『思い出の逆転』実況レポート (法廷パート・前編)

「……はあ……はあ……。……くそっ! なんでぼくがこんな目に……」
降りしきる雨。
倒れ伏している男と、その前で立ち尽くしている男。
「……あのとき……ぼくはどうして、あんなコトを……!」

事の起こりは、数分前。
「……彼女とは、もう会わないほうがいい」
「そんなコト、きみに言われたくないよ!」
「……アンタのためなんだ。きっと、よくないことが起こる」
「う、ウソだッ!」
「いいか、聞くんだ。……あの女はなぁ…………………………」
「……やめてくれッ! 彼女のコト……そんなふうに言うなッ!」
その台詞の次に思い出されるのは、発された鋭い物音と、眩しい電光。

そうやって、未だ立ち尽くしている彼の顔が、やがて映る。
「ぼ……ぼくじゃないぞ! こ、こんな……こんな……。……殺人なんて……!」



…………???



確かに、一瞬映ったその顔は、若干印象は違えども、
我らが主人公である(はずの)成歩堂その人。
けれど同時に、ソレをどうしても認められない自分が、確実にいる。
理由は色々あるけれど……取りあえず、その服装で。



と、ここで表示されるのは、
「〜5年前〜 綾里千尋・2回目の法廷」の文字。

そう。
この第3作は、いわゆる「過去編」が交じるのだ。
よって今まで以上に、張られている伏線たちに注意する必要がある。
さもないと、激しく動く時間の流れに…………間違いなく混乱する。(少なくとも私は)



というわけで。
この事件の主人公は、成歩堂でなく、彼の師匠である千尋。
『初めての逆転』を連想させる、千尋とその師匠・星影宇宙ノ介の会話。
因みに、日付は4/11。

だが千尋の場合は、第1作での成歩堂の時とは少々違う。
師匠の胸倉をつかんだりしてる点はともかく(?)。
今回の「法廷バトル」が、千尋にとって初回ではなく2回目だったり。
その初回からは既に1年の時が経っていたり。
裁判の前日になって、弁護人を務めたいと申し出ていたり。

千尋「きのう、初めて知ったんです。この事件のこと……」
と語る設定、流石に上手い。
つまり千尋もこの事件では、(チュートリアル用の)素人レベルというわけだ。

なお、第3作では、あらゆる場面において、スキップ機能が働く。
「法廷記録にファイルした」の文章さえスキップ可能。
一度読んだ部分の早送りには最適だが、油断すると読み飛ばしかねない点は要注意。


それで、その問題の被告人(=依頼人)だが。
星影「あの、情けなさそうなボウヤぢゃろ? 今日の依頼人」
と促された先にいるのは……。
成歩堂「う。お。おはよーございますセンセイッ!」



何だこの小動物は。



ハートの書かれたピンクのセーターに、真っ赤なマフラー
その上、顔半分を隠している大きなマスク。
はっきり言って、「挙動不審」がプラカード持って立ってるみたいなその姿。

そのため、勇盟大学芸術学部3回生の21歳という、
本来なら肝心だろう設定さえ、最早どーでもいい感慨に。
人物ファイルからして成歩堂、何だかこの世の春みたいな全開の笑顔だし。


成歩堂「きょ、今日は……ボク、がんばりますからッ!」
と威勢よく話しながらも、咳しまくりの成歩堂に、
「なるほどさん」と明るく呼びかける千尋。
すると、
成歩堂「セイカクには、”なるほどう”なんですけど……」
と、うつむいて伏し目になる成歩堂。

……って。
とてもじゃないがこの男、今までの成歩堂とは別物である。
特に『失われた逆転』で垣間見せた、あの猛禽類のような態度の彼とは、本当に別物。
小動物度・5割増、否、10割増というか。
あまりにも印象が違いすぎるため、逆にリアルにも感じたりして。
人というのは、変わりゆく存在なのだなあ……。

