『華麗なる逆転』実況レポート (法廷パート2回目・前編)

今回の目的は、あやめの証言を崩す事――とは言えない。



開廷直前。
成歩堂と春美の会話。

問題の「奥の院」側は、立入禁止の状態が続いている。
そのため、真宵の安否は不明のまま。

そんな二人の会話に、御剣が加わる。
御剣「……あやめさんは……検察側の証人として、証言台に立つようだ」

因みに、今回対決するのは、やはりゴドー検事。
昨日まで活躍していた冥はと言うと……。
御剣「……狩魔冥は今、修験洞で大変なシゴトをしている」
   「ゆうべからずっと《からくり錠》の解除を行っているのだ。
   住職の手ほどきを受けながら、な。
   おそらく……あと3時間もすれば、すべての《錠》が開くだろう」


つまり、前章で述べられていたように、「からくり錠」の全通りの開け方を試しているのだ。
それも当然、一度用いた開け方を繰り返さないようにしているはず。
率直に言って、常人に出来る仕事ではない。
何と、第2作で長く語られた、冥の天才ぶりさえ、単なる伏線の一つとは……。


なお、成歩堂の(肺炎含んだ?)風邪も、何とか峠を越した模様で。
御剣「……それでは……あとは、たのんだぞ。……相棒」
成歩堂「ああ。……まかせてくれ」

って。
さり気なく、凄い会話してるな。この二人。
何かもう、あらゆる物を超越した世界にいる気がする。コヤツらは。



さて開廷。
因みに、時刻は午前10時。

席に居るのは、いつもの見慣れた裁判長。
前回の審理の、あの裁判官はドコへ行ったのか。

裁判長「じつは今朝がた、私の執務室に弟の使いがやって来ましてね。
     急に、信じられない高熱で倒れた、ということでした。
     そこで、弟のかわりに、この私が来たしだいです」
     「カオが、深ミドリ色でした」

……とまぁ、ツッコミ所の多すぎる事情説明を経てから。
最初の証人、あやめが登場。


あやめ「成歩堂さま。私……この事件に、無関係ではないのです」
     「私は……そう。あの事件の、後始末をしたのです。
     あの方が命を奪った、天流斎エリスさまの亡きがらを……
     葉桜院の境内に運んで、あのような細工をさせていただきました」
この言葉を受けて、あやめの証言書をあっさり捨てる成歩堂。

サイコ・ロックの件を信じるなら、「奥の院」側には絶対に行ってないはずなのだが。
今ここで証言している「あやめ」は、確かに「奥の院」側に行っていたのだ。
さもないと、どうしても話がつながらない。


あやめ「私。この身を汚しても、”あの方”をお守りしたのです。
     倉院流霊媒道、家元の娘……綾里真宵さまを!」

え。



……また真宵ちゃんかよッ……!



返す返すも、事件に巻きこまれる運命の真宵である。

ただ、ここで素朴な疑問。
毘忌尼でさえ知らなかった真宵の素性を、何故あやめは知っていたのか?


真宵は正当防衛でエリスを殺したと、あやめは主張する。
エリスが先に、小刀で真宵に襲いかかった、と言うのだが。
その不自然な証言を、成歩堂は突き崩す。
相手は被告人――大事な依頼人ではあるけれど。

エリスは、わざわざ小刀など出す必要は無かったはず。
ソレは、成歩堂とイトノコ刑事しか知らない事実。
てゆーか、そもそもエリスが真宵を殺すわけないのですよ。親子なんだから。(←常識論)

あやめ「ま、まさか……! ”あやさと まいこ”……」
どうやら、この「あやめ」は、エリスの正体は知らなかった様子。


成歩堂「母親が、17年ぶりに会ったひとり娘を殺害しようとした……。
     検察側に、その理由がセツメイできるのですかッ!」

こう訴えられて、ゴドーが狼狽したのは、しかし一瞬。

ゴドー「オレが、この証人の”告白”を聞いたのは、今朝のこと……」
よって、すぐさまイトノコ刑事に調べさせ、本当に出てきた――小刀。
切っ先に血痕が付いているが、何者の血なのかはまだ不明との事。

ゴドー「この小刀は……松の木のウラに、突き刺さっていた」
ズルいなあ……と、一瞬だけ思った。この台詞。
だって、そんな位置じゃあ、我々プレイヤーは絶対に発見できないもの……。



