るのが数十秒遅い。
明らかに、裁判長の木槌は打ち鳴らされていたのだから。
閉廷宣言されてしまってから裁判続行って、いくら何でもアリなのか??
それとも矢張、たった今ココに駆けつけたのかと思いきや。
矢張「オレ、さっきから客席で証言を聞いてたんだけどよォ」
傍聴席だ、傍聴席!
矢張「御剣がユーザイなんて、オレ、ナットクできねェんだよ!
オレ、証言するからさ! 聞いてくれよ!」
この矢張の(ムチャクチャな)訴えは、しかし認められ、裁判は一旦休憩に。
その休憩の時間になされた会話。
その1。
成歩堂「おい。御剣」
御剣「…………ム? な、なんだ成歩堂?」
成「なんだじゃないよ。どうしたんだ? ボケーッとして」
御「……い、いや……。ちょっと、な……」
成「?」
その2。
真宵「どうして凶器に、あなたの指紋がついているんですか?」
御剣「……つい、考えなしに拾ってしまったのだ……。特に理由はない」
この時、御剣がボンヤリしていた理由や、御剣が凶器を拾ってしまった理由は、
後に明らかになる。
(明言はされないので、憶測ではあるが)
審理再開。
ココからが、今回の法廷の本題。
裁判の行方は、全て矢張が握っている。
とは言うものの。
矢張の証言は、とにかく「ツッコミどころが多すぎ」(by成歩堂)。
事の時刻を問いただしても、
矢張「オレ、明石の天文台じゃねェんだぞお!」
などと逆ギレしてくるし。
どうにもケッタイな証言に、流石の成歩堂も、丁寧語で通す余裕がなくなったようで。
成歩堂「ちょっと待てよ矢張!」
ココから思わずタメ口に。
成歩堂も狩魔豪も裁判長も呆れ果てる中、矢張だけはハイテンションで証言を続ける。
けれども。この矢張の証言こそが、真相の扉を開ける鍵だった。
成歩堂「見えてきたぞ……」
そう呟いて、成歩堂は真宵に語る。
「トノサマンの事件を覚えてるかい?」
「今回の犯人もね、同じような考え方をしたんだよ……」
我らが成歩堂、今回は私(=プレイヤー)より先に真相を見抜いたか、と思いきや。
成歩堂「これからぼくは、思いつきでこの事件を解決してやる!」
いいのか、ミステリの主人公がそれで。
と言いますか、まだ真相に気づけてないプレイヤーの事まで考えてくれてるゲ(以下略)。
というわけで。成歩堂による、前代未聞の”名推理”が炸裂。
一つずつ、一つずつ、目の前に出された謎を潰していく。
狩魔豪「じゃあ、このボートの上の人影は、いったい誰なんだ!」
……この問いへの答えに詰まった、1周目当時。
今までの話の流れを踏まえていれば、本来なら迷うはずのない選択肢だったのだが。
でもやっぱり、間違えた場合の方が、話としては面白かった――と、再び言い訳。
それでも何とかかんとか、成歩堂は自らの推理を総括。
殺人事件の流れを再現していく。
因みにこの時、事件当夜のボートの様子も表示される。
即ち、コート姿の御剣が。例のヒラヒラも健在で。
ただ、この流れを知る前から当方、素朴な疑問が一つあった。
この事件において、ボートでの向かって右の人が撃ってから、向かって左の人が消える、
というのは実は不自然。
順当に考えれば、撃った直後、ボートは半回転したという事になる。
当然、激しく揺れただろう。
その揺れで、もしや御剣、地震を連想して意識ブラックアウトしたとか?
それで思わず手をついて、それでついピストルをつかんでしまった……と憶測すれば、
辻褄はむしろ合う。
本来の御剣なら絶対に、ハンカチでも使って拾っただろうから。ピストルなんて物は。
まぁ、もっと言ってしまえば、この事件……
発覚直後に、御剣ら関係者たちの硝煙反応を調べれば一発で解決だったわけでして。
真犯人確保はまだしも、少なくとも御剣の無実は証明できたかと。
それとも、もしや『逆転裁判』の時代には、硝煙反応の出ない銃器が存在するとか?
(注:この物語の設定は近未来です)
ともあれ、成歩堂の推理で導かれた結論は。
貸しボート屋の管理人が怪しいという事。
しかも管理人、裁判所から逃走してしまったらしい。
彼を最重要参考人とした上で、判決は最終日へ持ち越される。
閉廷して、ホッとするのも束の間。
御剣「! な……なんだろうか?」
相変わらず、どこかボンヤリしている御剣。その理由が明かされる。
御剣「成歩堂。
ずっと迷っていることがある。キミに話すべきかどうか……。
「もう、時間がない。話してしまって、ラクになりたい。……しかし。
………………。……やはり、今は決心がつかない。………………」
焦らされるだけ焦らされてから、御剣が成歩堂に告げた言葉は……。
御剣「………………私の……悪夢の話だ。私が犯した罪の記憶……」
あまりにも衝撃的だった、初見の当時。
御剣「……殺人……の記憶だ」