ここに至るまで、長かった。
長い、長い、長い、回想を経て。
ついに、やっと。
時間は現在へ立脚する。
今までの回想の主にして、
この「逆転シリーズ」の絶対的観測者である、成歩堂龍一の視点へ、物語は回帰する。
全てに決着をつける時へ、もうすぐ至る。
成歩堂所長の事務所にて。
怪我により入院してしまった王泥喜を、一同は憂う。
そんな暗い雰囲気を、心音が破った。
心音「「わたしたちで、引き継ぐんですよ!」
「先輩の担当事件、まだ解決してないじゃないですか!」!」
みぬき「ホシナリさんの弁護、ですよね」
「ココネさんの言う通り……これはとむらい合戦ってヤツだよ、パパ!」
厳密には不謹慎な言葉だが、言いたいニュアンスは寧ろ共感できる。
なのですぐに調査へ向かった心音を、慌てて成歩堂所長も追った。
留置所。
変わらず落ちこんでる星成だったが、心音に見覚えがある様子。
心音「え? …………き、気のせいじゃないですか?」
と、形だけ否定する心音だが、この言い回しでは
(少なくともプレイヤーには)バレバレである。
かつて第1作で、成歩堂が御剣と面識があるのを隠していたのは、
ミスリーディングも絶妙だったんだが。
有名人だから知ってて当然と、独白で叙述トリックやられたのは、当時驚いたもんだ。
閑話休題。
星成は宇宙への恐れと憧れを語った後、話題は被害者の葵へと移る。
星成「王泥喜くんと葵は、大親友だからね。
彼らが高校生の頃から、よく一緒に遊びに来てたよ」
成歩堂「オドロキくんが信じたあなたを、ぼくも信じることにします。
部下を信じられない上司にはなりたくないですからね」
このお言葉、信じて良いのですよね……所長。
とゆーわけで。
成歩堂所長と心音は、宇宙センターへ到着。
(JAXAならぬ)「GYAXA」のロゴが目に入る。
って。おいこらちょっと待ちたまえ。
いつからこの作品は、種子島が舞台になったんだ!?
と、一瞬だけ全力で「異議あり!」宣言(コール)したくなったが、ぎりぎりの所で踏みとどまる。
そうさ、そうだよ。まだ慌てるような時間じゃない。
宇宙センターの本部なら都内にあるじゃないか。そうだよきっと。
入口で滔々と説明する心音を遮ったのは、
ギャラクティック・スクーター(というかセグウ○イそのもの)に乗って現れた、
センター長の大河原有忠(おおがわら うちゅう)。
彼は死体の第一発見者でもある以上、聞き込み開始。
ところが、どうも今度の検察側の証人らしく、事件の情報は期待できそうにない。
代わりに聞けたのは、星成が7年前に成し遂げた「HAT-1号計画」の事。
ロケット「HAT-1号」を衛星軌道上に打ち上げ、
そのロケットから小惑星探査機「みらい」を
小惑星帯に発射した後、ロケットは帰還したのだという。
………………………………。
ナンセンスな事してるよな、というのが、宇宙好きとしての率直な感想である。
そもそも、「小惑星探査」に「宇宙飛行士」は必要ない。
地球から直接、無人の探査ロケットを打った方が、ずっと安全確実だ。
現に、元ネタとして明らかだろう「はやぶさ」は、そうやっている。
このような中途半端な描写をするのなら、星成を純粋な研究者にするか、あるいはいっそ、
「この世界では有人での小惑星着陸に成功した!」
くらいのハッタリかまして欲しかった。
せっかく、「月の石の採取」なんて、NASAレベルの偉業をさらりと書いたりしてるんだから。
成歩堂「それにしても……ココネちゃん。今回に限って、ヤケに博学だね」
心音「え? ほ、ホラ、担当事件ですもん、勉強するのは当然じゃないですか!」
素朴な疑問。
何でこの時、例のアレが視えないんだろう。
(詳細は後ほど)
センター内のラウンジ――葵の殺害現場――を、
今の時点では素通りして、第1発射第通路へ向かう。
………………この瞬間、「ここは宇宙センター本部である説」は崩壊した。
ああ、そうだ。ここはきっと、都内の離島なんだ。きっとそうだ。(遠い目)
通路で出会った番刑事は、
番「事件の情報か……よし! よろこんで提供しよう!」
と、やけに好意的。
警備のために居合わせていた、事件当日の事も教えてくれた。
番「4階の窓から、避難ハシゴを下ろして脱出したのだ」
「全員を避難させたあと、最後にジブンでこれで大地に降り立った!」
番刑事の教えてくれた目撃者を探して、ラウンジへ戻る。
隅々まで調べる中、指紋認証機もチェックするが。
だからどーしてこの作品は、電子機器にアルミ粉をぶっかけたがるんだろう……。
