「後編」の更にその続きがあった事に、1周目当時はまず驚いた。
まさか、この調子で「後編3」とか続けられたらどうしようかと。
貨物室にて。呼び出したCAコンビのうち、若菜に尋問しようとするが。
すっかり寝こけてて、すっかり寝ぼけてて、まるで話にならない。
しかしそれでも、まあそれでも。
次なる目的は、白音若菜の主張を崩す事。
若菜いわく、CAルームに居た事が自分のアリバイであるそうだが。
そうは問屋が卸さない。
スーツケースを買ったいちるの姿を、見ていないはずは無いからだ。
のらりくらりと話をはぐらかす若菜に焦れる御剣。
彼女に暇な、もとい自由な時間が多いと詰め寄ると、冥がこう反論してくる。
冥「どこかの弁護士のようなハッタリは、私には通じないわっ!」
……まさか冥にまで取り上げてもらえるとは。愛されてるね青い弁護士。
しかし、いろいろ尋ねた収穫もあった。
いちる「彼女は語学にタンノウですから、外国の方の接客をしていますわ。
特にボルジニア語は、彼女だけしか分かりませんから」
若菜「わたし、ボルジニア語は得意なんですよお」
「ボルジニア語のことは、ぜんぶ、わたしの仕事なんですよぉ」
と、いう事は。
若菜「わたし、ボルジニアに留学していたことがあるんですよお」
なんて経歴を持っている若菜は、考えてみればかなり怪しい。
御剣「あなたが、関わっていなければ、この”密輸”は成立しないのだよ!」
そう。少なくとも、無関係とは言い難い。少なくとも、いちるにはこの芸当は不可能だ。
と、ここまで話が進んだのを境に、若菜が、変わった。
若菜「眠ってなどいませんわ。御剣さま」
クールな口調に変化して、凛と顔を上げて、御剣を見返す。
若菜「御剣さまのおっしゃる通りでございます」
「そちらの書類を処理させていただいたのは、私でございます。
ただ、そのことが直接的に私が”密輸”に関わっていることと……
イコールではありませんわ。私はサインをしただけ……」
「荷物がちゃんと運び込まれているかカクニンをオコタったようですわね。
申し訳ございません」
取り出した煙草、もとい、シャボン玉セットから、プクプクあぶくを吐き出して。
慇懃無礼に謝ってくる。
若菜「たとえ……たとえですよ。私が”密輸”に関わっていたとしても……。
それが、そのまま殺人事件の犯人であることにはなりませんよねえ」
と、いきなり凶悪な顔まで見せたりして。
間違いない。真犯人はコイツだ。
いちるに、あるいは御剣に罪を着せて、逃れようとした下賤な敵だ。
けれども。当の若菜は、全く動じてくれない。
御剣(事件の全体像は見えているのに、決定的な証拠だけがない……)
ならば、別の方向から攻め直すのみ。
まだ解けていない謎を解いていくのみだ。
けれども。当の若菜は、まだ動じない。
若菜「あんなに高いところから落ちたら、携帯電話も壊れるんじゃないかしら」
とにかく。ここは一つ、アクビーの電話番号を知る冥が、電話をかけてみる事に。
どこからか聞こえてくる音を求めて、御剣&イトノコ刑事の二人が走る。
それでたどり着いた、音の出所はCAルーム。
しかし、よりにもよって、いちるのロッカーの中だった。
厄介な戦利品を手にして、貨物室に戻った二人。
すると部屋の一同には、何故かジンクも加わっている。
電話の結果を知った冥は、
冥「証拠だけが、事件の真実を物語る……」
と、冷厳に、いちるを連行しようとする。
だが御剣は諦めない。
アクビーの携帯電話を「検分モード」で細かくチェック。
液晶画面こそ割れてはいるが。データそのものは残っているはず。
御剣「メイ! 教えてほしい。その…………。この携帯電話では、写真が撮れるのだろうか?」
何故ソコで口ごもるのだキミは。
確か、キミって20代男子だったよね。団塊の世代とかじゃないよねまだ。
一方、さすがに冥は、デジタル方面も強かった。
冥「この電話は、鳴らすことができた。おそらく壊れたのは液晶画面だけ。
写真のデータは残っているわ。その写真を、見ることもできる。
私の携帯電話に、データを移せばね!」
もっとも。実を言えば当方も、それほどケータイに詳しいわけではない。
だけど画面が動かなかったら、「メールでの写真添付」は無理だろう。
SDカードのやり取りでも出来たのかな。この場合は。
ともあれ、冥の携帯電話によって、アクビーの遺した決定的瞬間の写真が晒される。
少なくともこれで、密輸の証拠は確実だ。
けれども。今の御剣たちが欲しいのは、密輸よりも殺人の証拠だ。
焦る気持ちを抑えつけて(私が)、写真の荷物を片っぱしから調べていく。
すると、その内の一つがついにヒットした。
ジンク「これは、ボルジニアから西鳳民国へ輸出される荷物のようじゃの」
「中身は……日本語でいうと、”衣装”じゃな」
(※ボルジニア語は表記不能なので省略しました)
その瞬間。
御剣の中の論理は一つにまとまった。
犯人は、ボルジニア語を理解できる人物しか、あり得ない。
西鳳民国で降ろされる箱なら安全だと見越した人物しか、あり得ない。
そう御剣に論破されて、若菜はぬいぐるみを盾にして脅えまくった末に。
自分の吹いた泡に倒された。
……フツーに倒れる人ってもういないのかなこの世界には……。
何にせよ、これにてひとまず事件解決。
ラウンジにて、、この度の事件について話し合う御剣とイトノコ刑事。
どうやら、これから戦うべき組織は、相当に強大なようだ。
いちるからの素直なお礼と共に、あのケッタイなスーツケースも受け取って。
御剣はイトノコ刑事と共に、空港ロビーへ向かう。
事件捜査のため、また他国へ飛ぶという冥を見送る二人。
御剣は同門の検事として、共通の師匠――狩魔豪への思いを語る。
御剣「……キミの父・狩魔豪は、たしかに40年間無敗の検事だった。
しかし、無敵だったわけではない」
本来ならここで、豪の人生について色々語り合う下りがあってもおかしくないが。
何も語るに語れないのが口惜しい。
第1作の最大のネタバレの一つだから仕方ないのは、重々承知しているけれど。
冥「もうひとり……この事件を追っている捜査官がいるわ。
「国際警察で、最も高い検挙率をほこる男よ」
と、冥は新たな出会いをにおわせてから、次の便に乗るべく去って行く。
改めまして、残った二人。
糸鋸「今日はお祝いッス! ソーメンの氷に砂糖をまぜるッス!」
と、イトノコ刑事がミョーな方向に喜んでいる最中、次の事件が動き出した。
きっかけは、電話で久方ぶりに聞いた声だった。
御剣「……………………。あなたは……丈一郎さん?」