休憩室にて。
尾並田「オレ、モーレツにカンドー。アンタ、恩人」
と、千尋の活躍に興奮している尾並田。
これからの審理で暴くべき事は、真犯人であろう里子の動機。
そして、最初の発端である、5年前の誘拐事件の実情。
尾並田「………………………………わかった。……オレ。アンタ、信じる」
と、今までにない真剣な顔で、尾並田は当時の事を語り始める。
尾並田「5年間……毎日。ユメ、見る。……あの日のコト……」
「……オレ。オレ……たしかにユーカイ、した。
……5年前。オレのコイビト……美柳ちなみを」
えーとえーと、と指折り計算。
この『始まりの逆転』の時、尾並田は25歳。
で、あのちなみ(だと思われる里子)は19歳。
その5年前と言ったら、尾並田は20歳。
そして、ちなみは……14歳。
20歳と14歳のカップル。
もしこの計算通りだとしたら、微妙な取り合わせだ。
と、そんな事より大事な事は、あの「美柳ちなみ」の名前が出た事。その理由は。
尾並田「美柳ちなみ……イモウト。……美柳勇希の」
そして明かされる、恐るべき誘拐事件の内幕。
尾並田「あのオンナ……勇希! 裏切った! オレたちを!」
「ゼンブ。……ゼンブ……狂言だった。……ユーカイ」
「彼女……ちなみ。オレの、天使。宝物だった」
「アイツの言うコト、なんでもやる。ちなみに言われたコトだったら……」
千尋「じゃあ……5年前の誘拐を計画したのは……?」
尾「オレと、ちなみ。……勇希も、仲間だった」
尾並田「ちなみの家……宝石商。金持ち。宝石の1個くらい……そう思った」
「要求は、2億円相当のダイヤ」
と、尾並田が話す時に表示されるのは、赤ダイヤのような色の原石。
尾並田「……でも! あのオンナ……!」
「ホンキで……オレを撃った! オレと、ちなみを……」
「オレ。腕を撃たれた。そして、ちなみは……川に身を投げた」
つまり。誘拐事件において、尾並田は、ちなみを殺していない。
それが、勇希の偽証によって、尾並田は死刑判決を受けてしまったのだ。
ところで。その誘拐事件の身代金、即ちダイヤはドコへ行ったのか?
尾並田「……知らない」
「ちなみといっしょに、消えた」
即ち、身投げした彼女、ちなみの行方も――。
尾並田「見つかっていない……。今も、まだ」
神乃木「アンタの”天使”……いったい、いくつだったんだい?」
尾「まだ……14歳」
計算合ってます。
これでまた一つ、この『始まりの逆転』と『思い出の逆転』とのリンクが増えた。
審理再開。
気を持ち直した里子に対して、尋問再開である。
神乃木「弁護士はなァ。ピンチのときほど、ふてぶてしく笑うモンだぜ」
というアドバイスを受けて、千尋は里子に立ち向かう。
そもそも、なぜ里子は、あの殺人現場に一人で居たのか?
千尋「吾童山は、この街からクルマで2時間、電車も通っていません」
つまり、この現場は明らかに、いわゆる「陸の孤島」なのである。
って事は……。
次の第5話の時、一体どうやって行ったんだろう。アヤツらは。
自分は事件と無関係だと語り続ける里子だが、つい思わず口が滑った。
里子「……もし、あの日。白いマフラーをしていたら……
わたし、あのかたに狙われたかもしれないのですよね……」
実は、この里子が出てきてから、マフラーの「色」の話題は一切出ていない。
にも関らず、里子がその色について話したのは、その情報を予め知っていたから。
千尋がその辺りの事情を説明すると、御剣は激しく動揺。
御剣「白い……マフラー……?
ああああああっ!」
あ。地が出た。白目だ白目。
さて。いよいよ、里子の正体を暴く時が来た。
千尋「たしかに《美柳ちなみ》は、死んだことになっています」
「しかし! カンジンの死体は発見されていないのです!」
と言って、「里子=ちなみ」を論証する千尋。
そうしたら、その結果。
御剣「もう……そのへんでいいだろう、証人」
しぶとい御剣の口から、本当の身分が明かされる。
彼女は美柳ちなみである、と。
が、そうなると彼女の動機は、逆に分からなくなってくる。
普通の感覚では、妹が姉を殺す道理は無い。
と、困っていたら。
神乃木「……弁護側には、証人の動機を立証する用意がありますっ!」
千尋の隣が勝手に宣言。
ゴドーさん、じゃなかった神乃木さん、やっぱりアンタ声帯模写できるんですか?
