今回の目的は、羽美野翔子の無実を証明する事。
開廷直前。
翔子は、巣古森と涼海の関係について、
翔子「あんなヒトデなしの船医、スズ姉ェは相手にしないよ!」
と気炎を吐く。
因みに、翔子ら従業員が持っているTV携帯電話は、
翔子「人間には聞こえない音も記録できる、すぐれものなんだぜ!」
との事だが。
ある種、漫画版『逆転裁判』への挑戦にも感じる。
(「電話での音声」がキーになってる事件がある)
さて開廷。
一人目の証人は、巣古森。
その最初の証言で、とうとう出ました問題発言。
巣古森「シャチ用プールとショーステージは、隣り合った位置にあるんだが……
この二つは、シャチや荷物を運べる”ホイスト”で繋がってるんだ」
………………そこは水路でつなごうよ、常識的に考えて。
だってコレ、人間で例えるなら、
「橋を架ければ歩ける河を、ロープで吊られて運ばれる」みたいな物。
明らかに完全に虐待行為。
後ついでに。
「繋」なんて漢字が台詞で使われてる事に、GBAから解像度が上がった事実を思い知る。
「難しい字はカタカナ」の伝統も、こうして少しずつ変わっていってしまうのか。
単純に寂しい。
ともあれ、今回も定石通り、言葉尻を捕らえて問いつめていく。
被害者を、そしてエールを殺そうとした犯人として。
ところが。
巣古森「ふざけんなッ! 獣医の仕事をなめんじゃねえッ!」
証言台を蹴りつけて反論。
しかしながら、エールを狙った人物が怪しい事は事実。
そこで成歩堂所長、満を持して犯人指名と相成るが。
出来る事ならこの場面、
回想シーン挟まずにノーヒントで行ってほしかったかも。
「エールに餌をやれる立場の人」なら、この私ですら思いつくし。
かくて、二人目の証人となった育也。
すると育也、するすると殺人罪をエールに押しつけ。
以下、発言の一例。
育也「……被告人に有利な証言だってのに、なんでナルホド先生は喜ばねえんだ」
「シャチは、アザラシを20メートル飛ばしたって事例もあんだからな」
あれまあ。
実はインテリだろ、きみ。
敬語つかえない人の語彙じゃないぞコレ。
で、その後、判明する死体の移動法なんですが。
(ネタバレ&辛口注意)
正直に申しまして、過去の事件の焼き直しってのは如何なものかと。
本来ならこの度の事件こそ、
「つながった二つのプールの水を操って死体を運ぶ」
という解が自然なのだ。
しかしその手段は、過去の事件で使用済み。
故にプールは隔てられ、
「シャチがホイストで空中を行き来する」
などという奇天烈な設定が生まれたわけだ。
と、ここで夕神の手錠が切れる。
そろそろ流石に見慣れてきた。
成歩堂所長が、死体の隠し場所まで言い当てたところで、今度はココロスコープが発動。
客観的には、実に冷静に語ってる(ようにしか見えない)育也だが、
心音に言わせると、感情が暴走しているそうな。
なお、この「暴走」については丁寧なチュートリアル有り。
その結果、とうとう育也の正体が露見、したんだが。
育也「こっからは、本気でいくゼッ!」
ドーピングコンソメスープでも注入(たべ)たんですか?
まあ、そこまで行かなくとも、直前に飲んだ物、危ない類に思えて仕方ない。
そういや、身の丈ほどの大魚を持ってるってのも、
英国での某料理人とネタかぶりしてますな。
被害者は巻き添えで殺されたという事情も視えた後、成歩堂所長の次の手番。
成歩堂「弁護側は……すべてのカギを握る”シャチのエール”を召喚します!」
一旦休憩。
成歩堂所長たちの下に集まる関係者たち。
浦鳥「今日の裁判がどんな結果であっても、わたくしは真実を本に記しますわ。
この《シャチの殺意》を否定する内容であったとしてもね」
潔い態度に最敬礼!