全部を調べ終わると、新たな登場人物が加わる。
もとい、正確には「人物」と言って良いものか。
案内ロボットの「PONCO(ポンコ)」である。
心音「ポンコ! 会いたかったよー!」
成歩堂「あれ? ココネちゃん、知ってるの?」
心「あ、いや。前に……先輩と来たとき案内してもらったんですよ」
何だか、どんどん苦しくなってきてるぞ。言い訳。
案内された先にあったのは、ロケットの実物大レプリカ。
ポンコ「レプリカだけど、内部まで本物そっくりに出来てるんだ」
つまり、正確には、完全なコピー(複写)と呼ぶべき代物。
この点を、きっちり押さえておいた方がいい。絶対いい。
そのポンコに、7年前の写真含め、色々教えてもらう際、
ちらちら心音にふっかける成歩堂所長。
成歩堂「ココネちゃん、どうかした? 元気ないみたいだけど?」
「ココネちゃん、(ポンコと)本当に仲がいいね。 昨日会ったばかりとは思えないよ」
まさか、薄々気づいててわざと言ってるのか。
それともやっぱり天然か。
再び通路へ。
番「事件関係者のデータならジブンが用意したものがある」
と、番刑事は葵を含む全データを提供してくれた。
ところで、今回に限ってこんなに愛想がいいのは何故なのか。
番「何のことだね! ジブンに限って、そんなはず……」
そう言った瞬間。
とうとう出ました例のアレ。
銀の鎖に頑丈な錠。
成歩堂「こ、これは……《サイコ・ロック》じゃないか」
「人のココロにかかるカギのことです。
この勾玉を使うことで……ぼくには、人の”ヒミツ”が見えるんですよ」
「昔、ある人からもらったんです」
あーこれこれ、倉院流霊媒道の深淵をぺらぺら喋っていいのか、きみ。
「初期三部作」では、こういうオカルト要素は全部独白(モノローグ)で
済ませてたはずなんだがなあ……。
因みに、このロックは即解除できる。
今までのようなペナルティゲージが消えたため、難易度も絶無になっている。
物語に集中できると見るべきか、緊張感が無くなったと見るべきか。
そんな中、言われた台詞の一つに吹いた。
番「不自然と言えば、弁護士くんのその前髪。
前々から思っていたが、不自然じゃないかな!」
本音を読まれた。
ともあれ、無事にロックを解除して、話題は夕神の事情へ移る。
7年前、同じ宇宙センターで起きた事件。
夕神が、殺人の罪を負った事件。
番「法廷でのユガミくんを止められるのはキミたちだけなのだ」
と、番刑事は夕神を真摯に慕う姿を見せる。
読んでいて、胸を熱くしたものだ。
1周目、当時は。
入口まで戻ると、またもロボットが現れた。
名前は「ポンタ」らしいが、どこか故障しているのか、まともに喋る事も出来ない。
そこに現れた、ロボット開発担当の女性科学者。
名前は「夕神かぐや」。
夕神迅の姉である。
正直に言いまして。
この人の第一印象は、個人的には最悪だった。
二言目には、隣のポンタをぶん殴り、ひっぱたき、のしかかり、
その度にガンガンと耳障りな金属音が響きわたるわけで。
誰が言おうと、私にはコレ、ギャグには見えない。
子供への虐待にしか見えない。
それでも、話は聞かなければならない。
何と言っても彼女こそ、殺人事件の目撃者なのだから。
それに、彼女の言動が荒いのも、理由がある。
かぐや「わたし、弁護士が大ッ嫌いでさ」
「でも大丈夫よ。検事のほうが、ずーっと嫌いだから」
まあ要するに、根本的に人間不信なのだ。
そんな折。心音のモニ太を見て、かぐやがついに気がついた。
かぐや「へえ、そういうこと。ヤダヤダ。お姫サマのご帰還ってワケね」
留置所。
かぐやが目撃した証拠品を、どうやら星成も見ていた模様。
と、ここで、第1話ラストの場面が再演される。
逆に言えば、あの王泥喜離脱シーンは、前振りの予告編のような物だったのだ。
中学時代からの親友だった葵を救うべく、
形見のジャケットを羽織る彼は、自らの過去を振り返る。
二人の縁は、中学までさかのぼる。
母を亡くした葵と、元から母のいない王泥喜と。
そんな王泥喜の話を受けて、成歩堂所長は独り考える。
成歩堂(ぼくは星成さんのように、部下が尊敬できる存在なのだろうか)
王泥喜「オレはオレのやり方で、友の命を奪った相手に罪をつぐなわせます」
そう言って、王泥喜は事務所を去った。
過ぎた今なら、思う。
もしこの時、全員が相談し合えていたら、歴史は確実に違っていた。
王泥喜は誰を疑っていたのか。
心音は何を隠していたのか。
その答えは、まだ明かされないまま、次の章へ。