まさかと言うべきか、当然と言うべきか。
問題のティーポットから、問題の成分は検出された。
嫉妬心からベソをかく弓彦に、御剣は静かに諭す。
御剣「事件を追う上では、勝ち負けなどは関係ないのだよ」
そのお言葉、某所で一喝して頂きたいです。是非。
と、せっかく矯正できかけていたのを、過保護の水鏡が反故(ほご)にした。
気を取り直して、改めて司に問いかける。
有毒ガスの片割れを持ってないと言い張る司だったが。
デリシー「そういえば、1週間前にツカサちゃんに会って……
その日の夜、劇薬コロリXがなくなったのに気づいたんだワ!」
…………もっと早く気がついておくれよ状況に。
さて。今の時点では、こちらは手詰まり。
ならばと信楽は、御剣信から教わっていた推理法を御剣に示した。
御剣「”発想の逆転”……!」
かつて言われた。
御剣信と千尋の推理スタイルは似ていると。
その千尋の弟子が受け継いだ教えを受け継いだ御剣と、
御剣信とが、ここで再びつながったのだ。
次なる目的は、緒屋敷司の主張を崩す事。
デリシー「同じ形の像は作れても、同じ成分を再現するのは、まず不可能なのよ!」
と、薬剤師みたいな解説するデリシー。って薬剤師だったっけ。そういえば。
そう。この辺の下りは、カガク的に快哉を上げたのですよ。私としては。
だけど。そうなると。こうなってしまう。結論が。
御剣「氷菓子を盗み、18年間保管していたのだ!」
ムチャゆーな!
気がついたら思わず叫んでいた。
それも腹の底から大声で。
人差し指まで突きつけて。
そりゃまあ、理論的には可能かもしれない。
冷凍菓子に賞味期限は無いんだし。
だけどコレ、そもそも料理人として、やっちゃいけない行為だろ。食べ物への冒涜ですってば。
更に、暴かれる事実。
御剣信たちが天海邸を訪ねた時、司は既に、やる事ゼンブ済ませてたという事。
正直に言いまして。
この辺りの文章は、機械的に読み進めておりました。1周目当時。
何と言いますか……この世界の化学は、我々の知るソレとは別物としか思えない。
せめて、水を氷室で長時間かけて固めたならともかく、
砂糖や空気を大量に含んだ物質が、無傷のまま崩れないとは考えにくく。
まして、繊細に整えられた美術品だと言うなら尚更だ。
ああ誰か、このツッコミ不在のスケーティングワルツを止めてくれ。
……御剣信が「ダンスイーツ」を息子に見せてたと分かったのは、嬉しかったんだけどね。
まぁ、とにかく。細かい事は、横に倒して押しやって。
司は当時、彫像を盗んだ事を、素直に認めた。
司「氷の像だけでなく、星団が描かれた氷柱のお菓子も……」
て事は何か。
あんた、女手一つで運んだんか。氷四つも。リフト使ったとしても。
怖いよ。
司「今まで冬の宮殿に飾っていたのは、みな18年前の本物です」
ところで。司が素直に事情を自白したのは、モチロン理由がある。
水鏡「この本で《公訴時効》について勉強なさったほうがよろしいですわ」
その本を開いてみて、驚いた。
今もって、凶悪事件の時効は15年なのねこの世界。
気になったのは、以下の条文。
「共犯者の起訴から結審まで、時効を停止する」
あ、じゃあ最後は、この項目に基づいて話が進むんだろうな。
天海の起訴から結審までに、時間がかかった事を材料にするんだろうな。
……って感じで、オチを察した人は、私だけではないだろう。
なお、この条文に関しては、我々の現実でも適用されます。
(刑事訴訟法第254条2項)
と、法的には見事な一方、カガク的にはトンデモナイこの事件。
美雲「18年間も死体を隠すなんてできるんですか?」
出来る出来ない以前に、生理的に受け付けられないんですが。私は。
それで取り上げられるのが、あのトンデモナイ光る布。
御剣「この布は特定の色に光らせることで、氷のようにも見せられるそうだ」
水鏡「そんな……バカなことが……!」
うん。今だけは同情してやろう。水鏡。
そして司は、死体を「夏の宮殿」から噴水へ放りこんだ次第。
水鏡「やがて凍りついていた死体もとけ、浮かび上がってきた……と?」
あーあーあー、聞こえない!
キモチワルイ説明やめてくれー。
司の行動を裏付ける、最後の証拠品。
それは、氷を包んだテーブルクロス。
その隠し場所の指摘は、確かに驚かされたし、許容範囲だったかと。
奇しくも『逆転サーカス』と同じ、バストアップ時の画面外。
けれど、このシリーズなら全身も写ってるからね。
かくして、ついに司は自らの犯行を認めた。
で、この後、司の事情心情が述べられるわけだが。
ここでお断りさせてもらいます。(以下、辛口私見)
私は、司に感情移入できてません。
天海の一大事の最中に氷くすねて、御剣信たちにまで平然とウソついて、
挙げ句の果てに殺人(未遂)に手を染めた人。
いくら彼女が「天海さまのため」と称しても。コレが事実なのである。
彼女いわく、屋敷を買い戻した時に、死体の件を初めて知ったと言うが。
それ以前に、天海の親族の誰一人も見つけなかったというのが異様だ。
そしてその後、彼女は一段と暴走してしまう。
自分一人の手で、真犯人を死罪に処そうと目論んだのから。
御剣「私はこの人物をIS-7号事件の真犯人として告発する!」
最後も、司は自らの行為を正当化する発言を。
司「これはわたしの罪が招いてしまったことですから……。
わたしは、一刻も早く天海さまを救い出したかったのです……!」
「それに18年前、死体が消えても警察はそれを隠しておられました。
死体が見つかったと報告しても、またジジツを消されるかもしれない。
だから美術館の開館中に多くの目が触れる場所で事件を起こしたのです」
申し訳ない。
あなたの気持ちを分かると言えなくて。
あなたが復讐に走った事。コレは揺るがない事実なのだ。
思えば、最初から最後まで、あなたは独り合点で動いている。
最初に死体を見つけた時に、まず天海さんに報告すれば良かった。
氷を盗んだ時に、弁護士たちに打ち明けていれば良かった。
倉庫で死体を見つけた時も、マスコミにでも堂々と発表すれば良かった。
心から本当に、天海さんを想っているというのなら。
他人を襲ったりなど、してはいけなかったのだ。
そう、彼女に告げてやりたかった。
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