『第4章 黄金の魔女裁判』実況レポート

被害者:エルシャール・レイトン
被告人:綾里真宵
弁護人:成歩堂龍一
助手(臨時):マホーネ・カタルーシア


……という、トンデモナイ面子で幕を開けるこの度の裁判。
もっとも、真宵がピンチになって成歩堂が奔走するのは、
もはや「逆転裁判」シリーズのお約束なんで、その辺はそんなに驚かない。
と言いますか、ここからやっと本調子だ

その一同に、アルグレイも一時加わる。
「先生の《錬金術》の資料の中に、なにか”手がかり”がないかと思って。
 その……黄金になったものを、”元に戻す”ことはできないか……」

そう。
普通、術という物は解呪と対になっている。
不可視の術「ミエヘン」に対する「ミエール」のように。

ただし、ファンタジー的な考えでは、
身体が欠けてしまってると復活は非常に厳しくなるが……。





さて開廷。
例のジーケン検察士の下に、今回も証人が横にズラリ。
前回のオジサン(だと思われる人)、小学校教師、
派手な吟遊詩人(と相棒のオウム)、そして――悲劇の少年。
ルーク「先生は、マヨイさんの正体を見抜いて……ふたりは、真っ向から対決していたんです!」
    「よくも……よくも、先生をッ!」


……うーん……。
実はこの辺、ある程度ネタバレ情報で知っていて、覚悟してたのです。
机を叩いて涙ぐむ、この手のひら返しは、「レイトン」ファンとしては辛すぎる。

英国少年たるもの、みだりに他者を侮辱するものではないだろう、ルーク?
レイトンが居たらこんな風に、たしなめたかもしれない。


だが、
成歩堂「どうやら、”怒り”と”悲しみ”で目をふさがれてしまっているみたいだね」
と、成歩堂はルークの感情を真摯に受け止める。

何と言っても、ルークはまだ子供だ。
成歩堂だって、あの学級裁判で絶望してた時代があったのだ。

実際、ルークは判断力も失っている。
ルーク「ボクは、もう……自分の目で見たコト以外は、信じません!」
と言いきってるが、問いただしたら何て事ない。
せいぜい彼は、何らかの妙な音を聞いただけ。
レイトンの姿が変わった瞬間すら見ていないのだ。



成歩堂は、マホーネの助言も受けて、ルークを中心に尋問していく。
が、どうしても水かけ論になってしまう、その理由。
それは、被害者の遺体の一部が切断され、行方不明になってしまっているためだ。

実は、冷静に考えればコレ、恐ろしいまでのグロ展開なのである。
なのに、ちっともそう感じさせないのが不思議。
ケッタイな黄金像ってのが、そこはかとなく笑いを誘うんだな。


ところで。そもそもレイトンは事件当時、何と遭遇していたのか。
事は3ヶ月前、ベルデュークの扼殺事件にさかのぼる。
その実行犯は今回と同じく、魔法によって召喚された空飛ぶ魔物だったというのだ!
ってまあ、よくもこう都合の良すぎる呪文があるもんだこの世界。

それで結局、失われたレイトンの一部はドコ行ったのか。
もしや、また手癖の悪い奴が発生したのか。



そんなところに。

「異議あり!」

と乱入してきたのは――いつかの質屋。
いや、だから頼むから、一般人は「待った!」程度で我慢しておくれよ。

もっとも、気持ちは分かる。
「ヒト様のウデをモギとって売りつける」なんて事しでかす奴に関わったのは恥ずかしかろう。
なお、レイトンの腕は、質屋の見立てでも立派な純金製との事。
とにかく、これで身体は継ぎ直されて一安心。
因みにこの時、成歩堂は質屋から買い取ったそうな。
パン屋さんでお金稼いでて良かったねえ、なるほどくん。


オジサンへの尋問は続く。
遺体の一部を横領した(ってホント凄い表現だ)時について問いただす。

その際の台詞の一つ。
「みんな、あのボウシのニイちゃんが倒れる音に気をとられたみたいだな」

「ニイちゃん」言われた30代後半に、思わずガッツポーズ取った私。
当のレイトンは涼しく流しそうだけど。嬉しい。



死してなおも真実を訴えるレイトンに、だがジーケンは食い下がる。
戦法は前回と同じ。
事のタイミングを、より正確に洗い直そうとする。
果たして像が倒れたのが先か?杖が落ちたのが先か?



