『未来への逆転』実況レポート (法廷パート1回目)

【注意事項】
※この記事には、『逆転裁判4』に関する批判が含まれます※




今回の目的は――――儀式だ。

無限に分岐していた歴史が、無為に拡散していた波動関数が、収束する。
ただ一つの運命(ライン)へと、至る。





控え室にて。
成歩堂所長は、春美から「特別なサイコ・ロック」について教えを受ける。

春美「赤いサイコ・ロックは、その人が自分の意志でココロにかけたカギ」
   「でも、あの”黒色”は……本人も知らない、
   ココロの最深部の暗闇の色がニジんだものだとか」
   「ココネさんは、わざとウソをついているのではないのです。
   何かの原因で、意志とは関係なくココロと記憶が封印されている」
   「黒いサイコ・ロックは、心臓に直接重い鎖を巻きつけているようなもの。
   無理に引きちぎれば、ココロは壊れ二度と治ることはないかもしれない」


そんな状態の心音を、ひとまず春美に任せて。
成歩堂(今こそ……この崩壊した法廷で、7年前の悪夢に決着をつける!)
と、成歩堂所長は単身で法廷へ赴いた。



崩れて朽ちた法廷で。
第1作ラストシーンが再演される。
青き弁護士と、赤き検事とが並び立つ。
名探偵は、ライヘンバッハから生還したのだ。



………………なんて、カッコ付けた前口上は程々にして。

何か、のっけから御剣局長のたまった。
御剣「現役の検事が殺人罪で有罪となった、UR-1号事件。
   これこそが、忌まわしき《法の暗黒時代》の始まりだった」


あの、局長さん。
あなた自身はまだしも、あなたの上司その1と、
あなたの上司その2と、あなたの上司その3と……
あの辺の殺人者たちとは何が違ったのですか?
あの時代の検察や警察の方がよっぽど崩壊してると思うんですが……。



そんな(私の)疑問は横に置かれて。
成歩堂所長と御剣局長、それぞれ自分の部下を守るべく論戦開始。



一人目の証人は、かぐや――の意見書を読み上げる番刑事。
7年前の夕神は、母を嫌った娘を庇うべく、冤罪をかぶったとの話。

そんな中、明かされた恐るべき事実。
御剣局長、ごくフツーに、みぬきのマジックショーを観覧してる。
成歩堂所長と一緒に。



閑話休題。
論点は、7年前を知るロボットへ移る。
二人目の証人は、そのロボットであるポンコ。

なお、
御剣「では、ポンコくん……質問をさせてもらおう」
御剣局長のこの台詞を覚えておいてほしい。


ポンコは当時のデータをアウトプットして証言。
その際、
裁判長「弁護人のスーツは、年の割には青すぎるように思いますな」
と言われて複雑な気持ち。

というのも私、成歩堂所長の服装設定だけ変えてます。DLCの有効活用。
私には、元々のトリコロールガンダムカラーが唯一全です。


で、問題の台詞がこちら。
御剣「タヌキ型ロボの……タヌ子だったか」



異議ありだ御剣ィ!!



確かにこの人、今までも単語の言い間違いは少なくなかった。
が、それらはどれも、最初に聞き間違いをした故の勘違いだった。
今回のように、一度は正しく言っているのに間違えるという事は、
この人の記憶力に限って考えにくい。

答えは一つしかない。
わざと言ってんだよコレ。意図的に怒らせようとしてるんだよ。ロボット相手に。

けど、それにしても、
御剣「タヌ子にはわからないようだが……」
   「タヌ子は、被告人の命令で死体を手術台まで移動させたのだ!」
   「ならば被告人は、タヌ子に何を運ばせたというのだ!」

……流石に言い過ぎじゃないか?

そして御剣局長は冷厳に、合理的結論を告げる。
被告人は、邪魔な死体を消したかっただけなのだと。



為す術なしかと挫けそうになった時。
話を引き継ぐような形で現れたのは――夕神。
彼は一貫して、自分こそが殺人者だと言って譲らない。

御剣「夕神! この期に及んで、まだ真実から目をそらし続けるつもりか!」
と、御剣局長は歯噛みする。

そう。夕神はいっこうに本心を語らない。
目に映る物、手に触れたり感じる物を、打ち明けようとしない。
仮にもプロの検察官なら、公僕なら、心音を本当に信頼しているなら、
どうして話してくれないんだろう。


そんな所に、弁護人席に乱入してきたのが心音である。
心音「大事なのは、真実です。わたしには、それを知る義務がある」
と語るが。
それならば、もっと早くここに来てほしかった。
このパートの最初から居てほしかった。
仮にも一応、主人公の一人にして、
私たちプレイヤーの分身であるPC(プレイヤーキャラクター)なのだから。
これじゃまるで、ココロスコープ発動係みたいじゃないか。

ともあれ、かくて始まるココロスコープなんだけど。
何つーか、本当に心音に理解されてなかったんだなあ。被害者。
夕神が被害者を糾弾しても反応ないし。
心音「……泣き言なんか言ってられませんからね」


ココロスコープと通常尋問を併用して、成歩堂所長は、夕神の苦悩を、その根源を暴いていく。
夕神「ココネは……無実。成の字よォ、その言葉、本当なんだな?」
と念を押した夕神から聞かされたのは、聞くに耐えない地獄絵図だった。



夕神「アイツは、無邪気な笑顔でこう言ったんだよ」

『お母さんがおかしくなっちゃった。だから……分解して修理するの』



この場面。単純に、気持ち悪いです。
(理屈抜きの感情論です)

