事件現場は、「ビッグタワー」の50階。検事審査会の審議室。
悪の拠点だけあって、清々しいまでの税金ドロボーぶりである。
例えば我が地元では、裁判所と検察庁とが、すぐご近所に並んでるのに。
先に現場を調べていたのは、伊丹大学病院院長にして検死官の「伊丹乙女」。
瞳子が助手として介添している……ように見えて、ときおり引っぱたき合ってるのが奇妙な点。
とゆーわけで。ここからは自由行動。
さっそく美雲と会話……している内に。完膚なきまでに打ちのめされた。
御剣「どうやら、モノの名前も忘れてしまっているらしいな」
あらまあ、それは何て斬新なパターン……なんて思ってたまるか。
それじゃ記憶喪失どころじゃない。もっと遙かに危機的状況だ。
更にいろいろ話しかけても、いくつもの事件に挑んだ御剣やイトノコ刑事との、
思い出のカケラ一つ浮かばない。
運命的に引っかかる何かとか、全然ないのか。
かつのて成歩堂でさえ、「この目の前の人を救わなきゃ」という意志は消えなかったはずなのに。
せいぜい、検事バッジを示すと、
美雲「あたしにとって、大事なダレかがよく見せてくれていたような……」
と、父親への気持ちを思い出しかけるくらい。
糸鋸「ミクモちゃん、かわいそうッス」
ああ。確かに可哀想だ。
ご都合主義に振り回されて、こんなにも薄情な性格に描かれて。
ミステリのキャラたるもの、敵に捕まったり、殺されそうになったりするのは宿命だ。
けれど、ここまで「理不尽な不幸」を受けたメインキャラって、今まで居なかったはずだ。
記憶を失うか失わないか、思い出せるか思い出せないか、
そんな事は、それこそ創り手の筆一本で決まるんだから。
(私は)どうにもやるせない気持ちのまま、部屋を歩き回る。
警官からセキュリティシステムを確認し、
「円卓の騎士」をモチーフにした会議テーブルを越えて、
ギリシャ神話のテミスをモチーフにした女神像の下へ。
血痕を見つめていたら――この重い空気を吹き飛ばす人がやって来た。
「失礼するわ」
今も密輸組織を追う、国際的検事の狩魔冥、ただいま参上。
伊丹乙女の知り合いだという冥の許可を得て、事態は進展。
なお、この時、冥に話しかけると、こんな台詞が。
御剣に対して。
冥「アナタがついていながら、なんて情けない!」
美雲に対して。
冥「アナタ、体は大丈夫なの?」
反応が普通だ。
というか、本来ならコレを御剣たちが言うべきだよな……。
燭台で刺されたらしい死体に接写。
どうやら、この人物は、美雲と何らかの縁があるようだ。
というのも、そのそばに――美雲が昔持っていたノートがあったから。
糸鋸「ミクモちゃんの”思い出の品”が、いつの間にか紛失したらしいッス!」
という話を受けて、拾おうとしたが――拾えない。
何度カーソルを合わせても、「捜査手帳」にファイルされない。
このノートを美雲に見せれば、それで事件解決するのになあ……。
そんな風に、被害者について一通り調べたものの、今もって名前も不明。
そこに例のコンビがやって来た。
弓彦「犯人は一生コウカイするだろう! このオレのうぎゃはッ!」
と、猛獣使いにしばかれた小物、もとい弓彦によって、被害者の身元が判明。
弓彦「弁護士・籠目つばさ。検事審査会の一員というわけだ!」
ここで、「捜査手帳」を確認。
つまり、この人が美雲に手紙を送っていたという事になるわけだ。
検死官たちが去った後、さっそく美雲をしょっぴこうと息巻く弓彦。
けれど、目の前の人間を見捨てるなんて出来るわけない。
次なる目的は、一柳弓彦の主張を崩す事。
アホ推理を飛ばす弓彦の調教は冥に任せて。本当に相手取るべきは、水鏡の方。
彼女が見せた、1通の手紙。そこには、こんな文言が記されていた。
「12年前の復讐を果たしてくださいね! 美雲」
次なる目的は、水鏡秤の主張を崩す事。
それで判明したのは……何とも中途半端な話。
そもそも手紙が本物か分からないのでは、これ以上の論証は無意味だ。
冥「バカのバカバカしいバカ騒ぎ……つけるクスリがないとはこのことね」
対して御剣は、事件に絡む第三者の存在を指摘。
もしかしたら、それは水鏡かもしれない――。
そんな所に。
「思いだすねー。僕も若いころ、そうやって刑事とケンカしたっけね。
……か、彼……姿消しちゃって……。今も……元気ならいいんだが……」
入ってきて早々に、勝手に話を始めたオッサン一人。
冥と知り合いでもあるらしい、何ともヤラシイ笑いを浮かべる人。
弓彦の父にして、「検事審査会の会長にして元検事局長」(by水鏡)の、
一柳万才(ばんさい)である。
……まさか。今回もまた、公務員のエライ人が犯人ってパターンなのかね。
ソレもう『蘇る逆転』で食傷気味なんですが。
万才「弓彦が生まれたときはね、かみさんと喜んだものだがね。
今や……そ、そのかみさんも行方知れず……ううッ…………」
ダメだ。コイツが殺したって目でしか見れない。
そのじつ万才、問答無用で美雲を連行しようとするわけで。
そのような脅迫じみた形などに、誰が従うものか――!
美雲「ミツルギさん……短い間でしたけど、ありがとうございました……」
って、自己完結するんじゃないよ!
あきらめちゃダメです、って御剣を何度も焚きつけた当人だろうがキミは。
その、瞬間。
我らが御剣の、堪忍袋の緒が切れた。
御剣(こんなバッジ一つと、大事な知人のイノチ……ハカリにかけるまでもないではないか……!)
きっと、ふてぶてしいほどの笑顔で。
誰よりも潔く、美しく。
御剣は自らの意志で、検事バッジを捨て去った。
御剣「私は……私の信じる道を歩む。……こんなところで、立ち止まるワケにはいかない!」
そうだ、決意した以上、前へ進もう。目の前にいる「究極のコドク」の人を救うために――。
美雲「……ごめんなさい。あたしなんかがいなければ……」
だから一人で自己完結するんじゃないよ!
何故か飛び出して行ってしまった美雲に、(私は)唖然としつつ、次の章へ。