『忘却の逆転』実況レポート (後編2)

案の上と言うべきか。凶器はドコにも見つからない。
冥いわく、少なくともこの「ビッグタワー」の中には存在しないそうなのだ。

水鏡「こんな形で、あなたに判決を下すことになるとは思いませんでしたわ」
御剣(ここまでか……)

御剣とシンクロして、最早これまでかと思った、次の瞬間。

水鏡「被告人…… 一柳万才! わたくしは、あなたを告発いたします!



……………………誤植?



えと。あの。その。えーと。
せっかく華麗なBGMが流れたところ悪いんですが。何が起こったか付いて行けない。
告発されるのは「美雲」じゃなかったっけ?


以後、突如として、左右反転画像となる水鏡。
彼女が語るは、「IS-7号事件」の更なる真相。
狩魔豪や伊丹乙女を陥れた人物の存在。

水鏡「それは、当時の検事局長でした」
御剣「18年前の……検事局長だと? ま、まさか……!」
冥「パパに……初めて処罰を与えた、検事局長といえば……!」



水鏡「…… 一柳万才。反論はありますか?」
と、水鏡は、いきなり呼び捨て状態で万才に詰め寄る。

ところで。ここで素朴な疑問なんですが。
気がつけば、肝心の殺人事件の話が、吹っ飛んじゃってる気がします。
今ここで「IS-7号事件」での不正を挙げられても、殺人事件の犯人探しとは、
まるで話がつながらないと思うんですが。

その、取っ散らかった状況は結果的に、瞳子の告発によって整理された。
瞳子「犯行を手伝わないと、おばあちゃんを告発するって!
   あの男に……マスターに……言われたんだもんッ!」



水鏡「籠目つばさも、わたくしと同じようにあなたを追っていました」
この台詞。
やけにサラッと流されてるが、実は劇的な内容のはず。
つまり、彼女の今までの行動は全て、スパイ活動の一環だったわけなのだ。

水鏡「……御剣検事さま。わたくしも、あなたに協力いたしましょう」
この台詞もまた同様。
この瞬間から彼女、いつの間にやら何となく、なし崩しに味方になってるわけで。

水鏡「……御剣検事さま。数々の無礼をお許しください。
   そして今こそ、わたくしは神に感謝いたします。
   あなたがいたおかげで、わたくしは悪役を演じられたのですもの。
   これまでの罪をあがなうためにも、協力させていただきますわ」

普通なら、例えばこんな風に、御剣たちへの謝罪とか感謝とか説明とか、
そういう言葉を挟んで然るべきじゃなかろうか。
草太や司や美雲を苦しめたり、御剣を留置所に投げこんだりしてるんだし。
そもそも「IS-7号事件」の不正自体もみ消そうとしていたんだし。





次なる目的は、一柳万才の主張を崩す事。





弓彦「オヤジが犯罪者なワケないんだ!」
   「オレ、信じてるからな!」
冥「父親のあやまちを、受け入れないことは許されないわ。
  どんなに尊敬していたとしても……ね」

この冥の言葉の意味は、重い。
彼女もまた、受け入れるまでには、きっと時間がかかったはずだから。



やがてその内、事件の様は反転する。
御剣「被害者がもともと手袋をつけていたのなら……手のヤケドなど、見えたはずがない」
……と、一見は見事に論証してるように感じますが。
そもそもこの録音の信憑性は、被害者がヤケドを見せている事が前提だったはず。
その前提を壊しちゃっていいのかね。

まぁとにかく、そんな御剣の論を、瞳子が頼もしく援護。
瞳子「わ、私……もう怖くありません! おばあちゃんが、ついてるから!」
実はこの話、彼女が最もヒロインらしい事してるかも。



最後の攻撃。マスター、即ち殺人犯の特徴。
その特徴を持つ人物を、いち早く悟ったのは――弓彦だった。
弓彦「! カオに……ヤケド、だって……?」


美雲「真実を知ったから……彼は……苦しんでいるのですね。
    ……真実を知らなければ、苦しまずにすんだのに……」

だから黙れって。

御剣「今度は、私がキミに示そう。キミが無実だという《真実》を!」
美雲「……あたしは…………。……あたしも、真実が知りたい……です。
   教えてください。……ミツルギさん」

やっとこれで頑固者が折れてくれた。
ただ、もういい加減に遅すぎるけど。事件も終わるし。



一方、弓彦は深い葛藤の真っ最中。
弓彦「オレ、がんばって……がんばったんだ、オヤジ!
   オヤジに言われた学校に、言われた通りトップで入学した!」
   「オヤジに言われたとおりにした! だから、シュセキだったんだ!
   オヤジみたいになろうって、賞もいっぱい……!」

けれど。その切なる思いは、簡単に打ち壊された。

万才「テストはなあ、僕が頼んでゼンブ花マルにしてもらったんだ。
   弁論大会も語学大会も、審査員は全員、僕の知り合いだった」

今までの人生全てが――フェイク。
その真実に打ちのめされた息子は、審議室から愕然と走り去った。



その弓彦の無念をも込めて、一同はトドメを放つ。
御剣「一柳万才! そのつけひげを、とってもらおうかッ!」
かくて、あわれ魔王は、火あぶりの刑に処された。

と言いますか……やっぱりコイツ、強敵じゃないわな。
自分から罪を認めないまま、こんな情けない形で決定的証拠をつかまれるとは。





これにて事件解決。
美雲「ミツルギさん……ありがとうございます」
暗い顔ながら、何とかお礼を言えるようになった模様。

なお、凶器のハンマーは捜索継続中。
また、籠目と美雲とで交わされた(とされた)手紙は、万才の偽装ではないとの情報。

万才いわく、現場でたまたま見つけた人間が、たまたま持っていた手紙を元に、
この度の事件を計画したそうなのだ。
率直に言って、ずいぶん短絡的な犯行である。


籠目と万才との因縁も明かされて、そして話題は弓彦へと移る。
冥「……かわいそうなのは、いままで彼が何も知らなかったことよ。
  どんなに残酷な現実でも、受け入れなければならない。
  そうでなければ……彼自身の人生を歩むことはできないわ。………………絶対に」

御剣「……父親の影響というのは、カンタンに消えるものではない。
   だが、彼はこれから変わっていくことができるだろう」


それから。
御剣の処分は、今のところ保留という事で落ち着いたようだ。
順当に考えれば、後日に審議のやり直しという事になるだろう。
あるいは、審議自体取り消しになるか。



事件は終わりに近づいている。
最初から気になって仕方なかったあのノートが、
水鏡から御剣に、そして御剣から美雲に渡された。



これで思い出したら……ハハハ、まるで映画だ。





…………まったく。ホントに。





冥によって瞳子と伊丹も連行されて。
残ったのは御剣と美雲と、後ついでにナツミと。

改めて美雲から事情を聞くと。何たる事か。
何故かひょうたん湖に呼び出されて、何故か謎の人物に襲われて、
何故か死体に出くわして、それで記憶喪失になった…………という事は。
ただ巻きこまれただけだったという次第。

てっきりこっちは、今後の手がかりを見つけたとか、
何らかの収穫を、知らず期待してたんですが……。



そんな折、突如聞こえた機械音。
階上の倉庫へ向かうと、見覚えのあるトランシーバーが一つ。

コロシヤ「御剣さまでございますね?」
     「この事件、本当に解決したと言ってよろしいのですか?
      事件を演出した黒幕の存在に気づいておいでですか?」

その通り。
手紙の件も解決してない以上、まだまだ謎は続くのだ……。




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