『蘇る真実、再び』実況レポート (探偵パート1回目)

【注】
・世の物語では、原作至上主義にして主人公至上主義。
・『逆転裁判』は「裁判1〜3」至上主義。
・宝塚歌劇についての知識ゼロ。
・ミュージカル要素は実のところ苦手。
・ビデオソフト新品を買って鑑賞。
・全面ネタバレしてますが、犯人やトリックなどの核心は伏せてます。
・当記事では、基本的に劇中の英名で表記します。
 なお、「逆転シリーズ」は海外でも展開しており、
 主な登場人物は言語ごとに別名が当てられています。
 詳しくは他サイトなどでご確認を。

くれぐれも、これらの点を踏まえてお読み下さいませ。






前作同様、成歩堂のテーマ曲『異議あり!』(オーケストラ版)がループ再生する場内。
「皆様。本日はようこそ宝塚バウ・ホールへお越しいただきました」
と、フェニックス・ライト(成歩堂龍一)役の蘭寿とむ氏による口上で、物語は始まる。


【第1幕】
冒頭は、故郷だろう海を背に展開される、ニック on Stage
前作で客層つかんだ強みのある、続編ものならではの展開。

想い人レオナとの回想シーンを背景に。
『輝く明日へ』を朗らかに歌い上げた後、けれど彼の表情は凍り、舞台は暗転する。



前作と変わらぬ法律事務所のソファで、ニックは目を覚ました。
ニック「また、いつもの夢か……」
どうも、今までの舞踊は夢の中の描写だったらしい。
何でも、前作の事件を機に、故郷であるカルフォルニアへ拠点を移した模様。

ニック「レオナ。ぼくは今でも思い出す」
   「もう戻らないと分かっているのに……」

とシリアスに沈むニックを、
フライパンがんがんがん叩き鳴らしながら現れたマヤが、
日常世界へ引っぱり戻した。

マヤ「わたし達、ニューヨークからカルフォルニアに来て、もう3年もたつのよ!」
ニック(この子はマヤちゃん)
   (忘れっぽくておっちょこちょいな食いしん坊。
   だけど、マヤちゃんの笑顔には何度も助けられてきた)

とゆーニックのナレーションの間、ぷるぷよぴこぴこ震えてるマヤ(役の人)に
憐れみを感じる。

ニック「忘れっぽい……か。ぼくにも忘れられる日が来るだろうか」
と、過去の日を思うニック。
原作よりは記憶力あるんだなって何となく思った。

因みに、マヤは朝食にみそラーメン作っていたらしいが、
最終的に焼きそばになったとの事。
そこに来客があったという事で、マヤは、みそラーメン(過去形)を
放り出して出迎えに行き、その結果。
ニック「あーッ!!」
ニックの足下に麺がぶっかけられた。
その残骸を、さっさかさと拾い集めながら、ニックのコメント。
ニック「味噌味の焼きそばだよコレ。わりとおいしいんだよコレね」
あ。ちゃんと食べてあげてるんだ。

さりげないナルマヨ要素に私が萌えるところに、
今回の姫ポジルーチェ・アレイア登場。
マヤ「何かおいしそうな名前だね!」
ニック「それフルーチェだろ」
商品名言うてええの!?


閑話休題。
ルーチェの依頼は、殺人犯として疑われた母親の弁護。
その母親とは、ニックの人生の発端を作った、あの時の教諭。
ここはネタバレ上等とばかりに、前作の学級裁判のエピソードが全て説明される。

ルーチェ「お母さんは、たった一人の家族なんです」
そう言われたニックは、レオナの面影を思い出し、マヤと共に留置所へ向かった。
物騒な世の中だと嘆くマヤに、
ニック「平和なのはマヤちゃんだけって事だよ」
と苦笑しつつ。
……原作の真宵の人生は、平和とはとても言えない壮絶なものだったりするんですがね。



