今回の目的は、姫神サクラの証言を崩す事と――そして、もう一つ。
物語自体は、淡々と進んでいく。
何せ姫神、必要最低限の事しか口にしてくれないのだ。
いくら揺さぶっても、そう簡単には動じない。
そのせいなのか何なのか。
この章は、脱線すると楽しすぎる。ハッキリ言えば、推理を間違えた時の展開が。
裁判長相手に、
成歩堂「も、もう1度、おねがいします」
とか。
真宵相手に、
成歩堂「……真宵ちゃんをためしたのさ」
とか。
あんまり真顔でボケかますものだから、
裁判長「たまにあなたは、ホンキだかジョウダンだか、わからないことを言いますね」
などと言われる始末。
それでも何とか真相に辿り着くと……。
御剣「どういうことだ! 成歩堂、キミは……」
ついに御剣、呼び捨てと「キミ」と、セットで発言。
ますます地が出てきた。
そのせいなのか何なのか。
成歩堂と御剣の漫才も、この章は何故かヒートアップ。
例えば、
成歩堂(…………なんでさっきから、ぼくの考えていることがわかるんだ?)
御剣「ハッ……! その冷や汗の感じで、なんとなくわかるのだよ」
成歩堂の心が手に取るように読めるんだと、実に楽しそうに言ってのける御剣とか。
特に、この辺りは物凄い。 (注:〈〉部分は、当方によるト書きです)
御剣「弁護人は、宇在カントクが共犯だというのか!」〈と確認〉
成歩堂「もちろん違います!」〈キッパリ〉
御「ハッ! 宇在の目を盗んで死体をライトバンに乗せて、
宇在の目を盗んで着ぐるみに入れた……。
ホンキでそう主張するつもりかッ!」
〈やはりコイツまだ分かってないんだな、と嬉しげに〉
成「……………。
〈暫し考えこんでから、へらりと笑って〉
ホンキなワケ、ないじゃないですか」〈アッサリてのひら返し〉
御「は……〈一瞬茫然としてから〉はぅっ!」〈愕然と絶句〉
成〈にこやかにさわやかに〉「ジョークですよ。……この場をなごませる」
御「……な、な……〈ワナワナ震えてから〉なごむかッ!」〈座席台ばんっ〉
あんたら、公の場で何やってるんですか。
閑話休題。
かくて、真犯人を追いつめたと思ったが。
今回の敵は、特にしぶとかった。
姫神「具体的な証拠、ないじゃない」
未だもって、全く動じない相手に、
成歩堂「……机を叩いているあいだに質問を考えようと思いましたが、何も浮かびませんでした」
この通り、言うべき言葉が見つからず。
そこに――御剣が割って入った。
御剣「……イギを唱えるあいだに何か質問を考えようと思ったが、思い浮かばなかった……」
と、一旦は成歩堂と同じボケをかましそうになるつつも、名誉挽回。
御剣「証人! もう一度《証言》を!」
と、審理を続けさせる。
その上。
成歩堂(まあ、そりゃそうか……)
と成歩堂が見落としかけた矛盾に、
異議あり!
御剣「証人! 今の発言には、問題がある」
と、御剣が反論する。まるで成歩堂――弁護人の如く。
御剣「私のとるべき行動を決めるのは、私だ」
とは、本人の談。
この御剣の助け舟の後、成歩堂は改めて真犯人を追いつめる。
と、ここで最も問題になったのが、殺人の動機。
裁判長「彼女の動機を教えてください」
この問いの答えで四苦八苦。
何度、証拠品を出してペナルティを食らった事か。
衝動殺人だろうが、快楽殺人だろうが、過剰防衛の返り討ちだろうが(←ネタバレ)、
動機といえば動機だと思うのだが。どうだろう。
さんざん悩みながら、攻略本の力を借りながら、事件の全てを明らかにして。
憑き物が落ちたような顔の真犯人。初登場の時より、綺麗に見えた。
真犯人の口から明かされる、「5年前の事故」。
「……タクミさんが、コテージの階段から落ちて……」
この場面、作者(=巧舟氏)の名前がさり気なく入ってたのが興味深い。
これにて事件解決。
安堵している成歩堂たちの前に、御剣が現れる。
そう。ここからが縦糸の本題です。
御剣「成歩堂。……なんか言え」
「ニガテなんだ……セケン話」
今までの威厳はどこへやら、と言いたくなる豹変ぶり。
やたら儚げに見えてしまうのは私だけか。
御剣「…………成歩堂。私たちは、こうしてふたたび出会ってしまった」
「しかし。出会うべきではなかった。
おかげで私の中に、よけいな感情がよみがえった」
成歩堂「よけいな感情……?」
御「”不安”……そして”迷い”だ」
成「それは、よけいな感情じゃないだろう?」
御「私にとってはジャマなものだ。
いいか。……成歩堂龍一。もう二度と、私の目の前に現れないでほしい。
……それだけ、言いに来た」
この会話、本当は真宵の台詞も入るだが。何だか二人の世界になってるので割愛。
第一、成歩堂、肝心な部分はいっこうに語ろうとしてくれない。
御剣との関係を尋ねられても、何も答えようとしない。
真宵「テキですよ、テキ! ……ねっ! なるほどくん!」
成歩堂「……今はね」
真「ええーっ! なんでそう、思わせぶりなこと言うかなぁ。教えてよー!」
この真宵の言葉は、プレイヤーたちの心の叫びだ。
ところで。御剣といえば、密かにトノサマンファンだというのが通説だが。
この場面において、トノサマンを演じている荷星を巡って、
御剣「いつも、テレビでごカツヤクをハイケンしております」
成歩堂(ウソつけ!)
という下りがあるわけで。
コレ、普通に読むと……むしろ御剣、トノサマンには詳しくないという描写にも見える。
あるいは成歩堂、「(TVでは着ぐるみしか見れないくせにウソつけ!)」という意味で言ってるのか。
それともいっそ「(本当はなりふり構わず喜びたいんだろうにウソつけ!)」とか? それとも……。
前言撤回。
どうにでも解釈できるなこの下り。
何はともあれ、この成歩堂たちの活躍によって、
成歩堂「英都撮影所はふたたび方針を変えて、
子供のためのシリーズは、つづけられることになった……」
とゆー事で。
シリーズ続編「小江戸剣士・ヒメサマン」がスタート。
成歩堂法律事務所では、こんな会話が交わされる。
真宵「なるほどくん! 今日だよ、新番組! ……いっしょに見るんだからね!」
「なるほどくんも買うんだよ! トレーディング・カード。
九太くんやスタッフの子とトレードするんだから!」
成歩堂「はいはい。……わかったよ」
男と女とゆーよりも、やっぱり家族っぽいなぁ。この二人。