『逆転を継ぐ者』実況レポート (7年前・後編)

一旦休憩。
その休憩室でもまだ、自分の事を語ろうとしないザック。
成歩堂に促され、やっと事件当夜の流れを打ち明け始める。

ザック「モチロン、師匠のヒタイを撃つつもりなど、なかったが……
    あの夜、指定された時間。私は病室へ忍びこんだ。
    「テーブルの上には……2挺の拳銃があった」
    「かつて、私が使っていたものと……私の相棒・バランが使っていたピストルが……な」
    「師匠は……眠っているように見えたよ。
    ベッドのそばに立っても、安らかな寝息が聞こえるだけだった。
    ……私は、ピストルを手に取った。
    そのとき……一瞬。迷ったことは否定できないな」

そうまでして、師匠に逆らえない理由が、ザック(以外の誰かにも)ある。

ザック「正直……生活は荒れていたな。みぬきにも苦労をかけたよ」


ザック「まあ……ケッキョク、私には撃てなかった。
    だから、そのかわりに。ピエロに撃ちこんでやったよ!
    ……私が撃ったピストルは、そのままポケットにしまったな」
    「だから、そのピエロにメリこんだ弾丸を調べれば……
    師匠のアタマからクリ抜いた弾丸とは、違うハズさ」

……てー事は。プレイヤーとして無罪を勝ち取るんだったら、やるべき事は唯一つ。



ザックよ、その銃よこせ今よこせ



というか、本来の成歩堂だったら、本来の『逆転裁判』だったら絶対に、
その銃が決定的証拠として輝くはずだろうに……。

更に成歩堂に促され、打ち明けるザック。
ザック「たしかに、な。”何か”あったよ。師匠が、目を開いた」
    「やっこさん、眠っちゃいなかったのさ」
    「そこで……師匠と弟子の、最後の会話が交わされたのさ。
    短かったな……5分ぐらいだったか」
……などという、どうにも中途半端な情報だが。



審理再開。
結局のところ、弾丸の正確な情報は不明のまま。
調査の時間が足りないという事で。
よって、事件を別方向から立証する証人として、或真敷バランが登場する。



おおそうか。それならコイツが真犯人か。(←短絡思考)



訊くとバランも、ザックと同じく、天斎に呼び出されていたのだという。
二人への要求の違いは、呼び出された時刻のみ。
(ザックは午後11:05、バランは午後11:20)

そして、そうやって呼び出された二人は、それぞれ拳銃を使って、
一人はピエロを撃ちぬき、一人は被害者を撃ちぬいた。


重要な点は、天斎の死亡時刻が午後11:10だという事。
その根拠は、途中で止まってしまった点滴。

コレは、言わば「止まってしまった腕時計」と同じような代物。
こういう場合には、何らかの偽装工作があるのが寧ろフツーだ。

と言いますか……
裁判長「最新の技術をもってしても……
     ここまでハッキリと時刻を特定することはムズカシイでしょう」
と、点滴を褒めたたえるくらいなら、むしろ心電図の方にも注目してくれないものかなあ。
病院も警察も検察も、皆様全員。



無闇に揺さぶれない尋問にストレスをおぼえつつも、
新たに手に入れた情報は、点滴液の色について。
後ついでに、ザックとバランが、国際マジック協会のコンテストで
グランプリを受賞しているという事も。

とにかく、その薬液についての矛盾を指摘。
するとバランは、ついに動揺。
バラン「う……む。ううう………ぐっ! あるまじきィィィィィィィィィッ!」



うしゃぎさんが出た。



とゆーか。わらわらわらわら出て来るウサギ達が、こちらをまっすぐ見つめてくるのが少々コワイ。



成歩堂(”新人”の悲しさ、か……。やっぱり、”経験不足”はどうにもならないみたいだ)
だから、たかだかキャリア3、4年でベテラン扱い(以下略)。

そんな余裕の(もしくは不遜な)態度の成歩堂に食い下がる響也。
響也「その、ムジュン……そっくり、そのまま。弁護士さんにお返しするよ!」
と、自らのテーマソングで対抗。
でも、この7年前当時だと、まだこの曲、存在してないはずだよね?