留置所。
上品な黒衣をまとった女性、ローズ・アレイア教諭が登場。
なお、この時、アレイアの様子に要注目。
何故なら、この辺りから、密かにバトルが始まっているからだ。
本作の作者(=制作側)と、読者(=観客)との、ガチ推理バトルが。

というのも、本作の事件は、全編にわたりオリジナルトリック。
台詞の一つ一つ、一挙手一投足全てがコレ伏線。
ビデオソフトなどでの周回鑑賞が前提レベルのこだわりぶり。
本来、一発勝負の演劇で、何とゼイタクな趣向なのか。

ともあれ、アレイア教諭は、ニックの来訪を頑なに拒む。
アレイア「ニックくんには頼めないの」
    「私は、幼いあなたを傷つけてしまった。
     教師として一番いけない事をしまったわ」
    「私は、あなたに弁護を頼む資格なんてないのよ」

あれ。あれ? どうしようニック。……イイ人だよ!

戸惑う私を余所に、去ろうとするアレイアを、ニックは呼び止めた。
ニック「あの学級裁判が、ぼくを弁護士へと導いてくれたのです」
   「レオナとエッジワースにも出会う事も出来た」
   「あなたは罪人なんかじゃない。恩人です」



いきなり涙腺緩まされた。



原作(ゲーム)では、いっそタブーの領域と言える学級裁判に、
まさかここまで踏み込むとは。
正直に言う。この場面だけで、ビデオソフトの定価払った価値があった。



かくて、被告人を攻略したニックは、自らの郷土愛たる『故郷』を歌い、
そしてOPタイム『蘇る真実』開始。

前作と同じく、背景にはキャラ達の紹介画像が流れていく。
その背景には、エッジの執務室も映ったり。
そのエッジに、曲の途中でバトンタッチするのも前作と同じ、だが。

エッジ役の悠未ひろ氏の様を、私は目に焼き付ける。
周回鑑賞してからは、その立ち姿に畏怖すら感じる。(理由は法廷パート2回目で)
宝塚版第3作の『逆転検事』も、ソフト化してもらえないだろうか。
制作側さんお願いします!



OPタイムの後、今度は、事件現場である教会で、
ディック刑事 on Stage……なんだけど。その。
カルフォルニアで「ソーメン食べてガンバるッス!」って歌詞もどーかと思うが。

こうも、迷刑事ぶりが強調されるのは如何なものかと。
ディックはディックで制服組を振り回し。制服組は制服組でディックをコケにして。
原作に比べ、今一つ信頼関係が薄いんだよな……。


で、何で、ここカルフォルニアにディックが居るのかと言えば。
ディック「自分はニューヨーク市警から人事異動ッス」
まあ要するに左遷である(または話の都合)。

そんな風に、ニック&マヤと挨拶交わしてから、
ディックは殺人事件の被害者マルケス・ペインの件をはじめ、
例によって、まあぺらぺら喋る喋る。

……原作だと、成歩堂の話術で言わされるか、
あるいは情報を渡すしかない状況に追い込まれてる事が大半だから、
それほど違和感ないんだけどね。


そんなディックと別れた後。
「見覚えのあるアタマ」(byマヤ)こと、神出鬼没のオバチャン、
じゃなかったロッタ・ハート登場。

ニック(鑑識係のバイトなんか、できるワケないだろ!)
と、ニックは全力でツッコミ入れるが、ごめん、原作の勢いなら正直あり得る。
オバチャンも警備員なら、やってたし。
で、前作同様、ロッタは目撃者&証人として出廷するらしい。


ロッタの去った後、ニック&マヤは、アレイアの勤める小学校の話題に。
マヤ「小さい学校だから小学校かぁ……」
と、マヤが小ボケをかます傍らで。
ニック「都市開発が進む中で、この小学校と教会だけは、あの頃のままだ」
エッジ「……キサマも、あの頃のままだな」
ニ「この声は……!」
アタッシェケースを手に、黒コート姿のエッジ降臨。