その一方で。
巣古森「真実は、オレサマも知りてえ。……1年前のこともな」
「歌を歌っていたシャチは、スズミに頭突きを繰り返し……
最後にはアイツの身体に噛みついて、プールサイドに連れてきたんだよ。
……スズミは死ぬ直前、ムネをおさえて苦しんでた……」
ここまで来れば、もはや真相は明白だ。
今のみならず1年前も、独り勝手に業務上過失をやらかしたトレーナーのせいで、
シャチは人命救助の芸も虚しく、冤罪に追い込まれたわけだ。
と言いますか、仮にも変死だろうに、行政解剖すらしてないのか1年前のこの水族館。
(してたら一発で真相解明してたのに……)
ともあれ、事の次第を知った浦鳥は、自らの事情を好意的に明かしてくれた。
浦鳥「依頼人を守るつもりが、真実を隠していたなんてイヤですもの」
との事で。
審理再開。
早速エールへの尋問開始。
では新人飼育員の綾里晴美さん、お願いしまーす!
……と言っても、実はこの尋問自体に意味はない。
異議を唱える意義がない。
単純に、エールを操れる可能性を指摘すれば良いのだ。
春美「なるほどくん。お探しの動画がいくつか見つかりましたよ」
「それでは、動画を再生しますね」
ほうほう。
「べんごし」も「でんしゃ」も知らなかった子が、随分と成長したもんだ。
ともあれ、これで「犯人はトレーナーしかあり得ない」という論は崩れた。
それにしても、この世界のデジタル事情も一気に進歩したようだ。
成歩堂「春美ちゃん。動画をこっちの携帯電話に送ってくれるかな」
春美「はい。わかりました!」
心音「……あ。送られてきました!」
まさか、成歩堂がムービーメールを掌握してるなんて……。
ところで。証拠品たる動画、よくよく聞くと、ちゃんとメロディも聞こえてくる。
こういった、音声付きムービーならではの演出なら、大歓迎の大歓喜だ。
(こういう風に『逆転のセレナード』をリメイク希望……!)
論点は最終的に、「1年前」と「今」とのシャチの相違点へ移って行く。
歌える歌が違う、身体的特徴も違う――となれば、論理的に導かれる答えは一つしかない。
即ち、水族館職員グルでの隠蔽行為という、まさに「トンでもないこと」(by成歩堂)だった。
そして。大切な点を一つ。
この度の真犯人こそ、実のところは被害者という事。
どこまで行ってもこの事件、業務上過失で死んだトレーナーが、問答無用でまず悪い。
そして、その死因を調べなかった、当時の水族館館長ら関係者全員悪いのだ。
そう考えると、館長は巻き添えで殺された、という表現にも語弊がある。
この殺人は、もしかしたら、寧ろ必然だったのかもしれない……とも思う。個人的には。
だから。
そんな、誰も救われない物語から、せめて一人だけ救いたい。
育也「……もう、オレのことはいいだろ。オレは……死刑になるべき人間だ」
と自暴自棄になっている彼こそを、救いたい。
彼は決して、殺人者ではなかったのだと――成歩堂所長は、明かした。
事件解決後。
翔子「リューイチ、ココネ! 本当にありがとう!
エールもアタシも、すごく……すっごく感謝してる!」
感謝をパフォーマンスで表すぜッ!」
巣古森「こんのシャチバカ! まずは病気を治しやがれ!」
ああ良かった。まだこの水族館には常識的良心がある。
それで、巣古森から密かに打ち明けられた、水族館の最後の秘密。
手放しのハッピーエンドは素晴らしいと思う、けど。
けど、ね。
そこら辺に別のシャチを隠すというのは、まず不可能なのであります。
現実のシャチは、希少生物なのだ。
飼育されている個体数は、厳密に把握されているはずなのだ。
世界全体での数は、42頭。(2008年)(wikipediaから抜粋)
日本国内で見られる場所は、鴨川シーワールドと名古屋港水族館のみ。(2014年)
そういう事情を知ってる身としては、ちと幻想が過ぎるかなとも。
エールにお祝いした後は、後日のショーと、そして再び成歩堂所長のボイスで、幕は下りた。