率直に申し上げて。「中編3」の表示に、しばらく絶句。
まさか、この話って永久に終わらないんじゃないかと思ってしまったのは私だ。
それはともかく。
御剣たちはダミアンと別れ、ひとまずロビーに全員集合。
狼は、母国を荒らした偽札への、そしてその偽札を作ったババルへの怒りを語る。悔しさと共に。
狼「オレがセキニンをとりゃ、それで済むハナシなのさ」
と、その場を立ち去ろうとしたその時。
糸鋸「そこのオオカミオトコと秘書、待った! 異議あり! ッス!」
すんでのところで間に合ったイトノコ刑事の報告を受け、御剣は狼への説得を試みる。
マニィの殺害現場から消え去った謎の人物。
あの抜け道からしか逃げられないはずの人物。
ソレは、ただ一人しか考えられないのだ。
狼「シーナは、オレの部下だ……! オレが守ってやらねえで、上司なんていえるかよッ……!」
と、シーナをかばい続ける狼を、シーナが止めた。
とうとう本命の登場だ。
それでもまだシーナを擁護する態度の狼。
敵方を疑っているのはお互い様、と御剣たちに指摘され、彼らは素直に頭を下げる。
狼「…………すまなかった。シーナも、あやまっとけ」
シーナ「………………。…………ごめんなさい」
……根本的に善人だよなぁ。狼って。
次なる目的は、シーナの主張を崩す事。
シーナ「……命令される前に用意しておく。それが……秘書というもの」
と、部下の鑑(かがみ)のような台詞を静かに述べる彼女に、
いよいよ暖炉の件を問いただした時――空気が変わった。
シーナが笑った。
叫ぶような大声で、腹を抱えて。
そう。くれぐれも、ゆめゆめ忘れるなかれ。
女は化けるという事を。
信じられない現実を前にして黙りこむ美雲に、御剣は発破をかける。
御剣「真実を盗むということは、真実から目をそらさないことだ」
打って変わって饒舌になったシーナに、しかし御剣は怯まない。
シーナの捜査指揮での不備を続々と指摘する。
よって、シーナの調べていたと主張する部屋に、イトノコ刑事が突撃。
それで見つかった物の中にあったのは、真っ黒なコート一着。
シーナ「すべて私の持ち物よ。捜査のジャマになるから置いていただけ」
この瞬間。シーナは完全に自滅した。
調査を拒むシーナを、狼が諭す。
狼「お前が無実なら……何もやましいことなんてねえだろ?」
ここまで来ても、狼はシーナを見捨てない。
彼は信じている。信じているからこそ疑いを認める。盲信せずに。
御剣はコートを手に取り、その一部に火をつけた。
緑の炎を前にして、御剣はシーナに迫る。
御剣「すでに光は差した! キサマの姿は暴かれているのだ!」
毒婦を倒す毒花を投げる時が来た。
ソレは、美雲がずっと守り通してきた、1本の小瓶だ。
美雲「指紋って、保存状態によっては何十年か保管できるんでしょう?」
これぞまさしく物証主義。
ミステリたるもの、こう来なくっちゃ!
と、私が歓喜した時。シーナが壊れた。
「またしても……アナタに見破られちゃうなんてねぇ……」
自らについて、彼女は語る。
ある時は事件関係者の姉、ある時は弁護士、ある時はヤタガラス、ある時は捜査官秘書、
そしてその正体は、密輸組織のスパイ。
美雲「カズラッ! ……お父さんのカタキッ!」
葛「ふふ……本当に……バカ正直なところが、一条さんにそっくりねッ!」
銃を構えて、美雲を人質に取った上で、彼女は明かす。本当の正体を。
葛「私は本物のヤタガラス」
「ヤタガラスには三本の足があるの。どういうイミかわかる?」
そこまで言われて、御剣も悟った。
御剣「ヤタガラスの本当の正体は……」
その答えは、一つしかない。
一人では、なかったのだ。
三人、だったのだ。
新たな撃鉄の音と共に。
その三人目が現れた。
馬堂「……証拠がなくてあたりまえさ。
担当刑事が……証拠を隠ぺいしていたわけだからな……」
銃声。
狼「……終わりだ。シーナ」
その言葉通り。狼が全てを終わらせた。
シーナの腕をひねり上げて。
馬堂の弾丸を、その身に受けて。
狼「馬堂刑事……すまねえな。
コイツがどんな過去を持っていても、たとえ、スパイであろうとも、
オレの部下には違いねえんだ」
「部下のけじめは、オレがつける。アンタに撃たせるわけにはいかねえ!」
狼は、シーナの身体検査を要請する。
それで、とうとう出てきたのが、あのナイフの刀身。
ようやっと事件解決に近づいた――と思ったが。
「異議あり!」
葛の声で、シーナが叫ぶ。
葛「私は、最初から裏切り者だったのよ」
「私のボスは最初から同じよ。……今もね」
狼に連行される時までも、そんな謎の残る言葉を残す彼女。
なぜか足下に、汚れたカンザシなど落としたり。
いまだ闇に隠れる真相に、一同が悩んでいる時に。時計が午前0時を回った。
晴れて定年を迎えた馬堂は、かつて自分が手に入れていた物を、御剣に返す。
ここでついに、『逆転の来訪者』冒頭の出来事がつながった。
全てはKG-8号事件から始まった。
しかし、葛が去り、一条が亡くなった時に、ヤタガラスは消滅したのだ。
一条が遺していった「切り札」。
一つは、「ヤタガラス」の描かれたカードの1枚。
そもそも、密輸組織の用いているマークこそ、この「ヤタガラス」だったのだ。
もう一つは、優木が隠そうとしていた、あのビデオテープ。
丈一郎が、組織に対する保身のために持っていた証拠品だ。
御剣「……法に限界はない。人が自分で、限界を決めてしまうのだ」
違法とも言える物証を前に、御剣は馬堂に告げた。
イトノコ刑事に連行される、その姿を見送りながら……。