慌てふためく千尋に対し、御剣は悠然。
御剣「若さゆえの暴走、か。ほほえましいな……」
またも師匠の物真似か。
というか、キミ自身も大いに暴走している一人なのですがね。御剣。
裁判官「この証人が……実の姉である美柳勇希を殺害した”動機”は!」
こう問われて、またも勘違いして間違えた、1周目当時。
どうも私、複数の事件が絡んでいると論理に混乱するようだ。
この時も、誘拐事件の方に関わる証拠品を出してしまって。
それに、もっと言えば、本当は「実の姉」じゃなかったし。
閑話休題。
誘拐事件から、この度の殺人事件に至るまでの、ちなみの人生を尋ねる。
どうやら彼女は、誘拐事件の後は、
御剣「美柳家を去り、姉の協力を得て、第二の人生を歩んでいた」
という事らしいが。
実際問題、可能なのだろうか。こんな事。
この世界の公務員(=警察官)の、権限の強さって一体。
何より、一刻も早く異議を唱えたかったのは、この台詞。
ちなみ「尾並田さまは、わたしを殺すために背中を押して、つき落としました!」
無茶言うな。
橋の脇には、ワイヤーの柵があるじゃんか。
橋板の割れ目から落としたら、下の岩場に叩きつけられるじゃんか。
一体ドコからツッコミ入れたら良いのやら。
それでも、なおも食い下がろうとする御剣に、千尋は容赦なく論を叩きつけていく。
御剣「……お待ちいただこう、裁判長!」
「な……何を、バカなッ! いったい、なぜだ!」
「ム……ッ!」
「あああああああああッ! ま………まさか………ッ!」
あ。また白目だ白目。
と言いますか、この辺りの御剣、何か全体的に動揺しっぱなし。
かくて、ちなみ達の誘拐事件が狂言だったという秘密を暴く千尋。
ソレを境に、ちなみの顔色が、変わった。
ちなみ「………………………………くすっ」
あのちなみに、変わった。
天使のような微笑から、悪魔のような表情に。
そして、誘拐も殺人も、どれも決定的な証拠は無いと言ってくる。
けれども。
証拠は無くとも、証言できる証人なら居る。
というわけで、証人として召喚された被告人・尾並田だったが。
尾並田「ウ……ソ……ダ……」
この期に及んで、彼は、ちなみを信じようとする。
あの時のアイツを、我らが(未来の)主人公のアイツを、ふと思い出す。
そんな尾並田に、悪魔の囁きを聞かせる、ちなみ。
ちなみ「……コトバは、いりませんわ。あなたなら、わかるはず……」
「わたしの運命は、あなたがにぎっているの……」
嫌な予感がする。胸が痛い。
尾並田「うぐぐぐぐぐ……セ、センセイ! ……み、ミズ。ミズ、くれ……」
こう言われて、千尋の代わりにコーヒーを差し出す神乃木。
結果的に、この行動が文字通り「命取り」となった。
いざ証言に至っても、ちなみを庇い続ける尾並田に、最後の尋問。
尾並田「なつかしい、タイセツな思い出。これを……オレ。取りに行った」
咳払いをしながら、尾並田が千尋に見せる物。
ソレは、見るのも忌まわしい、あの小瓶のヘッドのペンダント。
その時。予想したくなかった事態が、ついに起こった。
尾並田「…………………………。……げふっ!」
口許から流れる、一筋の――――血。
あの小瓶の中身を飲み乾して。彼は倒れる。
御剣「ば……バカな! 裁判長! ただちに、休廷を!」
これまた、あの時の法廷と限りなく似た状況だが。
今度こそ、悠長に休廷してる場合じゃない。救急車だ、医者だ、胃洗浄だ。
実は当方、ここから暫く、Aボタンで台詞を繰るのが辛い。
1周目当時だけでなく、今もまだ。
『逆転姉妹』での千尋の時は、まだ耐えられた。前情報もあったから。
だが基本的に、いわゆる「死体役」以外の人死には、我が鬼門でありまして。
千尋も御剣も、常勝無敗の設定である以上、
「被疑者不在につき公訴棄却」のような状況に陥るだろうとは予想できていたが……。
神乃木「……ユルせねえ」
「真実は、もうそこに見えていた。
つかみそこねたのは……ただ、アマかったからだ」
「………………………チヒロ……」
と、この時、神乃木は初めて千尋を名前で呼ぶ。
そして彼は、あのゴドー専用音楽と共に――マグカップを握りつぶした。
物語の視点は再び、薄暗い部屋の成歩堂に戻る。
この『始まりの逆転』から1年後の『思い出の逆転』で、ちなみは有罪判決を受けたのだ。
成歩堂(……それで、すべては終わった。
すくなくとも、ぼくはそう思った。
しかし……そうではなかったことを、ぼくは、今……。
あれから5年もたった、今……思い知らされることになる)
成歩堂がPCを見ていた場所と、その理由が明かされるのも全て、次の第5話の事――。