イトノコ刑事に連れられてやって来た、「バンドーランド」の入口にて。
草むらから回収された、盗まれていたタイホくん。
ここでするべき事は無論たった一つしかない、けれど。
この時点でも自由行動できるんですな。
因みに、橋の向こうにボートはもう有りません。(探した)
それはさておき。
いま重要なのは、見つけた着ぐるみの奥から出てきた、翼の意匠のペンダント。
よくよく調べてみようとした、まさにその時。
狼「そこまでだッ!」
やっぱり割って入って来た、狼&シーナのコンビ。
丈一郎・光・姫子の三人も一緒だ。
狼が言うには、出てきたペンダントの裏に、姫子の名前が彫られているとか。
言われてみれば確かに「HIMEKO.K」の文字がある。
少しずつ、話の外堀が埋まっていく。
誘拐の罪を問われて、はじめは首を振っていた姫子だったが。
美雲「ヒメコさんが、誘拐犯だったの!」
姫子「……………………はい。わ、私が、私がヒカルくんを誘拐しました……」
と自白。
なお、原灰の容疑については、彼の拳銃が見つかった事で晴れたそうで。
狼「園内のしげみの中に落ちていた」
「この拳銃で撃った形跡はなかった。コイツは、凶器じゃねえ」
よって狼は、姫子を殺人犯としても連行しようと意気込む。
狼「誘拐犯の仲間割れが、殺人事件に発展した……。
検事さん。アンタも言ってたことだと思うがな」
御剣「……………………」
美雲「ヒメコさん! まさか、殺人なんて……!」
姫子「……………………私が……私が殺しました」
と、またも姫子は自白。
そこに御剣が異議を唱えた。姫子自身から、詳しい話を聞きたいと。
すると姫子、泣きながら反論。
姫子「ど、どうしてですか? 私が、誘拐犯で殺人犯なんです! それでいいじゃないですか!」
誰か凶器を取り上げろォ!!
振り上げたハサミで、髪を切ろうと暴れるモーションに、一瞬本気で焦った当方。
だって、手元が狂って、変なトコ切られたらどうする気なのかココの人たち。
と言いますか、ミステリの登場人物ってこーゆー物騒な物を持ってる事も少なくなかったり。
とにかく、そんな姫子をなだめすかして。
次なる目的は、織戸姫子の主張を崩す事。
ココでやるべきは、姫子と小倉の関係を洗う事。
二人とつなぐキーは勿論、ペアとして作られているペンダントだ。
小倉は、姫子が何者か知っていた。
姫子は、小倉が何者か知らなかった。
この二人が手を組んだ事から、この事件は始まったのだ。
御剣「生き別れた娘を、殺そうなどとするだろうか?」
「いや。そもそも、こんな誘拐計画に巻き込んだりするだろうか?」
親と子が殺し合うはずはない。
親が子を犯罪に使うはずがない。
かつて別の事件で、別の弁護士も訴えた”真実”を、御剣は狼に突きつける。
ところが。狼の方は怯まない。
次なる目的は、狼士龍の主張を崩す事。
彼らが親子だからこそ共謀したのだと語る狼に、
御剣「実のムスメを殺そうとする親などいないだろう」
と、御剣は繰り返しつつ、更に別の方向から切り込んでいく。
そもそもこの事件の誘拐犯は、二人だけではなかったはずなのだ。
むしろ主犯とも言える、第三の人物が残っている。
狼「だ、ダレだっていうんだ! その主犯格っていうのは!」
汗だらだらだら状態になりながら尋ねてくる狼に、キッパリと答える御剣。
……実際に答える私の方は、完全にビクビク怯えながらでありますが。
とゆーわけで。どんどん追求は続きます。
次なる目的は、天野河光の主張を崩す事。
一見、悲劇のヒーロー(でいいのか?)みたいな様子で、事件の流れを明かす光。
だが私としては、この期に及んで手錠を外してない事の方がよっぽど気になる。
たとえ鍵がないとしても、専用の機械で壊せば済む話なのだから。
さては。実は狼たちもコイツを信用してないんじゃないか?
そのじつ光、手で顔を隠しながら、指の隙間から外なんか見てるし……。
御剣「外への扉はカギが閉まっていた? 果たしてそうだったろうか?」
光「!」
答えは、外そうと思えばいつでも外れるからでした。(手錠の意味がない)
何を隠そう、光には動機だってある。
狼がカットインして迫っても、御剣の攻撃は止まらない。
光「ああ。そうさ。……認めるよ。ボクを誘拐したのは、ボクだ」
ついに狂言誘拐を認める光。
その上で彼は、殺人の無実を訴える。
姫子がタイホくんの着ぐるみを着て、光がプロトタイホくんの着ぐるみを着て、
小倉がワルホくんの着ぐるみを着て、それぞれは行動していたと。
そして小倉が光を襲い、そして姫子を追って姿を消したのだと。
その話を受けて、姫子は激しく動揺する。
姫子「そんなはずない! あの人がお父さんだなんて!