そんな響也に、やはり余裕の(もしくは不遜な)態度で切り返す成歩堂。
成歩堂「やはり……”経験不足”は、イノチ取り……みたいですね」



成歩堂「なぜ! この証人は、薬液の色を知っていたのでしょうかッ!」
この台詞を境に、法廷パートのクライマックス曲が鳴り響く。
この曲が流れたら、もう事件は解決だ。普段なら。



かくて見事に、バラン撃沈!――――と思うのは、甘い。



響也「忠告しておくよ。……気をゆるめていると、足元をすくわれるよ。
   アンタが思ってもみなかったカタチで、ね……」

と、響也が言うように。
成歩堂の、破滅への瞬間は、刻一刻と近づいている。



かくて響也の手から提出される、あの忌まわしき品。
最終ページの破られたノート。

成歩堂(どうしよう。証拠品を提示するべきか……?)
この時。1周目では、あえて何も考えずに話を進めた。
深く考えたら、もう、進めなくなると思ったから。

実際、提出するのを拒んだ場合も、成歩堂本人に、こう切り替えされてしまう。
成歩堂(この“状況”は、何か、イヤな予感がする……。
     ……しかし。裁判長は、すでに木槌を叩きかけている。
     証拠品を提出しないワケには行かないな……)

自分の身よりも、事件を選ぶ。
そうだ。コレこそが、“探偵役”の進むべき道だ。
何も間違ってはいないのだ。
そう自分に言い聞かせながら、プレイを進める。2周目以降の今の自分。


成歩堂「手記に、“つづき”があることを示す、決定的な《証拠品》は……」
普段なら、コレが最後の大逆転。
法廷記録にファイルされている、コレを提出すれば、全ては終わる。
勝利で終わる。普段なら。

そう。普段なら、この流れには、別におかしな点はない。
みぬきが渡してくれたページは、
ザックの味方が見つけてくれていた品だった、というオチにでもなるだろう。普段なら。

でも。今だけは。今回だけは。違うのだ。
この後、どんな展開が待っているのかは、『逆転の切札』を思い出せば自明の理だ。



正直に言います。
1周目当時。この場面で泣きました。
プレイヤー自らの手で、PC(プレイヤーキャラクター)を殺す、この時に。
ごめんね、ごめんね……と、10回くらい言いました。

ここまで入れ込みながらボタンを押したのは、
『FF7』のプレイ中、黒マテリアに取り憑かれてエアリスを斬り殺しそうになった時以来です。
(↑他ゲームのネタバレにつき伏字。『FF7』をクリアした人なら分かってくれるかもしれない話)



ともあれ。最後のボタンを押した。
法廷での青セビロによる、最後の「くらえ!」の声と共に。



提出したページを元に、バランを告発する成歩堂。
後で思えば、理不尽なイチャモンかもしれないに告発に、バランは激しく狼狽する。

が。そんな事より、むしろ問題なのは。

裁判長「この、筆跡。……他のページとカンゼンに一致します……。
     これは……これは、アキラカに、本物です!」
という、裁判長のコメントだ。

だって。こうやって客観的に断言されたら、本物としか思うしかないんですよプレイヤーは。
本当に本物なのかどうかなんて事は、我々プレイヤーには判断できないわけなんだから。
ト書きで嘘ついちゃいけないと思います。


そんな成歩堂の告発に、響也が動く。
響也「……ついに。ついに、それを出しちゃったね。成歩堂弁護士さん」
というわけで。
ここからは響也の独擅場に突入。
審理は一旦、中断される。


なお、先程のページの提出を、一度拒んでおけば……。
成歩堂(……イヤな予感はしていた……。
     手記の”破り取られた跡”……。……あの検事が、気づかなかったハズがない……。
     ……イヤな予感はしていたんだ……)

