空き地へ移った、10人全員。
ずっと知りたかった実父を――過失とは言え――殺してしまったのかと嘆く詩紋を、慰める水鏡。
彼ら二人を置いて御剣たちは、更に深い真相を追い求める。
次なる目的は、狼士龍の主張を崩す事。
と言っても実質的には、御剣の重ねた推理を狼に説明すると言った方が正しい。
あの当時に起きていたのは、そもそも誘拐事件ではない。
幾重にも重ねられた、殺人事件なのだ。
今作に登場していた王帝君もまた、嘘なのだ。
しかしながら、素朴な疑問。
万才や美和所長が、暗殺事件に協力した動機は何だったのか。
よほどのメリットが無ければ、これほど複雑な事件をくむとは考えにくいが。
事件の首謀者が死んでしまった以上、考えても詮無い事だが。
それに。本当にあの当時から現在に至るまで、
西鳳民国の誰一人も、この真相を察せなかったのか。
身内さえ気づかなかったという事は、王帝君は天涯孤独の身だったのだろうか。
ただ、少なくとも狼の父親は、早々に感づいていたわけだ。
だからこそ、証拠品である絵画を、長年隠し持っていたのだ。
国の名誉を優先した故の行動だったのだ。
けれども。時を経て、真相は掘り起こされた。
ずっと偽物に国を乗っ取られていた本物は、やっと安らかな眠りにつけたのだ。
そう。これで全てに決着が……。
「……はたしてそうかのう?」
言って、泰然と話に加わってきたのは、何と了賢。
脱獄犯が現れたのに、誰も確保しようとせず語らっている光景は、いっその事シュールだ。
了賢「セッソウが、ダツゴクしたのは、あのコゾウに会うためよ……。
《赤いレインコート》のコゾウに……のう」
……やっと本題に戻れたか……。
次なる目的は、法院坊了賢の主張を崩す事。
始まりは、18年前。
あの菓子コンテストの事件の日。
了賢は、雪の車中に閉じこめられていた二人の少年を助けた。
彼らは一命を取り留めたものの、記憶喪失になってしまったため、
児童養護施設で暮らす事となった。
その後。了賢は、少年の内の一人と再会した。
死体を運ぶ万才と美和所長を目撃した少年は、彼らに狙われていた了賢を救った。
ボヤを起こしたのも、その救出の一環だった。
少年は、かつての恩を了賢に返したのだ。
その少年こそが、この一連の事件をつなぐ黒幕その人。
実は、黒幕と了賢とは、「通信チェス」でつながっている仲だった。
その際、了賢が送った手紙について、
「ワープロで書かれている」という新情報が、ここで初めて明かされる。
また、内藤が身につけていた指輪の細かいデザインについても、
「アルファベットの刻印がある」という新情報が、ここで初めて明かされる。
それから、了賢が書いていた手紙は、点字による物だったという事実も判明。
……なので私としては、てっきりコレ、
看守がワープロで代打ちしてるんだろうと脳内保管していたのだが。
真相は違った。
了賢と内藤との間に、黒幕が挟まっていたのだ。
ワープロで打ったり、点字を書いたり、一人二役で。器用に。
そんな黒幕の名前が、とうとうここで暴かれる。
理屈を重ねて考えれば、出る名前は一人しかいない。
その理屈を裏付けるのが、以前に渡されたポスターだ。
ミキコが録音した炎の音だ。
ナツミが目撃したあの目玉だ。
そこまで話が進んだところで、了賢は退席。
御剣を犬で押し倒して逃げ去った。
詩紋「あの坊さんが、オヤジを殺した……そうなんだよな?」
「オレ……あいつをユルせないよ。どうしてもユルせない……!
どうせ……どうせなら、オレが……」
と、苦悩する詩紋には悪いが、今は事件を終わらせるのが先決。
御剣は、仲間たちに捜査を依頼し、黒幕の居場所へ向かう。
御剣(何度も顔を合わせておきながら、犯行を続けさせてしまうとは。
大きなフカクを取ったが……今度こそ、決着をつける!)