だってもしそうだったら、私……。お父さんを殺したことになっちゃうじゃない!」
次なる目的は、織戸姫子の主張を再び崩す事。
ステージエリアでの顛末を、姫子は語る。
その時、彼女は確かに拳銃のトリガーを引いていた。
自分に襲いかかった――ワルホくんに対して。
姫子「左手の拳銃を私に向けて、撃とうとしたのよ!」
ハイ出ました、このシリーズの十八番である「利き手」論。
この種の台詞が出てくれば、もう勝ったも同然だ。
また、この質問も、このシリーズに慣れている方なら楽勝のはず。
御剣「ヒメコさんが目撃したのは、(両手を使えないはずの)ワルホくんだったこと。
そして、ワルホくんが両手を使っていたこと。
ふたつのムジュンする情報。どちらかがまちがっているのか?」
答えはトーゼン「どちらも正しい」!
……と言いますか、本来だったらコレ、主人公でなく裁判長あたりが尋ねてくる質問ですな。
そう。
私たちが今問題としているのは、人間ではなく着ぐるみである。
異なる着ぐるみ同士をつなげれば、あり得ないムジュンも成立するのだ。
御剣「タイホくんは、ヒメコさん自身が着ていたから除外される。
タイホちゃんは色が違う。アタマを変えてもごまかしきれまい。
あとは、プロトタイホくんしかないのだよ!」
流れるような長口上を叩きつけ、御剣は指摘する。
小倉を殺した上、ワルホくんのモデルガンまで盗み、姫子に殺人の罪を着せようとした真犯人を。
真の殺人は、ステージエリアでの出来事より前に起こった、と述べる御剣。
が、それを遮る形で、姫子が割って入ってくる。
次なる目的は、織戸姫子の主張を崩す事。
姫子「奥の部屋のトビラの、のぞき窓から確認しましたわ。
ワルホくんのアタマをかぶっていたからまちがいないです。あれは、小倉さんでした!」
というのが、彼女の論であるわけだが……。
チョットマテ。
この場面を読んだ時。頭の中で、ホントにパチリと音がした。
そうだ。
御剣が拉致されたのは、必然だったのだ。
御剣は、拉致されなければならなかったのだ。
あの部屋で、拘束プレイされていた事には意味があったのだ。
アレは、この事件において、単なるファンサービスじゃなかったんだ。
虎の威を借る狐、じゃない、狼のかげに隠れる光を捕らえるまで、
あと一歩に迫った時。
「待った!」
と割って入ったのは――丈一郎。
その彼が証拠品と称して持ってきたのは、どれも驚くべき代物だった。
美雲「被害者の着ていたワルホくん! それに、拳銃もあるよ!」
丈一郎「どうやら海に捨てられてたみたいじゃよ」
その上、
シーナ「これは…………警察局長からの手紙……か。”天野河氏に、ご迷惑をかけないように”」
なんて物まで飛び出してきて。
丈一郎「このキグルミからは小倉の血痕が出ておる。
そして、拳銃からは……ヒメコくん、だったかな。キミの指紋が出ているんだよ」
そう言われても、ハイそうですかと引き下がるわけにはいかない。
拳銃と、それから着ぐるみの表面と中とを調べた上で、再び勝負に挑む。
次なる目的は、天野河光の主張を再び崩す事。
と言っても、拳銃の指紋なんぞ、今回の場合では何の証拠能力もない。
姫子「そういえば私、アジトで拳銃にさわりました!」
というだけの話。
殺人の時に付いた指紋のわけがないのだ。
そもそもこの殺人、ステージエリアで起きた出来事でさえないのである。
着ぐるみの状況を見れば、明らかな事だ。
狼「では、本当の犯行現場っていうのが、アンタには分かっているのか?」
御剣(ヒカルくんは、監禁場所で、私を小倉に見せかけている。
ならば、事件が起きたのはそれよりも前!
ヒカルくんと被害者が、それよりも以前にいた場所……)
と、御剣にヒントを出されていたにも関わらず、
思いっきりウェスタンランドを選んだアホな私にどうぞ呆れて下さい。
……いやその、鏡って監禁場所にもあったから……。
案の定、正しい場所を指摘しても、狼がツッコミを入れてくる。
狼「シーナ! たしか、犯人のアジトに割れたカガミが置いてあったな」
シーナ「ああ。マチガイない」
しかしこの場では、これ以上話してても机上の空論。
ならば、これからやるべき事は決まった。
御剣に頼まれた狼はシーナに、
狼「すぐに手続きをしろ。ホラーハウスの現場検証だ」
と命じる。
ところが。
「待った!」
と、割って入ったのは――またも丈一郎。
彼の渡してきた物を、シーナが読みあげる。
シーナ「これは……ホラーハウスの権利書……」
「”株式会社バンドーランドは、ホラーハウスの権利を……
現金1億円にて、天野河氏にゆずるものである”」
因みに。この1億円とは、光が身代金として手に入れていたあのお金。
そして、このバカ親は、トンデモナイ事を言い放った。
丈一郎「ワシは許してやろうと思う。身代金も返してくれたのだからね」
「現場検証は許可しない。ハナシは終わりじゃよ。
ロウ捜査官。その女をタイホするんじゃ。
御剣くん。キミは、さっさとお家に帰りなさい」
……腐ってやがる……。
御剣以上に愕然としながら(私は)、次の章へ。