次の証言。
もしや二人は、互いに母娘である事を知らなかったのではと語る、あやめ。

だがしかし。そのあやめの証言は、やはり不自然さが残り続ける。
成歩堂「……今日のあなたは、どうもようすがおかしいですね」
     「きのうまでのあなたは、軽はずみなことを言うひとではなかった」

少しずつ視えてくる、あやめの違和感。

そんなあやめを、ゴドーは擁護する。
ゴドー「人間が、ものを見るのに必要なものは、たった1つ。それは、《光》……だぜ」

事件当夜、本来なら「奥の院」側の中庭では、灯ろうを灯すはずだった。
が、実際には灯す事は出来なかった。
シンからダメになっていたそうで。
ゴドー「あの晩、中庭は、ほとんど闇に近かった」



てなわけで。いよいよ、あの白い灯ろうのデータが加わる。最重要の証拠の一つが。

さっそく、その重要さに裁判長が気づいた。
裁判長「……こ、この灯ろう……何か、書いてありますッ!」
     「これは……ち、血文字、ですかッ!」
     「逆さまに《マヨイ》と書いてありますッ!」
ゴドー「な、なんだと……!」



ゴドー、一生の不覚。



ゴドー「ちょ……ちょっと待ってくれ! アンタたち……いったい、なんの話をしてるんだ?」
    「この灯ろうに……何か書いてある、ってのか!」

ここで思い出すべきは、『逆転のレシピ』でのエプロンの一幕。

ゴドーには、見えないのだ。この血文字が。
白い地に鮮やかに書かれた、赤い文字が。何も。



灯ろうの文字は、エリスこと舞子の手による物だと述べたあやめの、次の証言。
真宵の将来を守るため、遺体の移動を行なった、と彼女は語る。
成歩堂(信じたくないけど……どうやら、まちがいない。
     彼女は……真宵ちゃんに、罪を着せようとしている!)


かくて、再び話題にのぼるスノーモービル。

事件当夜、あやめはソレを使って死体を運んだと言うが。
そもそもその夜、橋は落雷を受け、燃え上がっていたわけで。
死体移動以前に、「奥の院」側に行った人間が戻って来る事自体、
タイミングによっては不可能になってしまうのだ。

そう指摘してみたら、
あやめ「なんですって! あ、あの吊り橋が……燃えていた……?」
と、あやめは激しく動揺するが、あまりにも不自然すぎる。だって……。



何でソレを知らないの?



橋が燃えた事も、その橋を渡ろうとした成歩堂が落ちた事も、
あやめは御剣を通して、全て知っているはずなのに。
まるで彼女は、昨日の出来事を全て忘れてしまっているかのようだ。

成歩堂「どんなに上手にウソをついたつもりでも……
     弁護士の目を逃れることはできないんですよ!」

と、さながら青白い炎のような気迫と共に、成歩堂は自らの論を叩きつける。
成「すでに奥の院は、世界から切りはなされていた!」

……と、言ってみるものの。
エリスこと舞子の遺体が、葉桜院の境内にあったのは、揺るぎようのない事実。
それに毘忌尼も、エリスこと舞子の遺体に細工しているあやめを目撃している。

そう指摘するゴドーの援護射撃を受けて、
あやめ「あの晩の私は……フツウではありませんでした。
     ……記憶が少し、コンランしているんです!」
いきなり開き直ったあやめの態度に、またも違和感。



次の証言。
混乱していると主張する、あやめの弁明。
この場面で、燃え尽きた直後の橋の写真が提出される。
裁判長「支柱がわりのワイヤーも切れて……よく、橋が落ちなかったものです」


――果たして、橋の無い”世界”から、如何にして死体は動かされたのか――?

