今回の目的は、犯人側の真意を暴く事。
冒頭弁論では、またも夕神、独自の理屈の口車。
おだてられた裁判長は、またも乗せられ使われる。
夕神「今回だけは特別にやらせてやるよ」
こんな風に、面倒な自分の仕事をさも面白そうに伝えて他人にやらせるのは、
「トムソーヤのペンキ塗り」を連想させます。
一人目の証人は、前回逃げ出した熊兵衛。
最初に議題となったのは、天魔太郎の背丈について。
王泥喜「ちっこいくせに……とは聞き捨てなりませんね」
熊兵衛「へへへ。おめえも背は高くない方だもんな!」
王(ミカン箱使ってる、あんたに言われたくないよ!)
言われて気づいた。
ってコレよく考えてみたら……
結局、10年以上、踏み台一つ買ってないって理屈になるぞこの裁判所。
その後、王泥喜の推理を受けて、他の者たち揃ってダメージ。
夕神「……ぐ!」
熊兵衛「ぐぎゃああああああああああ!」
裁判長「なんですとおおおおおおおおおお! ちょ、ちょっと王泥喜くん!」
かくて王泥喜、場の全員を驚かせ、物証を掲げて鑑定を請う。
ひとえに使命を果たすそのために。
今まで私は、歴代の主人公たちを何かに例えてきた。
成歩堂や千尋は鷹、御剣は豹、信は狩人。
王泥喜は、猟犬(ハウンド)だ。
一見無害で大人しいが、牙をむいたら誰にも負けない。
吠える声さえも、強力な武器になる。
関係者の指紋についてなら、番刑事なら話が早い。
さあこれで、あの気障男を引きずり出せる!………………と、思ったのに。
出てきたのは、やっぱり熊兵衛。
ええと。何だかヤヤコシイ話になってきた。
が、証拠品から導かれていく結論に沿う以上、天魔太郎の正体も、もはや疑いようがない。
で、何でそもそもそんなヤヤコシイ事になったのか。
熊兵衛「開かずの間の財宝のためだ!」
つまり、あの黄色の何かだ。何となく想像はつくが。
要するに熊兵衛は、探偵パートの時点からさりげなく配されていた「抜け道」で、
密かに現場に紛れていたのだ。
そして、凄惨な場に立ち入っていながら、まるで気づけず逃げてった、と。
さて。これで支度は整った。
心音の援護も受けて、王泥喜は本丸に切りこんだ。
一旦休憩。
心音は陽気な一方、王泥喜は憂い顔(←推定)。
彼の真面目な予感は、確かに当たる事となる。
二人目の証人は、いよいよ美葉院。
またまた髪の色が派手すぎるのが目に留まる。
美葉院「ふん! タダの雑草が、美しき花を疑うなど」
黙れ雑種がァ!
……思わずこう言い返したくなった私は、某慢心王が結構好きです。
そんな荒れた場を収めようとしただろう夕神が、またキレた。
夕神「命を奪う覚悟のねえヤツは、…………失せなァッ!」
って、もうこの人、拘束具でもなきゃ止められないんじゃ…………。
ペラペラと、ゆめみと市長の不利を言い立てる美葉院。
食らいつこうとする王泥喜に、夕神の反撃。
夕神「証人、往生際が悪いなァ。素直に認めちまいなァ。
真剣ふり回す敵を前に、嘘八百は通じやしねェのさ」
これぞ名付けて、「あなたの罪を認めるのだよ」の術!
(例えば『逆転姉妹』終盤で、御剣が使ったアレ)
その後しばらく、美葉院のミスに、夕神がフォローする展開が繰り返される。
追いつめられたところに入った助けは、妖怪だった。
三人目の証人は、未だ「なりきり」やってる市長。
彼の非現実的な記憶をクリアにするべく、ココロスコープを心音は繰り出す。
会話を進める内に、少しずつ思い出されていく当時の出来事。
結果、導かれたのは、明らかに異なる二つの事実。
現場に倒れ伏している九尾と、「開かずの間」を開ける九尾と。
これではまるで、村長が二人いるかのような……。
違う。
そもそも、マスクの下が村長だと誰が決めた?
