『逆転を継ぐ者』実況レポート (7年前・前編)

事の全ての始まりは。弁護士と奇術師との二人による、ポーカー勝負。

その勝負の末に。
依頼人――被告人の奇術師・或真敷ザックこと奈々伏影郎(ななふし かげろう)が、
弁護士・成歩堂龍一に吐く台詞。

「……どうやら。私が、本当に必要としているパートナーを見つけたようだ」


この台詞が、今となっては引っかかる。

この時ザックが言ってるのは、無罪を勝ち取るため必要、という本来の意味ではない。
密かに企んでいる”作戦”をなし遂げるためのパートナーという意味になるわけで。

そのため当方、この成歩堂とザックには、作中では描かれていない関係を感じてしまう。
ポーカーをする場面より前に存在している(かもしれない)関係を。
例えば。何らかの取り引きを持ちかけたとか。裁判の弁護以外の件で。
それで、その密約も含めての、ポーカー勝負とか。


……勿論、無謀な夢想である事は承知しています。
でも、そうやって自分に言い聞かせでもしないと、耐えられないのだこの章は。
「〜7年前〜 成歩堂龍一・最後の法廷」と銘打たれた、この章は。

もっとハッキリ言ってしまえば、
「『逆転裁判3』第6話(強制バッドエンディング編)」とも言える、この章は。


もっとも。この審理を、あの第3作終了直後の出来事と考えるのは、相当の無理がある。
あの数々の強敵たちを倒した成歩堂としては、この審理での言動は、全体的に不自然だ。

そのため、成歩堂自身、普段と違う「何か」のために、
この法廷に臨んでいるように見えて仕方なく。
「何か」慣れない事をしようとしてるみたいな。
……勿論、無謀な夢想である事は(以下くりかえし)。



と言いますか。
何でこの物語、いつの間にか成歩堂の視点になってるんだろうか。
本来の主役――王泥喜は、果たしてドコに行ってしまったんだろうか。

1周目当時は、そんな疑問で一杯だった。
2周目以降の今は、とにかく法廷記録をしげしげと見つめてしまう。
証拠品ファイルの先頭にある弁護士バッジを、延々と検分してしまう。



そうやって、充分に気が済むまで調べてから。
休憩室にて、ザックと会話。

成歩堂「前任の弁護士さんから資料を受け取ったのが、きのうです」
この表現から、この時点での成歩堂は、ザックの前任弁護士とは、
さして面識がない(=知人ではない)事が分かる。


いつまで経っても手の内を見せない、そんなザックにかけられる声。
みぬき「あ。パパ! おはよう!」
あのロケットペンダントでの写真と同じ格好で、幼いみぬきが登場。

その、みぬきとの会話のパターンが、また懐かしく。
みぬき「今日は、初舞台だから」
成歩堂「ふうん。そうなんだねえ」
     (ナニ言ってるんだ、この子)

み「あ。そうだ! ……オジちゃん!」
成「ん? なんだい」
  (だから”おニイちゃん”ね)

コレだ、コレ。
口にする台詞は優しくも、キツイ本音も同時に存在。
この口調こそが、PC(プレイヤーキャラクター)の真骨頂だ。



そんな会話の後。
みぬき「今、そこの廊下で、もらったの。
     《アタマのトガった、青い服のオジちゃんに渡してくれ》って」

と、紙1枚が手渡される。

それで自動的に出るメッセージ。
「《ノートのページ》のデータを、法廷記録にファイルした。」



その場で破り捨てる、って選択肢は無いんでしょうか。



この場面、せめて何らかの選択肢が出てほしかった。
結局ファイルするという結果は変わらなくても。プレイヤーとしての意志を示したかった。



やがて成歩堂たちの会話は、対戦する検事の話題に。
成歩堂「そういえば……新人らしいです。今日の検事は。
     「“検事局、始まって以来のサラブレッド”と聞いてます。
     ……まあ、毎年、そんなのが一人は出てくるんですけどね」

なるほど。
御剣の翌年に冥が現れて、冥の翌年にゴドーが現れて……確かに「年に1回」のペースだ。


そんな風に説明する成歩堂に向かって。
不可思議な台詞を吐くザック。

ザック「今日。彼らは、この私に有罪判決を下すことはできない」
    「私に判決を下すのは、“不可能”なのだよ」

この態度。今までの被告人とは、明らかに違う。
今までは、「助けてほしい」という訴えを素直にぶつけてきていた。
(第4作では、その要素は全体的に弱まっているが)

