今回の目的は、ゼニトラの証言を崩す事。
開廷直前。
そわそわ落ち着かないイトノコ刑事は、成歩堂に仕事がないかと申し出る。
糸鋸「ちょっと、署まで、ひとっ走り、行ってくるッス!
1時間もあれば、指紋の検査くらい、できるッスよ!」
それならば、まだ検査の終わっていない物があるから……と成歩堂は依頼。
審理再開。
因みに時刻は、午後1:56。
問題のゼニトラについては、ゴドーは首尾よく、
ゴドー「……捕獲してきた」
って事らしいが。
この言い方だと、ゼニトラは虫か何かか。いや虎か。
最初にゴドーが予告していた通り、興奮して咆哮しまくるゼニトラに、法廷の面々は大混乱。
真宵はテーブルの下に逃げ込むし。成歩堂も裁判長もパニック気味。
ゼニトラ「ダレやァッ! いったいダレが、ワイを呼び出したんやぁぁっ!」
成歩堂「え、ええと、それは……もちろん、裁判長……。
………………………さ、裁判長ッ!」
裁判長「あ! ちょっとボールペンを落としてしまってですね……」
とうとう裁判長まで逃げ出した。
と言いますか、ドコに持ってたんだよペンなんて。
そんな中。
木槌の代わりに打ち鳴らされる、マグカップ。
ただ一人、全くもって動じてないゴドーが事実上、審理を進める。
その際、
ゼニトラ「裁判見物するほど、ヒマやないッ!」
怒りながら言い放ったこの台詞が、実は最も重要だった。
てなわけで。
随分とスッキリした画面のまま、始まる尋問。
だって、裁判長も画面に出ないわ、助手ポジションの真宵も画面に出ないわ……。
こういう展開だと、やっぱり容量が軽くなるんでしょうか?
ただ、この最初の尋問の際、この一番困る発言が。
裁判長「事件に関係のない《ゆさぶり》にはペナルティを与えます」
プレッシャーかかるんだよな、こう言われると。
分かる推理も分からなくなる。
被害者と会う約束をした日に続き、会った場所を確認。
この尋問は揺さぶり可能。
もっともこの尋問、揺さぶらなくても解けますが。
この台詞だけは押さえておきたい。
裁判長「証拠品を食べる証人がありますか!
………………………いや。そういえばムカシ、1人だけいたような……」
少しずつ、少しずつ。ゼニトラの嘘を打ち崩していく。
ゴドー「必要のない《ゆさぶり》には、オレからペナルティを与えてやる」
と、またも嫌な攻撃を受けるものの、この尋問は楽勝でクリア。
成歩堂「ゼニトラさん。……ぼくは、ウソを見破るプロなんですよ」
「ぼくから逃げることはできません」
強気な台詞と共に、成歩堂お得意の漆黒オーラが立ちのぼる。
一方、追いつめられたゼニトラは、それこそ成歩堂のような汗だくだくだく状態。
トドメとばかりに、ゼニトラの所業――フェイクの毒殺事件を演じた事を暴く成歩堂。
またも興奮して咆哮しまくるゼニトラに、裁判長は大慌て。
裁判長「ホレ、弁護人! カツンと言っておやりなさいッ!」
と、言った直後。
切り替わった弁護人席、その画面に、有ってはならない映像が出る。ソレは。
主役が消えた。
今までにおいて、検事側が空席だった事はあったけれど。
いくら何でも、主人公が画面から失せて良いものか。
そんな中、ただ一人冷静を保ち続けるゴドーの話を遮る形で、
不在のまま「異議あり!」宣言(コール)してから、成歩堂は画面に復活。
成歩堂「……ぼくのルスを狙うとは、やりますね。ゴドー検事」
ゴドー「ボールペンは見つかったかい、まるほどう……」
成「ポケットにさしてありました」
だから。ドコに持ってたんだよペンなんて。
気を取り直して。
今回の事件の、更なる共犯者――偽ウエイトレスの正体を暴く成歩堂。
成歩堂「事件は、2回起こった! ……ホンモノと、ニセモノと……」
だが、それでもまだゼニトラは罪を認めない。
ゼニトラ「取引先まで、ジェット機をチャーターせにゃならんが……」
と軽口を叩く余裕さえある。
ただ……。
コイツにだけは「チャーター」という言葉、使ってほしくないな。全クリアした今となっては。
続きまして、今度は事件の動機について。
この尋問で解き明かすべき論点は、大きく二つ。
その1。被害者の岡高夫は本来、ウイルスプログラムで借金を返す予定だった。
その2。加害者のゼニトラは、うらみの事故の治療費が必要だった。
つまり、今回の事件の中心にあった「宝クジ」こそ、実は最も不要なミスリーディングだったのだ。
あくまでも、被害者の個人的趣味に過ぎなかったのだ。
なお、ここで押さえておきたい事を少し。
