【注】
・世の物語では、原作至上主義にして主人公至上主義。
・『逆転裁判』は「裁判1〜3」至上主義。
・宝塚歌劇についての知識ゼロ。
・ミュージカル要素は実のところ苦手。
・ビデオソフト新品を買って鑑賞。
・全面ネタバレしてますが、犯人やトリックなどの核心は伏せてます。
・当記事では、基本的に劇中の英名で表記します。
なお、「逆転シリーズ」は海外でも展開しており、
主な登場人物は言語ごとに別名が当てられています。
詳しくは他サイトなどでご確認を。
くれぐれも、これらの点を踏まえてお読み下さいませ。
成歩堂のテーマ曲『異議あり!』(オーケストラ版)がループ再生する場内。
「皆様。本日はようこそ宝塚バウ・ホールへお越しいただきました」
と、フェニックス・ライト(成歩堂龍一)役の蘭寿とむ氏による口上で、物語は始まる。
【第1幕】
事務所内。ノートPCを前に、かつての事件に思いを馳せるフェニックス・ライト。
(以下、愛称のニックで表記)
そこで、とーとつに始まりよった歌(『信じている』)にビビる私。
周回鑑賞してる今は、場面転換の印(しるし)と理解して少し慣れたが、初見は驚いた。
ああ、やっぱりミュージカルなんだなと思い知らされた。
閑話休題。
時は事件開始時。所はニックの事務所内。
ニック「ああ……、今日も疲れたなあ」
と、ソファでくつろぐニックに来客。
ベースの原作『蘇る逆転』なら、被告人の妹・宝月茜が来る場面。
客「来ちゃった(はぁと)」
と入ってくる妙齢の女性を、ニックは冷徹にあしらう。
客「私、本当にあなたの事あきらめなければいけないの?」
ニック「帰ってくれ!」
何だ、この話のニックはそんなに浮き名を流してるのか、と眉をひそめた私は既に、
宝塚側の掌で遊ばれてた。
周回プレイ(?)した今は、もうこの女性が出てきた時点で、反射的に吹く。
まさか、アメリカNY舞台で、こーゆーコントぶっ込むか。ヅカさんすげえ。
ただ、このネタはニックが美男だから成り立つわけで、
原作の画じゃ無理だわな。(原作も素敵だけど美人さんて顔じゃない)
ニック「毎週来てんだよなあ」
と、追っ払った客にボヤいたところに、また来客。
ニックの幼なじみ、ラリー・バッツ(矢張政志)が乱入。
原作のマスコットキャラ・タイホくんのプリントされたシャツを着て、
上着の袖ぶらぶらさせて。
BGM『おめでたい人々』を背負って、しかしラリーの話題は辛辣。
ラリー「もしかしてまだ忘れられないのか? レオナの事」
と、ニックを挑発。
言われたニックが否定すれば、
ラリー「2年も経てば、人は変わるよな」
と納得。
そこに帰ってきたマヤ・フェイ(綾里真宵)に、ラリーは、どどどどど!と駆け寄る。
結果、マジでソファに吹っ飛ばされるニック。
ニックは、ラリーと会話してるマヤを指し、観客に設定説明。
ニック(謎の衣装については、霊媒師の家系だから、という事らしいので、
つっこまないであげてね☆)
開き直りよったわ。
個人的に、マヤの霊媒設定は全カットしても良かったのでは。
日頃から髪を結って装束着てるのは、実写だと不自然に思うんだな。
番外編なら、他の服を着てる場面もあるし。
もっと言えば、そもそも、『蘇る逆転』に真宵いないし。
(『蘇る逆転』は、霊媒要素のない特殊なパターンなのです)
ニックと一緒に海水浴に行くんだと盛り上がって部屋を去るマヤ。
ラリーは両拳を握ったポーズで、
ラリー「アンタ、あの子の何なのさ!」
セツナイ叫んで飛び出してった。
ニック「……こっちがセツナイわ」
と、残されたニックは独りごち、何となくTVニュースを見始める。
ニ「この番組、世界共通なのかな」
全世界放送って凄くね?
ともあれ、キャスター、モエノ・クリステルによって速報が読み上げられる。
ロバート・コール上院議員殺人事件発生。
容疑者は、州知事顧問弁護士、レオナ・クライド(宝月巴のポジション)。
因みに、カルフォルニア出身の24歳との事。
レオナの名を聞いたニックは、矢も盾も止まらず事務所を発った。
一人で。マヤ置いて。
冷たくねーか……?