ザックは、あまりにも異質なのだ。
少なくとも成歩堂が受けてきた、『逆転裁判』シリーズの被告人としては。

ひとえに、信頼関係が無いのだ。

だからこそ、夢想してしまう。
こんな人を、成歩堂が救おうと望むだろうか、と。
成歩堂側にも、「何か」思惑があるのではないか――と。



そんな思いを持ちながら。審理開始。

法廷に入ると、なおさら強く実感する。
キャラも音楽も何もかも、全て旧作の世界である事を。
証人であるイトノコ刑事の年齢も、第3作と同じまま(ってのは大問題だと思うが)。
懐かしい空気に包まれる。



ただ一人、すかした検事さんを除いては。



実際、成歩堂に熱弁をふるうイトノコ刑事を遮って、こんな事言うし。

響也「キミタチの因縁なんて、知ったコトじゃないし」

ああそうか分かったよ、興ざめ検事
コテンパンにキャンと言わせてやるから覚悟しろ。
……ってな感じで倒せたら、どんなに良かったか……。



ガン患者にして糖尿病患者だった被害者の名は、あの「或真敷天斎」。
その病状を語る物証として、注射器が提出される。

もしかして、コレも検分できるかと調べてみると、こんなコメントが。
成歩堂「……子供のころから、注射はニガテだ」
コレだ、コレ。
「調べる」でのコメントは、主役自身の人柄が語られてナンボだ。
第4作では、もうやらないのかと思ってたよコレ。


それにしても。
同じ法廷記録にある、「天斎の手紙」の文言が恐ろしい。
「ヒタイの真ん中を撃ち抜くように」なんて、いくら何でも無茶すぎる。
第一、頭蓋骨を狙っても、死ねる確率は低いはず。
本気で銃殺を考えるなら、狙う場所は相手の――――――――危険思想になるので割愛。



ともあれ。ここは定石通り進めていく。
全ての発言を揺さぶって、選択肢を確かめて。

それで、思った事。
「成歩堂VSイトノコ刑事」のカードは、やはり見ていてホッとする。
日常では知人でも、仕事では馴れ合わない姿に、安心感・安定感をおぼえる。

けれども。同時に、複雑な気持ちに襲われる。
逆に言えば、長く付き合ってきたキャラ達には、緊張感・緊迫感が足らないのだ。


何せ成歩堂からして、この事件に至る時には、もう既にこれだけの実績を上げているわけで。
(以下、怒濤の全ネタバレ。未プレイの人は反転不可!)

(↓ネタバレ↓)
法曹界・政財界を裏で支配していた情報屋を叩き潰す。
15年に渡る難事件を時効当日に解決。
検事局きっての天才検事を救い、醜聞を晴らす。
40年間無敗の辣腕検事を、殺人犯として告発。
警察局局長を、殺人犯として告発。
検事局と警察局との癒着による汚職の摘発。
警察の特捜課が追っているほどの殺し屋に狙われる。
街の闇金融を束ねているヤクザと関係を持つ。
倉院流霊媒道の復興に貢献。
事実上の霊能力者として、霊媒師が行う修行一式を完全制覇。

(↑ネタバレ↑)

ここまで来ると、今更マジボケしてるようなキャラではないのは明らか。

嗚呼。
「えーと、被告人といえば、ぼくのこと、ですよね?」
なんて、アホを言ってた時代はもう遠い



そんなこんなで分かった事。
その一つは、天斎を射殺した銃の特殊性。

糸鋸「《ザックとバランの早撃ち》ッスよ!」
   「被告人の得意芸ッス。真ん中に、女の子をはさんで、ザックとバランが撃ち合うッス!
   すると、フシギッ! 魔法の弾丸は、女の子をスルリと通りぬけて……
   ステージの上のあらゆるモノを撃ち抜くッス!
   そのとき、ステージで使われていたのが、このピストルッス」


えっと、ソレって要するに……真ん中のねーちゃんが踊ってるだけと違いますか?
(後はステージ上の物たちに、火薬を仕掛けておけばイケるはず)


そしてもう一つは、その銃で撃たれた物。
なお、最初、お人形さんの弾痕が弾痕に見えなくて苦労したのは私です。
あの黒丸と赤丸とで、それで目に見えませんかね。あの顔。



そうやって審理の進む中、対峙する検事と弁護士との、こんなやり取り。

響也「残念だったねえ、ベテラン弁護士さん……」
成歩堂(……新米検事クンには、わからないみたいだな……)

率直に言いまして。
たかだかキャリア3、4年でベテラン扱いされる、この世界の弁護士協会って一体全体。
それとも逆に、この世界の弁護士業界って、基本的に短命だったりするんだろうか。

もしも、そういう世界観なら。
この次の章も、まだ少しは浮かばれる……かも、しれない。




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