この成歩堂の台詞にも、より真実味が増してくる。

もっとも、1周目当時は、こんな冷静に考える余裕なんてゼロでしたが。
とにかくもう、パニック状態でありました。



無人の法廷。
寒々しい雰囲気の中、参考証人として出てきたのは、あの絵瀬土武六。
何でも、司法取引に応じる形で、出廷する事になったのだと言う。

その法廷で見せられた、例のページに対し、
土武六「それは、私の”作品”ですね」
と、彼は証拠品の贋作師として、あっさりと答える。


……重ねて言うが、物語には、「嘘のレベル」という物がある。
ここまではギャグとして流せるが、ここからは事実として動かせない、というような。

思い返せば、『蘇る逆転』の時にも「捏造」ネタは出てきた。
が、ソレらはあくまでも、事件関係者が証拠物件に、少しだけ手を加えたという程度だった。
まだ一応、常識の範囲内に収まっていた。

その一方で今回、作られてしまった設定は。
「本物と全く同じ証拠物件を作れる贋作師」なんて設定は――。



霊媒現象よりも非科学的。



――と、宣言しておこう。私見として。
後々の展開で、トンデモナイ枷になっても知らないぞ、こんな異様な設定。
鑑識の立場ゼロだしな……。


で、何で響也が、そんな贋作師を証人として召喚できていたかと言えば。
響也「……きのう。地方検事局に、ある”情報”が入った。
    《魔術師・或真敷ザックの法廷で、不正な証拠が用意されている》」
「ある”情報”」ったって。
そもそも、その情報の出所はドコなんだ。(後で知った時は絶句しました)


そんな響也の告発に、
成歩堂「待ってください! この証拠は、ぼくが用意したものじゃないッ!」
と、泡を食って焦る成歩堂。
何と言いますか……その。



完全に、SL9号事件の御剣状態に陥れられました。



裁判長「弁護人……成歩堂くん。あなたが……この法廷に、不正な証拠を持ちこんだ……」
成歩堂(……うかつだった……。……そう言うしかないかもしれない……)
     (ワナだった……すべて。それも、致命的な……)

裁「……弁護人」
成「はい」
裁「何か、弁明はありますか?」
成「弁明したとして……受け入れられるのでしょうか?」
裁「………………………………ムズカシイでしょうな」

この下り。
『逆転裁判』らしくない……と感じてしまう。どうしても。
少なくとも成歩堂なら、我らが初代PCなら、この逆境こそ乗り越えてくれそうな物だ。
単なる一ゲストキャラだったら、ともかくも。
最後の最後まで、全身全霊全力を尽くして戦って、それで散るならともかくも。

やはり、「何か」裏があるように、思えてならない。



以上の告発を終えて。響也は改めて、被告人の有罪を糾弾。

成歩堂「……待ってください!
     偽造された証拠品を持ちこんだのは、”重罪”にあたるかもしれません。
     しかし! それは、ぼく個人がやったことであって……」

身に覚えのない罪を背負いながらも、
それでも最後まで被告人を守ろうする成歩堂の姿には、複雑ながらも嬉しい気持ち。

そうだ。この男は、何も変わっちゃいない。
本質的なところは変わっちゃいないんだ。
そう自分に言い聞かせながら、Aボタンを押していく。
土武六との別れの場面を読んでいく。



……という、どシリアス一直線の世界を、完膚なきまでに破壊するのが、今回の被告人

確かに今まで、色んな奴が居た。
弁護人に異議申し立てる被告人なんてザラだった。

でも、こんな奴は、前代未聞にして空前絶後。

ザック「今日。この場で……キミたちは、この私に《有罪判決》を下すコトはできない。
    ……そいつは、不可能なんだ」
    「”存在しない”被告人に判決を言いわたす、なんてね」
    「そいつは………………こういうことさ!」



ハイ、怪盗キ○ドが消えたー! (ル○ン三世とかでも可)



そんな無茶苦茶な終わり方ではあるものの、
裁判の形としては、『始まりの逆転』と同じ形の結末。
勝利も敗北もない、灰色の世界。

と言っても。実際のところはどうなるんでしょうか。
事件処理はされると思うんです。宙に浮くって事はないと思うんです。
「被疑者不在につき公訴棄却」で終わったりしないのかな。この事件。



ともあれ。以上をもって、第4作の”純粋な”過去編、終了である。




戻る  次へ

他の事件を読む


HOME


inserted by FC2 system