『さらば、逆転』実況レポート (法廷パート2回目・前編)

今回の目的は――――何と言ったら良い物か。



開廷直前。
成歩堂と共に、千尋もスタンバイ。
王都楼に煽られ、沈みきっている成歩堂の元に鳴り響く携帯電話。
かけてきたのはイトノコさん。

糸鋸『……警官隊にまぜてもらったッス! 虎狼死家を追っているッス!』
   『裁判が終わるまで……判決が下されるまでに、
   ワレワレはなんとしても、虎狼死家を見つけだすッス!
   真宵さんを救出してしまえば、王都楼を有罪にできるッス!』

と語ったイトノコさんは、トンデモナイ作戦を言い放つ。

糸『アンタは、できるだけ時間をかせぐッス!』
  『アンタなら、やれるッス! ……アンタと、御剣検事なら!』

ここまで話して、通話は切れる。

千尋「あなたには、仲間がいるわ。おカネでは買うことのできない……最強の武器よ」
成歩堂(裁判を長びかせるんだ! ……イトノコさんを信じて!)


かくして。
この時点で、この裁判は、本来の意味を失った。

被告を救う事。証人と戦う事。検事と争う事。真犯人の確保。法廷バトル。
この「法廷パート」には、ソレらのどれも存在しない。

その代わりとして、ついに始まるのだ。
前代未聞にして空前絶後の、弁護士と検事による夫婦漫才が。(←敢えて言わせて頂きます)



さて開廷。
事件の内情を語る御剣。
サザエのカードも示して、王都楼こそが真犯人であると説明する。

成歩堂(今回にかぎって、ぼくは知っている。
     御剣が言っていることは、すべて正しい……)


この点からして、今までの「法廷バトル」とはカラーが違う。
この事件においては、成歩堂は絶対に「勝てない」のだ。



最初の証人。荷星三郎。
ホテルのボーイが怪しかったと証言する荷星だが。いざ問いつめると、

荷星「えーと……どうしてでしたっけねえ、成歩堂さん?」
何とも頼りない。


それでも、ぐるぐると揺さぶり続けていると、証言に変化が。

ボーイの顔についてと、チップについてと。
二つの事項を尋ねてみる。


まず顔から。
荷星「カオのド真ん中に……ぬい目があったんですよ!」
……よりによって、作画の都合にツッコミ入った。

で、この台詞を受けて、やっと成歩堂は思い出してくれる。
成歩堂(王都楼の家にいた……あの執事!)
だから王都楼邸に最初入った時に…………ああもう。


それからチップ。
どうやら、よりによって犯行現場での報酬の受け渡しを見られてしまったようで。
必死にゴマカす成歩堂。
成歩堂「被告はスーパースターだった! それぐらいのチップはその。トーゼンです!」
御剣「スーパースターは、アタマの中もスーパーだと言うのか!
   お盆を運んでサツタバがもらえるのならば……!
   ダレが検事などやるものかッ!」

金持ちさんにしては、堅実な台詞言うね。御剣。



結局、ボーイは怪しいのか怪しくないのか。
そりゃ怪しいのが正解だが、認めるわけにはいかなくて。

荷星「アヤシイじゃないですか! ぬい目があったんですよ? あのボーイには!」
成歩堂「ぬい目ぐらい、野球のボールにだってある!
     野球のボールがアヤシイと言うつもりですかッ!」

だから論点ソコじゃないだろ。
人を見かけで判断するなとか、言い様があるだろ成歩堂。

荷星「そのボーイさん、手袋をしていたんですよ」
   「革の手袋ですよ! ボーイなのに!」
成歩堂「革で出来てるといえば、野球のボールだってそうです!
     野球のボールがアヤシイと言うつもりですかッ!」

また言った。
密かに野球好きなのか成歩堂。



話を進める内、どうも荷星は、ボーイの行動の一部始終を見ていたらしいと分かる。
逆に言えば、ボーイの行動は全て目撃されていたという事になる。

成歩堂(それにしても、ちょっと目撃されすぎだろう!)
強く同意。
第一、こんな衆人環視の下で殺さんでも良かろうに。
あるいは、もしや人に見られる事までが依頼の内だった……なんて事はないか。