そもそも、青酸カリを持ち歩くというのは非常に難しい事である。
何と言っても潮解性が高いため、長く持っていると風化してしまうからだ。
また、偽の事件の芝居を打つのにも、相当の準備が必要だし。
つまり。
たとえ宝クジが当たって、ウイルスを渡さなくて済んでも、
たとえ宝クジが外れて、ウイルスを渡す事になっても、
被害者は始めから殺される運命だったわけだ。
恐らくは、口封じのために。
そう考えると、より一層、被害者が哀れだ。(博打好きは自業自得だけど)
ところで。揺さぶって追加される証言を、更に修正する――というパターンは、今回が初めてかと。
今までは、揺さぶって追加された証言が、そのまま重要な証言とされていたので。
閑話休題。
成歩堂の推理は、次の段階に入る。
フェイクの毒殺事件に続いて起こった、フェイクの”裁判”について。
成歩堂「……芝九蔵さん」
「1ヶ月前の法廷で……あなたは、このぼくを演じたんです!」
こう言った成歩堂に対し、裁判長はまさに驚愕。
裁判長「なんですって……! そんな……そんなコトが……」
成歩堂「……ジジツです」
裁「だって……ゼンゼン似てないではないですかッ!」
だったら気づけ。前回の裁判で。
思わず全力で、そんなツッコミを入れた私。
裁判長「……………………………………」
「………しかし。言われてみれば……たしかに、あなたでした。
あなたは……たしかに、1ヶ月前。最低の弁護をした、
みっともない弁護士・成歩堂龍一です!」
お見事、これにて一件落着!――と思ったら。
その前にゴドーが立ちはだかる。
ゴドー「じゃあ、ジイさん! アンタは、立証できるのか?
1ヶ月前の”弁護士”がこのオトコだった、とッ!
証言台に立って立証できるって言うのかッ!」
と、そんなゴドーに、ゼニトラが便乗。
まるで、てのひらを返したかのような――卑屈な態度で。
ゼニトラ「……ちょっと……おっちゃん……か、カンベンしてェな」
「ワイ、そんなんチャウで。やってへん。やってへん。
なァ……、見まちがいやろ? そう言ってえな、おっちゃんやァ」
……小物だ。
今、私の中を、冷たい風が吹き抜けていきました。
成歩堂「ぷ……プライドはないんですか! あなたには……」
と、流石の成歩堂も、(私と)同様に呆れ返っている様子。
けれども。
普段はボケまくりの裁判長も、肝心な部分はプロだった。
裁判長「”個人”としての私には、カクシンがあります」
「……しかし……! 私は今、判決を下す立場……”裁判長”として法廷にいます。
証拠のない、”記憶”などに左右されるわけにはいきません!」
全ての真実は法廷記録だけが知っている。ソレが、『逆転裁判』世界の絶対的法則。
十二分に分かってる。分かってるけれど。でも。
ゼニトラ「………………………………ケッ!」
ああ悔しい。立ち直られた。
真相までは、あと一歩。あと一歩なのに……と地団駄を踏みかけた、その時。
声が響いた。
「待った!」
あの時の狩魔冥さながらの後光を背負って。
イトノコ刑事、法廷に乱入。
その手に持つのが唐草模様のフロシキ包み、というのがアンバランスだが。
そのイトノコ刑事が言った「決定的な証拠」という言葉を受けて、審理は一旦中断される。
休憩室にて。
起死回生と盛り上がりまくるイトノコ刑事と真宵とは裏腹に。
ただ一人、水を打ったような静けさを保っている成歩堂。
成歩堂「今さら、この小ビンにダレの指紋がついていても……イミがないんだ」
「今、ぼくたちが提示しなければならないのは……
”芝九蔵がコーヒーに毒を入れた、決定的な証拠”……です」
と、冷厳なる事実を突きつけられ、沈むイトノコ刑事の元に、マコが現れる。
が、あっと言う間にイトノコ刑事は逃げ去ってしまう。
イトノコ刑事が、まさしく必死になって与えてくれた、最後の証拠品。
どんな形であっても、コレを使える手段は無いものか……。
審理再開。
因みに時刻は、午後3:04。
ゼニトラ「フン! アホらしいわ! 初めて裁判ってモンを見たケド……
やっぱり、大したコトないのぉ。……弁護士なんて連中は!」
と息巻いているゼニトラに、成歩堂は予告していた”決定的な証拠”を突きつける。
裁判長「こ、これは。たしか、被害者の……」
という裁判長の台詞を遮って。
成歩堂(ニセモノの裁判、ニセモノの弁護……そしてニセモノの手がかり。
すべてがニセモノだった、この事件にカタをつけるのは……
やはり《ニセモノの証拠》こそがふさわしい!)