なお、TVのニュースいわく。
最近、海水浴場に妙な格好で現れる若い女性が急増してるそうで。
他にもおるんか、倉院の民たち。
格子の照明効果をバックに相対して会話する、ニック&レオナ。
留置所の描写だと後から気づいた。(聴けば、BGMも留置所の曲)
なお、レオナは巴と違い、長い髪はアップにまとめている。
社会人なら、こっちの方が自然ですな。
レオナ「人は、変わります」
と、ニックを拒絶するレオナに、ニックはひたむきに誠意をぶつける。
ニック「ぼくが、きみを弁護する」
「ぼくは、一度決めた事は必ずやり通す」
「きみが依頼状を書くまで、ぼくはあきらめない」
なお余談ながら、二人が面会できたのは、「担当検事の計らい」(byレオナ)との事。
かくて被告人攻略の段、クリア。
それを境に、『異議あり!』が流れ出す。
ニック「レオナ。ぼくはハッキリと覚えている。
ぼくを信じてくれた事。ぼくを助けてくれた事。
今度は、ぼくが必ず……必ず、きみを助ける!」
捜査開始を宣誓し、『異議あり!』のリズムで、
ニックは自らのテーマソング『フェニックス・ライト』を歌い上げる。
そこから、TVアニメで言うところのOPタイム。
法廷で書類ぺしぺし叩くニックをはじめ、メインキャラの動画を背景に、
『蘇る真実』の歌声と共に、サブキャラを含めた全員でのダンスが展開される。
その様子を目の当たりにして私は、しばらく混乱していた。
だって。あり得ない。あり得ない。こんな事あり得ない! ――なのに。
成歩堂が、“い”る。
事件の謎という岩盤を、異議ありの声でぶち破る、あの男が確かにいる。
特筆すべきは振り付けで、片腕だけを動かす時、総じて「左」を使っている事。
成歩堂は(ゲームの都合上)左利きの設定と踏まえてる事だ。
曲の途中では、センターがニックからマイルズ・エッジワース(御剣怜侍)へ移る。
そのエッジ(と私は呼ぶ)の踊る様は、さして混乱しなかった。
御剣さんは、舞台版『逆転検事』で散々踊ってたから。
こっちは正直、免疫ついてるんです自分。
2年前。夕焼け時の、(多分)カルフォルニアの冬。
学生時代(と思う頃)のニック&レオナの会話。
二人ともに、弁護士を目指すロースクールの試験前。
(つまり、ニックも事件時は24歳で確定)
……そうだよね。普通、弁護士は法学部卒だって思うよね。
昔の逆裁ファンの誰も、成歩堂の出身学部は当てられなかったと思うもの。
その際、ニックはレオナに、10年以上の幼なじみとして告白し、将来を誓う。
ニック&レオナのテーマソング『愛してる』を共に歌って。
……そうだよね。普通、主人公が執心するのは長年の恋愛相手だよね。
まさか、「裁判1」があんな展開になるって誰が思うか。
(↑だから好きになったんだよ私は)
時間は事件時に戻る。
手帳やカメラや集音マイクを振りかざし、舞い散るスーツ集団、つまり報道陣。
そこに登場するのは州知事、ミラー・アーサー。(警察局長・厳徒海慈のポジション)
ミラー「私の顧問弁護士とあらば、私が罪を犯したも同然!」
と毅然とコメントするミラー。
……ええ根性しとるわ。
その人混みに吹っ飛ばされつつ、事件現場へ向かうニック&マヤ。
ニック「もうすぐ大統領選挙だもんな」
え。この事件、そこまでデカイの? 原作超えてない?
マヤ「事件のニオイがプンプンだね!」
と、現場でテンション上げるマヤに、叱咤が飛んだ。
「アンタたち! ここは関係者以外、立ち入り禁止ッスよ!」
殺人課刑事、ディック・ガムシュー(糸鋸圭介)登場。
ディック「魂込めた空回り捜査と、熱の入ったウカツな発言」
と、意味不明な供述、そしてDAIG○めいたポーズを決める。
一般の舞台版でもコレやってたが、業界で流行ってるのか?
そのじつディックは、ニックにうながされるまま、ペランペランと情報しゃべる。
もっともコレ、原作の通常運転ですが。
因みにこの時、いそいそと手帳にメモするマヤが可愛い。
ディックは立ち去り、これで許可は得たというわけで調査開始。
したらマヤ、何と、片っ端から遺留品をいじり始めた。
しかも位置を変えてしまってから、この台詞。
マヤ「ドコにあったんだっけ」
………………………………はっ。(数十秒、思考停止)
あ、そうか。
多分この子の設定、原作よりずっと幼いんだ。8歳くらいなんだ。きっと。
いや、メタ的な理由は理解できるんだ。証拠品を観客に見せる役を務めてるんだって。
でもでもせめて、二人で並んで屈んで証拠品眺めるとか、
もっと無難な落としどころ有ったんじゃないかな……。
(原作の真宵は、人死にの場で、断じて、はしゃいだりしません。念のため)
ともあれ調査を終えたニックはマヤに、レオナ(&妹のモニカ)について語る。
そこに戻ってきたディックが告げた。
ディック「検察局はこの事件の担当に、マイルズ・エッジワース検事を任命したッス」
壮麗に、御剣のテーマ曲『大いなる復活』が流れ、エッジが舞台に顕現。
ただ厳密にはこの曲、「裁判2」以降の御剣のテーマなんですが。
(『蘇る逆転』は「裁判1」収録の事件)
ニック「まさか、この事件で会う事になるとは」
この台詞を境に、エッジのテーマソング『私のルール』の時間。
孤独の炎をまといし鬼検事(ワインレッドのジャケット長め)。
そのエッジの分身sに翻弄されてボコられるニック(のイメージ)。
歌が終われば、分身sは去り、両雄のみが闇に対峙。
彼らはすれ違い、そして舞台上の定位置へ向かう。
即ち法廷の、双方の席へ。