差し当たって、証言の中の曖昧な部分を部分を揺さぶってみる成歩堂。
成歩堂(荷星さんのアタマは、同時に2つのコトは処理できない!)
冷静に考えるとコレ、かなりヒドい台詞だが。
恐らく天然で言ってるからタチが悪い。

と言いますか、成歩堂(=プレイヤー)の方だって、
二つの質問は一度に処理できない仕様なんですが。



荷星「もう一度見ればハッキリしますけど……」
と思い出せないでいる荷星に、実物を見せてやる事にする。

でも正直な話、コレ幸いと一時的に審理をストップさせる事が出来たら……。
そうして警察を待つ事が出来たら、ずっと事は簡単だったかもしれないとも思う。個人的には。


でも物語を進めるためには、証拠品をつきつけて異議を唱えるしかなくて。
それで、取りあえずAボタンを押した後。
成歩堂「…………」
荷星「……………」
御剣「………………」
裁判長「…………………」
御「なんなのだッ! この気まずい”間”は!」
最初に焦れたのは御剣でした。

結果として、成歩堂が提出した物証は、王都楼にとって相当に不利。もっとも……
千尋「真実は、いつかカオを出すものよ」
確かに、ごもっとも。



このままでは、王都楼の有罪で裁判は終わってしまう。
そりゃ本当は有罪を食らった方が良いんだけれど…………ああもう。

成歩堂(……何か、もっともらしいギモンを提示するんだ……!)
やってる事自体は、普段と同じなのだが。どうにも罪悪感が。


で、この時に表示される選択肢。
その内の一つは、御剣にすぐ否定されると予想してしまったのが運の尽き。
証言自体が怪しいと言ってみたら、アッサリ玉砕

その際の会話がコレ。
成歩堂「たしかに、今のぼくの発言はアレでした」
御剣「アレだったな……たしかに」
「アレ」ってあんたら……。



などと色々抵抗してはみるものの。
そもそも王都楼が狼虎死家に依頼した事は、動かぬ事実。
まともな弁論で、引っくり返せるわけがない。
そう――まともな弁論では。

成歩堂(審理を引き伸ばすための方法は、もう、1つしかない……。
     ……この、罪深い方法しか……)

本当ならば、自分の事情、即ち誘拐事件の全てをこの場でぶち撒けるのが、
正解なのかもしれない。
しかし、そうした瞬間、真宵は確実に――死ぬのだ。


確かに、真実を捨てる事は出来ない。
だが、真宵を捨てる事は、もっと出来ない。

成歩堂(……真宵ちゃんを助けるためだ……。
     たとえ世界中を敵に回しても、戦いをやめるわけにはいかない)

この成歩堂の状況。
或る意味、第1作での御剣に限りなく近いような気がする。
あの当時の彼も、自分だけの理由、自分にしか分からない理由、
だからこそ譲れない理由の下、戦っていたのだから。