そして、あの一見無意味な証拠品――ヘヤカラ―の存在意義は?
心音「先輩!そういえば、ナルホドさんが言ってました。
どうしようもなく、ピンチの時は、発想を逆転させろって」
言われて王泥喜も思い出す。
当事務所の、当シリーズの根幹を。
それで真相に気づいた王泥喜に対し、夕神は激しく驚愕。
夕神「がァ! ま、まさか……! そんなバカなことが……!」
「なにを……言ってやがる。ど、ど、ど、どういうことだッ?」
ですよね夕神さん。私もあなたの側の感覚でした1周目当時。
以後、王泥喜から滔々と語られる、事件の流れ。
こういう「復習」を挟んでくれると、推理力の低い私としては、非常にありがたい。
一度明かされたら、後はシンプルになる事件は大好物だ。
実際、こうやって説明してもらったからこそ、理解できる。
美葉院と熊兵衛と、二人の思惑が連鎖した事が、この事件の核だったのだ。
が、この期に及んで、抜け抜けと市長を脅す美葉院に、弁護士コンビは怒り心頭。
心音「……せ、先輩! あの人、殴っても良いですか?」
王泥喜「むしろオレが殴ってやりたいよ!」
いや、落ち着け。落ち着いてくれ頼むから。
美葉院「天魔太郎がある限り、悲劇は繰り返されるのです!」
そうかよ、分かった、そこまで言うなら。
解放してやろうじゃないか。あんた達の村を。天魔太郎の呪いから!
そんな事を思ったかは知らないが、ともあれ王泥喜は、天魔太郎の正体を白日に晒した。
王泥喜「妖怪天魔太郎は、ねつ造された妖怪だったのですね」
……って、この言い方だとまるで、妖怪が実在するみたいだけど、いいのか?
が、夕神だけはまだ粘る。
具体的な物証を出さない限り、裁判は終わらない。
だから王泥喜は――弁護士版ロジックスペースへ降下する。
王泥喜(さあ、市長の無罪を立証するんだ、王泥喜法介!)
言うなればコレは、「読者への挑戦状」の具象化だ。
《あなたはこの時点で、この犯罪を解決するために必要な情報を全て手に入れている。
あなたはその事実を元に合理的な推理を構築した上で、犯人を特定して下さい。》
提示された挑戦状を受けて。
王泥喜の、主人公の、プレイヤーの脳内パルスは一条の光となって駆け抜ける。
以降、王泥喜は事件のほぼ全貌を見通した状態で、論を進めていく。
この展開については、人によっては賛否が割れるかもしれない。
最後までサッパリ分からんまま、不安のまま突っ走ってた初期の味も、
また捨てがたいと思うし。
王泥喜「あなたこそが村長殺害の真犯人ですッ!」
ともあれ、正面顔でビシッと決めて、そこで事件は見事解決。
序審法廷万歳。
裁判長「王泥喜くん。どうやらあなたは……成歩堂くんに劣らず、
法廷をひっくり返す弁護士のようですな」
光栄な言葉で褒められて、王泥喜たちに祝福の紙吹雪は舞い落ちる。
更に閉廷後。
成歩堂「オドロキくん、よくがんばったね。あの真相はぼくにも全く予想がつかなかったよ」
王泥喜「へへ。まあ、まぐれですよ」
嗚呼、げに美しきかな師弟愛。
……マジで泣けてくる。
ゆめみや市長からも、飛びっきりの感謝をいただいて。
事務所員たちは、打ち上げ目指してラーメン屋へ向かうのだった。
と、ここで終われば完全無欠のハッピーエンディングになるんだが。
心音による、やけに湿っぽいナレーションが再び挟まってから、物語は次の事件へと、続く。