その謎を解き明かすべく、とうとう出てくるこのフレーズ。



事件のカゲに、ヤッパリ矢張。



より正確に言えば、登場するのは彼のあのスケッチである。

裁判長「……あなた……ホンキで主張するつもりですか?
     被害者が……《空を飛んだ》などとッ!
     この、メルヘンティックなラクガキをコンキョにッ!」


法廷に漂う気まずい空気を、ゴドーが切り裂く。
ゴドー「アンタ……発想を逆転させるのがトクイなんだってなァ……」
    「いっそ……逆転させてみるかい? このラクガキも……」


援護してくれているような、この言葉を境に、私にもようやく視えた――――と思った。が。
成歩堂「……この、天流斎マシスのスケッチは……!」



真実だと主張して、玉砕したのは私です。



だって、絵そのものは真実でしょうが。
見てる人間が、見方を間違えているだけなんだから。


気を取り直して。絵の謎を解き明かす。
成歩堂「被害者の死体は、橋の”上空”を飛んだのではなかった!」
     「犯人は、イチかバチかの《賭け》をしたのです」
     「これ以外に、死体を運ぶ方法はありません!」

この解答編を見せられた時。単純に、「スゲーッ!」と思った。1周目当時。
…………『逆転サーカス』の時にはツッコミ入れまくってたのにな。自分。

かくて。少しずつ、でも確実に、物語に散りばめられた謎がほぐれていく。
クライマックスBGMの下、半端な欠片(ピース)が、次々と嵌まっていく快感。



さて。物語の序盤から、ずっと横たわっている大問題。
ソレは、二人の「あやめ」の存在。

「奥の院」側の中庭にいたはずの、あやめ。
「葉桜院」側の本堂にいたはずの、あやめ。

裁判長「まるで、事件当夜……葉桜院と奥の院……ふたりの被告人が存在したかのようです!」

自分は何も知らないと訴えるあやめを、成歩堂は糾弾する。
否、”彼女”は、あやめではない。
成歩堂「……この名前を、二度と口に出すことはないと思っていました。
     まして、本人を目の前にして。
     ……ひさしぶりですね。美柳ちなみさん」

成歩堂のこの指摘に、裁判長も思い出す。『思い出の逆転』で会った、ちなみの事を。

しかし、”彼女”はもう死んでいる。死刑に処されているのは間違いない。
しかし、この『逆転裁判』世界に限っては、話が違う。
成歩堂「正確には、あなたは《美柳ちなみ》ではありません。
     霊媒師の身体を借りた、《霊体》なのですから!」

間違いない。やはり、ちなみは死者なのだ。
しかし。
と――いう事は――?
あやめ、否、ちなみに問いたい。



その身体は誰の物?



まさか。まさか。まさか。
この時点で、やっと思い当たった、一つの可能性。
途端に背筋が凍りつく。


成歩堂「すべては、《計画》どおり、実行されていたのです」
春美の指示書を取り出して、成歩堂は説明する。
成「《美柳ちなみ》が霊媒されることは、最初から決まっていた!
  あの晩……葉桜院には、ふたりの《あやめさん》が存在したのです」
  「ビキニさんが《奥の院》で会ったという《あやめさん》は……
  修験者の装束を着た、別人……《美柳ちなみ》だったのです!」


ここまで論を進めたら、立証せねばならない。
証人席にいるあやめは本物なのか偽者なのか。
確かに本来なら、ちなみはまだ「奥の院」側に潜んでいるはず。
だが、どこかで確実に「入れ替わり」トリックが発生しているはずなのだ。

裁判長「葉桜院あやめが逮捕されてから、今日、証言台に立つまでの間……
     《美柳ちなみ》と入れ替わる機会は、あったのですか?」

なるほど、警察が目を離した隙がドコかにあったはず。
一体ドコのどいつだ、そんな初歩的なミスやらかしたアホは……………………。



……………………あ。  (気づいた)



あああ、ごめんなさいごめんなさい、アホ呼ばわりしてごめんなさい!
お願いだから呪わないでくれ



成歩堂「あのとき、修験堂にいたのは《美柳ちなみ》だったのです!」


――そんな会話を遮って。
「……おだまりなさいな」
裁判長に一喝した、”彼女”。

「おひさしぶりね……オジサマ」

現われた。
あの時の、彼女が。

ちなみ「美柳ちなみよ。今は………死者、やってるわ」



「死者」って職業だったのか!



まあ確かに、ミステリ世界には、無くてはならない存在ですが。
こういう風に名乗られたのは、我が人生でも流石に初めて。

ちなみ「アンタたちには……、もうアタシを罰することはできないでしょ?」
禍々しい笑みを浮かべて、”彼女”は不敵に言い放つ。



成歩堂(今こそ……決着をつけるんだ! 彼女と、ぼく自身に……)




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