そんな成歩堂を前に、独り千尋は以前の事件に思いを馳せる。
千尋「初めて法廷に立ったのは、今から1年前のことだった。
   二度と立ちなおれないほどのダメージを受けた、あの裁判……」

この裁判の事が語られるのは、もう少し先の話。



さて開廷。
この時の裁判長の席。やはり背景の柱は立体的な浮彫(レリーフ)。


今回、千尋に対する相手は、例によって亜内検事
過去編だからか、まだ髪がある。
というか、ケッタイな形のリーゼントが。

その亜内の態度も、いつもの物とは少々違う。どことなく威圧的というか。
亜内「私ほどのベテラン検事が、おじょうさんの子守とはねえ」

その亜内の口から語られる、事件の経緯。
亜内「事件があったのは、私立・勇盟(ゆうめい)大学のキャンパス」
と説明されるこの大学、学部の範囲がやけに幅広い。(薬学部・芸術学部・文学部)
順当に考えれば、日大あたりのイメージか?


被害者の死因を尋ねられた千尋。
星影によるチュートリアルを受ける事に。
……でも。
もう既に、2回目の法廷なんですよね? 千尋の場合は。
今更チュートリアルってのも……。


更に、被告人と被害者との関係についても、亜内はネチネチと千尋に絡んで問うてくる。
何でも、
星影「”新人つぶし”の異名をとっておる」
という事らしい。
第1作の亜内は全く逆の、「新人つぶされ」だというのに。エライ違いだ。



最初の証人。被告人である成歩堂。
この尋問の際、「星影の力を借りる」という選択肢が出るが、
第1作での事情を知ってる者としては、あまり借りたくないところ。

よって基本通り、発言を一つずつ揺さぶって、情報を引き出していく。
被害者の「呑田菊三(のんだ きくぞう)」とは無関係だと主張する成歩堂の意見を崩して、
問いつめた、その結果。
成歩堂「…………………………ごめんなさわああああああああん!」





泣いた。





とゆーか、泣きわめいた。公衆の面前で。大の男が。(未来の)主人公が。



続いて、亜内からも質問を受ける成歩堂。
亜内「被告人が飲んでいる薬とは……市販の《カゼゴロシ・Z》ですな?」
どうでもいいが、これまたエライ名前だ。

この薬もまた、成歩堂と被害者を結びつける重要な物証だった。
成歩堂が、被害者と面識があった事は、もはや間違いなく。
成歩堂は正直に、事情を説明する事に。

ただ、その事情説明というのも……。
成歩堂「あの日は、ちいちゃんのコトで話があるから、って言われたから」
    「ボクの……ウンメイのヒト……えへへ。テレちゃうな、なんか」

    「おヒルはいつも、ちいちゃんと2人っきりで食べるんですよ。
    ちいちゃんのおベントウ、とーってもオイシイんですよ。
    もお、タマゴ焼きなんて、ほっぺが落っこちそうで。へへへ」

この通り、ノロケ以外の何物でもない。
と言いますか……この男がここまで嬉しそうに笑ってる姿は、初めて見た気も。


一方、そんな成歩堂の様を見てる弁護人席での一幕。

星影「ぐはあッ! ……なな、なんぢゃ千尋クン! イキナリ……」
千尋「……あ! す、スミマセン! 急に、殴りたくなっちゃって」

星影「ぐはあッ! ……なな、なぜ、ワシのほっぺを……!」
千尋「……あ! す、スミマセン! 急に、ビンタしたくなっちゃって」

この千尋の言動。
成歩堂のノロケっぷりに腹が立ったのか。それとも何かに憑かれてたのか。
それとも星影を合法的に倒したかったのか。(倒す?)