かくて今から、成歩堂による一世一代の大芝居が始まる。
いつもの汗だくだくだくの顔はどこへやら。
完璧なるポーカーフェイスで、真っ赤な嘘八百を並べ立てる。
もっとも、愚鈍なふりをして誘導尋問に引っかける……というこの作戦は、
実は『逆転姉妹』の時にも使っている物だったりもするけれど。
そんな成歩堂のに対して、ゼニトラは余裕たっぷり。
ゼニトラ「そんな安ぅいハッタリで……ゼニトラをダマせると思ォたか?」
「青酸カリの入ったビンは、茶色い、ガラスビンや!
そォんなセコい小ビン……、ゼンゼンちがうやないかアァッ!」
この言葉を言った瞬間。
ゼニトラの命運は尽きた。
知らぬは当人ばかりなり。
その事実を、成歩堂は静かに告げる。
成歩堂「あなたは、さっき初めて、この法廷に召喚されてきました。
もし、この殺人事件に関係がないのならば……知っているハズがないんですよ。
青酸カリが、どんなビンに入っていたか、なんて……ね」
いくらゼニトラに凄まれても、もう成歩堂は動じない。
氷柱の如きオーラと共に、彼は真犯人を叩きのめした。
成歩堂「たしかに……最後の証拠品はニセモノでした。
しかし! あなたには、ニセモノの証拠品こそ、ふさわしい!
……ニセモノの裁判、ニセモノの弁護士……
そして、あなた自身! すべてがニセモノだったのです!」
そんな折、なぜか不意にブラックアウトする画面。
で、その次に画面に出た物は。
目だけ?
ああそうか、成歩堂のあの目か。
裁判長「……ナニゴトですかッ!」
係官「どうやら……停電のようです!」
それから、「ぱしっ」という音が鳴ってから。
ゴドー「やってくれたな……まるほどう……」
という台詞の次に、画面に出た物は。
赤だけ?
ああそうか、ゴドーの仮面のレンズか。
ゴドー「……17杯目のコーヒーは、アンタにおごっておくぜ」
と言った時に、照明が復旧。
正直な話、この後、Aボタンを押すのが猛烈に怖かった。笑うから。
でも、そんな風にカップを投げつけながらも、ゴドーはこう呟いた。
ゴドー「本当に恐ろしかったのは……そこの弁護人だった……のかも、しれねえな……」
何はともあれ。これにて、事件解決。
因みに閉廷時刻は、午後4:10。
無罪Getに喜ぶマコを、戸口から見ているイトノコ刑事。
が、真宵たちに気づかれた途端、
糸鋸「あ……じゃッ! そういうコトで……!」
どういう事だか知らないが、いきなり逃げ出そうとするのを捕まえる。
イトノコ刑事とマコの間に流れる、気まずい空気。
その会話も、どうにもギクシャクしまくって。
糸鋸「………………じゃッ! そういうコトで……!」
結局逃げた。
ああもう、潔くないんだから……と(私が)思う中、成歩堂がフォローに回った。
成歩堂「……ねえ、マコちゃん。イトノコ刑事は、いつもきみのコトをシンパイしてたんだよ」
「……はい。これ、無罪判決の、お祝い」
そう言って、差し出すプレゼント。
もしや、マコが意地を張っていただけだったという事も、分かっていたのかもしれないとも思ったり。
マコ「………………………アタシ……じつは、ウインナー、そんなにキライじゃないッス」
「……あの……。食べてもいいッスか? これ……」
と言ってから。
涙を零しながら、イトノコ刑事の弁当を食べるマコ。
今度こそ本当の幸せをつかめ――そう願わずにいられない。
さて。
暗闇の中でも落ち着き払っていたゴドーへの疑問を、頭の片隅に残しつつ。
ここから一旦、物語の時と所は飛躍する――。