裁判長「我々は、自分の理解を超えた”魔法”をそのまま受け入れることは、不可能なのです」
ジーケン「しかし。それでも我々は、”魔法”に立ち向かい、それを裁かなければならない!」
と、二人はそれぞれ、自らの職務を全うしようと気炎を吐く。

そんな彼らの意見に、ルークが覚醒した。
ルーク「ボクたち”ニンゲン”は、魔法の《フシギ》に、惑わされてしまう」
けれど……ルークがいれば、道は開ける。
ル「今。ここには……”ニンゲン”以外の《証人》がいるじゃありませんか!」


それなら成歩堂がやるべき事は、一つしかない。
成歩堂「弁護側はッ! 証人として……オウムのビスケット氏を召喚しますッ!」

素っ頓狂な提案に、周りは滅茶苦茶驚いてるが、申し訳ない。
これが『逆転裁判』の平常運転です。

いつかどこかで見たネタと一部かぶってるのは、ご愛敬としておこう。
あの時のオウムは、「キーワード」を話したのに対し、
この時のオウムは、言わばICレコーダーの代わりなのだ。



ジーケン「いやいやいや!」
      「ちょっと待て! 言いたいことはいろいろあるが……」
      「な……なんというコトだ……ッ!」
      「バカバカしいッ!」

ああ、とうとう、ジーケンがツッコミに回った
それにしても、現実離れしてるファンタジー世界の住人に、
非常識だと呆れられるミステリ世界の主人公って一体何。

それでも何でも、成歩堂はずんずんずんと突き進む。
私は何度かヒントのお世話になりながら付いて行く。

「人は事実に合う論理的な説明を求めようとしないで、
 理論的な説明に合うように、事実のほうを知らず知らず曲げがちになる」
という、ホームズ様の名言を体現する。


その一方、オウムの証言に対してこんなボケ。
成歩堂「そんなの! 被告人の《声紋》を調べれば、イッパツで……」

やれやれ。ここが中世の世界観で、命拾いしたな成歩堂。
この証人はあくまでオウムであり、録音機ではない。
それとも何か。キサマは、真宵くんとオウムとが、同一人物とでも言うつもりかッ!

……某赤い人ならこれくらい説教してくるぞ、きっと。



ともあれ、成歩堂が暴いたのは、もう一つの魔法の存在。
それも、ジーケンすら知らない呪文。
それも、よりによってミステリの御法度、密室殺人の天敵、即ち「抜け穴」の魔法。
これで、外部犯という真実が顔を見せた。

更に、恐るべき可能性。
数々の工作を成した真犯人を告発すべきか、成歩堂が躊躇するのを、マホーネが推した。

マホーネ「”魔女”は、火刑に処される……。あなたの目には”異常”と映るのでしょう。
      でも。……たとえ、それがどんなに”異常”な世界であったとしても。
      ヒトのイノチを奪うことは、許されない。それは同じはず……ですよね」


かくして、成歩堂は決断する。
成歩堂(これはカンタンな”ロジック”。……それ以外に、あり得ない!)
一人しかあり得ない真犯人との、対決である。










控え室にて。
目を醒ましたルークは、成歩堂一行に頭を下げる。
ルーク「あの………。……………………すみません……ボク。
    マヨイさんに、あんなコトを……!」
    「ボクは……おふたりのこと。信じきれなくて」
    「ボク。これからも、ナルホドさんたちといっしょにいて、いいですか?」
    「ボク。最後まで、あきらめません!先生は……きっと、帰ってきてくれます。
    ボクたちが、あきらめなければ!」