その「自分だけの理由」の下、”真犯人”を告発した成歩堂に、御剣は余裕で応じる。
御剣「………………”あるいは”と思っていた。この弁護士が相手なら……」

そういえば。もしここで、証人の召喚に手間取っていたら。
最悪、審理は延期されていたかもしれない。
成歩堂の思惑を察してくれていた御剣に、深く感謝。



一旦休憩。
何故か春美は、元の姿に戻っている。そこにイトノコさんから電話が。

手がかりが見つからないと嘆くイトノコさんに、究極の救いの手が。
千尋「テントよ!」
   「サーカスのテントが見えるわ!」

何と千尋、真宵に宿って目撃した景色を、春美に宿って成歩堂に伝えてくる。
この町でのテントと言えば、該当するのはタチミサーカスのテントしかない。


真宵救出まで、あと一息。
ここまで来たら、なりふり構っていられない。
成歩堂も敢えて、”悪漢”になるしかないのだ。



審理再開。
クマのアクセサリー(小物)を介して、霧緒に尋問する。

裁きの庭で暴かれる、王都楼のかつての罪。
傍聴人に散々なじられながらも、成歩堂は推理を続ける。


ところで。この場面での、成歩堂と御剣の舌戦。
二人の超絶な応酬に、私(=プレイヤー)は付いて行くのがやっと。

(↓以下ネタバレにつき伏字アリ)
まず成歩堂が、「一見正しいようで、よく考えると実は間違っている推理」を示す。
(王都楼が遺書の内容や隠し場所を知っていたはずがない)

すると御剣は、その成歩堂の推理の不備を指摘して、
「一見軌道修正しているようで、よく考えると実は無理のある推理」を示す。
(王都楼は盗撮によって遺書の存在を知っていた)

すると成歩堂は、その御剣の推理の不備を指摘して、
「一見更に改めて軌道修正しているようで、よく考えると実はやっぱり間違ってる推理」を示す。
(その遺書は霧緒による偽造である)
(↑ネタバレ終了)
……こんな感じで。
こっちはもう、二人の華麗なる大立ち回りを見せられているような感覚でした。


まさか「同じレベルの”探偵役”が二人いないと成り立たないミステリ」という物が、
この世に存在するとはね……。


しかし実際のところ、特に成歩堂の側には余裕は無し。
成歩堂「御剣! この紙キレを証拠として提出したのは、お前のほうだ!」
とうとう、法廷で「お前」発言してしまってるし。



かくて事態は、またも膠着状態……というより何だかぐだぐだになっていた、その時。
成歩堂の電話が鳴った。

イトノコさんの救いの手、と是非とも思いたかったが。
糸鋸『できるコトなら、ソーメンでクビつって、死んじまいたいッス!』
ものの見事に逃げられた様子。

糸鋸『御剣検事にかわってほしいッス!』
こう言われて、成歩堂が取った行動は。

成歩堂「……御剣ッ!」





電話ぶん投げた。裁きの庭の法廷で。




が、いざ受け取った御剣の態度は冷たく。
御剣「……………………。……審理中だ」
素っ気なく切ってしまう……というか、コレが常識的判断。
その上で、御剣は事を起こす。



「異議あり!」



御剣の異議により、裁判は休憩に入る。
審理は続行される事に。



御剣「……成歩堂! どうなんだ? 真宵くんのほうは!」
この通り、心の中では心配してくれていた御剣。
ちゃんと公私を分けているのは流石というべき。


八方塞がりかと悩む一同の中、(まだ御剣が持ってた)成歩堂の電話が鳴る。
話を聞くと、虎狼死家の遺留品をGetしたとの事。

糸鋸『ヤツらの目を盗んで、ちょろまかしてきたッス!』
……もしかして、この男が刑事をクビになった「必要性」ってコレだったのか?
しかも何と、車を運転しながらの携帯電話という違法行為。(←論点違う)

糸鋸『ホレホレホレ! 赤信号なんて、ムシッス!』
と景気よくカッ飛ばしてたら――突如轟音と共に通話は切れる。
つまり、要するに。



事故った。



当然ながら、携帯電話もブッ壊れた模様。

「彼の現在位置を知る方法」と御剣に問われて、
成歩堂が思い出した、頼れる仲間(?)その3。
御剣「すぐに連絡をしてみよう。……望みはうすいが……」



それにしても。
この最終話はつくづく、今までの事件とは「合わせ鏡」の姿を見せている。


今までの事件は、ごく簡単に言えば、
”正義”の弁護士が、”悪人”の検事に立ち向かう、という構造だった。

それがこの最終話では、完全に逆になっている。
”悪人”の弁護士が、”正義”の検事に噛みついている、という構造なのだ。


成歩堂「………………弁護士・成歩堂龍一も……死ぬべきなのかもしれない」
こんな言葉が漏れるのも、或る意味、当然の事と言えるだろう。




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