閑話休題。
尋問を進めるうち、被害者が感電した凶器が明らかになる。
が、同時に、成歩堂が被害者を突き飛ばしたという事実も明らかになり、事態は大ピンチ。

ところが。苦悩する千尋に対して。
星影「……あきらめるんぢゃ、千尋クン。あのボウヤは……最初から、有罪だったんぢゃよ」
何という冷たさ。
第1作でのチュートリアル役である千尋とは、まさに雲泥の差。
この事件では、師匠さえも敵なのか。


独り千尋は、成歩堂に懸命に呼びかける。
千尋「これでいいの? なるほどくん!」
   「あなたはまだ、本当のことを……真実を話していない。
   それなのに……今、判決が下ろうとしているのよ!」

成歩堂「で、でも……ボク。い、言えませんっ! ホントのコトを言っちゃったら、それこそ……」
千「大丈夫……なるほどくん。私を信じて」
成「ち……千尋さん……」
千尋の頼もしい言葉に励まされて。
成歩堂は、伏せていた顔を上げる。真剣な表情になって。
まだ、涙は滲んでいるけど。

千尋「あなたがどんな証言をしようと……私はあなたを信じる。最後まで、あなたを弁護するわ」
ここまで言われて、拒んでいたら男じゃない。
成歩堂「ボク……ホントのコトを言います!」



その成歩堂の言葉によって、改めて描かれる回想シーン。
「……やめてくれッ! 彼女のコト……そんなふうに言うなッ!」
そう叫んで突き飛ばした瞬間、鋭い音が走った――――?


確かにコレ、成歩堂自身言うように、普通なら一発で有罪Getの危険な発言。
けれど当の成歩堂は、満面の全開笑顔。
成歩堂「大丈夫だよね、千尋さん! ぼく……信じてるから!」

てなわけで。改めて尋問開始。
成歩堂「あのときも、このセーターを着てたんですけど。
     これ、ちいちゃんが編んでくれたんですよ。夜なべして。
     ボクたちのアイを、ぬらしたくなくて……」

星影「ぐはあッ! ……だから、ワシのハラをけるなッ!」
千尋「……あ! す、スミマセン!」
などという一幕も挟みつつ。ついに千尋の反撃が始まる。

確かに成歩堂は当時、被害者を突き飛ばしていた。
しかし、その際に被害者が亡くなったというわけでは――なかったのだ。



何はともあれ、取りあえずピンチからは脱出できた。
続いて、次の証人が召喚される。

「美柳(みやなぎ)ちなみ」というその証人の名前を受けて、千尋は意味ありげな言葉を返す。
千尋「私は……この瞬間を、待っていたのです」



一旦休憩。
「ちいちゃん」こと、ちなみについて語る成歩堂。
成歩堂「ちいちゃんとは……半年前、この裁判所で出会いました。
     ボク……今、弁護士を目指して勉強中なんですけど……、
     ある日、地下の資料室で、バッタリ出会っちゃって」
     「もう、ヒト目見たとたん、いきなりイイ感じになっちゃって。
     ホラ、ホラ、見てくださいよ!」

実に嬉しそうに、皆に示すペンダント。(小瓶がヘッドになっている)
成「そのときもらった、コイビトのアカシなんです!
  あの日、彼女が首からさげていたんですけど。
  ”あなたに、持っていてほしいの”なーんて言っちゃって」

  「ちっちゃなオモイデを入れるための、ちっちゃなボトルなんですよ!」
  「もお、うれしくて。会うヒトみんなに見せびらかしてるんです!
  ボクのシアワセを、みんなにもわけてあげたくて……」
  「彼女、テレ屋さんだから……会うたびに、ボクに言うんですよ。
  ”やっぱりそれ、返して”って」


その話を受けて、千尋はおもむろに口火を切った。
千尋「あなたが、美柳ちなみさんと出会ったのは……半年前の、8月27日のことね」
   「8月27日……。この裁判所では、こんな事件があったのよ」
成歩堂「それ……新聞記事ですか?
     ええと、《裁判所で、殺人事件?》。さ、”さつじん”?」


その記事にあるのは、今回の事件の”発端”とも言える物。
裁判所のカフェテリアで、弁護士が殺されたという事件。
千尋「私……、ケリをつけなくちゃいけないんです」
星影「よし。ワシが今から地下の資料室をあたってみよう」



星影の援護を待ちつつ、ここからが――――本番である。




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