そう言って、ルークは例の白紙の手紙を成歩堂に託した。





審理再開。
真宵は再び檻の中に収監される。
エコノミークラス症候群対策をしてくれてるのは、人情があるというべきか。
それとも話の都合か(禁句?)。

まず報告。
成歩堂の読み通り、魔法杖には細工があった。
今回の事件では「空を飛ぶ使い魔」に限り否定されたのだ。



それで、いよいよ証言台に立つ事になったアルグレイだが、さすが手強い。
アルグレイ「今のところ、私は……いかなる”問い”にも答えるつもりはございません」



”証言の拒否”……シロートの発想じゃない!



だがしかし。成歩堂は、確かに名探偵だった。
彼は、開廷直前の時点で既に、真相が視えていたのだ。
ただ、それを表現する術を持っていなかっただけで。

真犯人が、「抜け穴」を用いた可能性は立証された。
しかし、たとえ誰が実行犯であろうとも、残る疑問がある。
殺人を犯した動機だ。



そこで成歩堂、3ヶ月前のベルデューク殺しへと論点を変えた。
真宵「大丈夫。そこに立っている、なるほどくんは……”魔女”になんか、負けないよ」
超然と信頼を寄せる真宵と共に、成歩堂たちは次のラウンドに挑む。


最初こそ1対1で向き合っていたが、あれよあれよと証人が増える。
飲みこみの悪さも手癖の悪さも発揮するオジサンと。
ハウリングまで起こして返事する郵便屋、もとい伝言配達士と。

尋問の末に分かった事は、やっぱり現代の鑑識は偉大だなって事。
法廷記録に、「解剖記録」の四文字があればなあ……。



キーになるのは、やはりあの白紙の手紙だ。
アルグレイを友人としてかばう、伝言配達士のプロ意識を根拠に、
成歩堂(とレイトン像とルークとマホーネ)は、答えを導き出した。
成歩堂「たとえ、トモダチのためであっても。ウソはダメですよ」

確かに、この事件に、殺人の動機なんて無かった。
アルグレイは、ただ静かに生きていたかっただけだった。
自分の罪を名乗り出る、勇気を出せなかっただけだった。



事件は終わった――と、全員思った。
とぼけたオジサン一人だけを除いて。

オジサンの、またまた手癖の悪さが発揮されていた事が明らかになって。
今までの全員の推理が、根底から引っくり返った。
成歩堂「ぼくは、被告人を守るためにここに立っています。……しかし!
     ぼくたちの、本当の使命は……”真実”にたどりつくことです」
     「”ムジュン”があるかぎり……そこに隠れているものを、追求するべきです!」


そして。
オジサンの、またまたまた……(略)。
そこからの、意外な最終結論。



殺人事件なんて、「なかった」。



代わりにあったのは、悲しく空しいすれ違い。

もしも、ベルデュークが真意を打ち明けていたら。
もしも、アルグレイが真意を問いただしていたら。
それだけで、平和な日々は終わらずに済んだかもしれなかったのだ。



ベルデュークの知る秘密や、彼の娘の件など疑問は残るものの、これで事件は解決した。
レイトンを変えた魔女は別にいる。
真宵でもないし、アルグレイでもない。
ここがミステリの世界なら、間違いなくハッピーエンドだ。

けれども。ここはファンタジーの世界。
このラビリンスシティでの常識は、今の私たちのそれとは決して相入れない。

魔女は悪を成すのから罪なのではない。
魔女である事自体が罪なのだ。





ここからの先の展開は、語るに堪えない。



痛ましい自己犠牲の連鎖の果てにもたらされた、残酷な結末。
先生を失ったルークと同じ悲劇が、再び起こった。
法廷の火刑器は、ただ機械的に投じられた。





成歩堂もまた、愛すべきパートナーを、永遠に失ったのだ。




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