エッジ「故郷の香りが、自分自身を教えてくれるかもしれん。
    そう思って立ち寄ったのだ」

この台詞を言う前に、人差し指の先で前髪に触れ、ふっと気障に息を吐く。
恐らくコレ、「クックックッ……」笑って口角上げる、あの表情だ。

そして。
エッジ「ライト。少し歩かないか。無理にとは言わないが」
デートの誘いや!(←身もフタもないコメント)
この時、気を利かせて席を外すマヤが偉すぎる。


それはさておき。故郷の海岸を前に、二人は語る。
ニック「時は止まらない。人も時代も変化していく……」
エッジ「………………………………」
ニ「何だ?」
エ「……いや」
見てる。エッジさん、めっちゃ見てる。

ニック「もしかして、この事件の担当検事は……!?」
エッジ「ふっ。バカを言うな。この事件を担当するどころか、
    あの公判以来、検事席にすら立っていない」
   「あれから私は悩み続けた」
   「その答えを見つけるまでは、法廷に立たないと決め、検察局を去ったのだ。
    検事マイルス・エッジワースは、“死んだ”」

何とエッジ、カンペキに自己分析できてる。
それどころか、ニックに冷静に忠告。
エッジ「弁護士としてのお前は、行き場を失っているんじゃないのか」

そう忠告するには、れっきとした理由があった。
それは、ニックの想い人・レオナについて。
エッジ「彼女の帰りを待つために、ここカルフォルニアに戻ったはずだ。
    ……待っていたのは、彼女の死だ」




………………………………はい?



あ。ああそうだよね、エッジったらすぐに物騒な比喩つかうんだから、
と何秒か現実逃避したのは私だ。
まさか本当に、冗談抜きで、死にネタですか。
千尋さんの属性までかっさらいますか、この究極の嫁は。

エッジ「キサマは何のために法廷に立つ?」
   「レオナ・クライドと同時にキサマが失った物を見つけださなければ。
    公判に立つ意味などない」

と、親友へ忠告を重ねるエッジは、自分の姉弟子である、
フランジスカ・ヴォン・カルマ(狩魔冥)についても説明してくれる。
13歳にして検事となった天才少女の事を。
エッジ「ここアメリカは、自由の国なのだ!」
ニック「………………そういう問題じゃないと思うけど」

エッジは去り、残されたニックの感想。
ニック「アイツ。……よく喋るようになったな」
ごもっとも。


ニック「弁護士フェニックス・ライトも、死んだも同然かもな」
と、自嘲するニック。
そこにルーチェと、その恋人のローランド・スミスが登場。
ローランドは、弁護側の証人として名乗り出てくれた。

立ち去ったローランドの落とし物を、ニックは拾う。
原作だったら、「法廷記録にファイルした」が出る場面。


ルーチェ「実は私、弁護士を目指しているんです」
    「真実は一つ。いつか、先生方のような弁護士になりたいって思っています」

ニック「………………そんなにいいもんじゃないよ」
ぼそりとつぶやく、黒い台詞。
原作第2作の情緒不安定ぶりまで、さりげなく再現されている。


再び残されたニックは、再び過去に思いを馳せる。
レオナ「ニック。ごめんなさい。最後まで迷惑かけっぱなしで」
ニック「レオナ。死ぬな、死なないでくれ!」
レ「あなたに会えて、私、幸せだった……」

何と、絵に描いたような闘病記。
宝塚の脚本は、得てして死にネタ多いと知識では知っていたが。
まさか本当にこんなに容赦ないとは。

でもね。ニック。ある意味では、慈悲もあったかもしれないよ。
死に目を看取る事が出来たのだから。
撲殺死体となった姿を発見するとか、
本当に殺人犯だと判明してこっぴどくフラれるとか、
そういうのよりは、マシなのかもしれないよ。
比べる事自体が、ナンセンスかもしれないけれどね。




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