私が逆転裁判を好きになった理由の一つは、残酷描写がほとんど無いという事だ。
死体や血痕などは、あくまで謎解きに必要な記号に過ぎないのだ。

なのに今作では、何でこんな血塗れの少女が描かれたのか。
一面の深紅に、心音の台詞を表示すれば充分なのに。
こんな、不必要で無意味で悪趣味な残酷描写などするから、
犯罪を助長するなどと、ミステリが誤解されるのに……。



で、聞いた心音はどうなったかと言うと。
心音「わ、わたしが、お母さんを……ブ……ン……カ……イ?」
またもトラウマ暴走中。

で、話した夕神、ここで初めて心音に、7年前当時の母娘事情を打ち明けた。
夕神「このままココネを逮捕させていいはずがねェと……」
と真情を告げる夕神に、
御剣「それで、罪をかぶったのか。不器用さは師匠ゆずりというわけだ」
と今作でもまた御剣局長が妙に甘い。

何度も言うが、夕神は事件当時、既に検察官である。
この作品世界の検事には、真犯人を挙げる権利と義務がある。
それは奇しくも、『逆転検事』の御剣本人が証明している。
つまり夕神は、心音を救える力を持っていたはずなのだ。
だが彼は、目を閉じ耳を塞ぎ、真実から逃げ続けた。
なのに誰も叱責しない。忠告しない。それが悩ましい。



もっと早く話し合っとこうよ。関係者全員。



心音「わたしが、お母さんを殺した。
   それが真実なら……ミツルギ検事の言う通り、どんなにつらくても、目を閉じちゃいけない」

ああ、そうだね。それが真実なら。
でもね、心音ちゃん。きみはまだ真実を話していない。
きみはただ、周りに言われた言葉を鵜呑みにしているだけだ!
つらいと思うなら、だからこそ正直に話すんだ!

心音「だから、思い出したことを……話させてもらえませんか?」
と、彼女が歪めて語ろうとする内容に、成歩堂所長は反論する。
普通のヒトと異なる世界を視る彼だけが、知る真相を求めて。


そう。異なるのだ。
心音が傷つけた人間は、別にいる。

成歩堂(下じゃない。後ろでもない。前を見ろ……先へ進むんだ!)
     (倒れるな。踏んばれ。アタマを回転させろ!)

結果。成歩堂所長は、真犯人を深淵から引きずり出した。
即ち、心音の母親を殺めた人物を。

ここまで訴えて。やっと。ついに。
心音「仮面の……男! よくも……よくもお母さんを……!」
   「わたし、思い出せる……全部……。お母さんが、殺された日のこと……」

PCの一人が正気に返りました。


個人的な意見としては。
御剣や真宵や春美や茜って偉かったんだなあと。

心音は殺人現場を目撃して、その犯人に逆襲して、それから現場のモノを動かして。
つまり事件を大混乱させた事を完全に忘れていた次第。
……もしも、この一連の時に、誰か他の人を呼びに行ってくれてれば、どんなに良かったか……。



心音「ナルホドさん、どうもありがとう。わたし、もう大丈夫です」
と、心音は別人になったように詳細を思い出して協力的に。

それでよくよく調べたら、なんてこったい。
犯行時刻の現場に真犯人の姿が映ってた。
相変わらず顔は隠れて見えないけれど。

……でもよくよく考えてみたら、そもそもこの真犯人、
わざわざ顔を隠さなきゃいけない道理がない。
それこそ被害者の姿に変……これはまた後ほど。


そんな謎な真犯人について、夕神がもたらす情報。
夕神「出自も容姿も、何もかもが一切不明。ついたアダ名が……《亡霊》さ」


「ふつうの人ならば抱く感情を、抱かない」とされるスパイを追うべく、
閉廷を――する前に、更なる乱入者が。
かくて法廷には、「成歩堂VS王泥喜」のカードが示された。





論点は、7年前から現在へ移る。
心音を告発する王泥喜に、成歩堂所長は受けて立った。

確かに、心音に腕輪の反応があったという王泥喜の疑念は、もっともな話ではある。
ただ、要するにコレ、彼ら二人が腹を割って話し合えていたら、
それで解決していたかもしれないのだ。
お互いに疑心暗鬼になっていた感も否めない。


だが、そこにあのライターの問題が立ちはだかる。
混乱困惑した末に、王泥喜が取った手段は、成歩堂所長に託すという事だった。

言うなればコレは、『逆転裁判4』第1話の鏡合わせだ。
かつて成歩堂先生に苦しめられた王泥喜からの、成歩堂所長への意趣返し。

王泥喜「オレの中の疑惑を……打ち破ってほしいんです!」
     「オレは……希月さんのことを、信じたいんです。
     でも、盲目的に信じるだけじゃだめなんだ」

その通りだ。
何度でも言おう。「信じる」と「疑う」は全然違う。対義語じゃない。
信じてるからこそ疑い、問いただす気持ちをも持つのが、本当の仲間なのだ。



真犯人の逃げた道。
それは常識の外側だった。
「ふつうの人」には出来ない事を、彼はした。
成歩堂所長なら、PC(プレイヤーキャラクター)なら、
作外のプレイヤーなら、その心理を理解できる。



だって出来たんだもの論理的にはその人は。



無限にコンティニューすれば良いのです。
崖から落ちようとも。旗を取れずとも。
そうすれば、いつかは叶う。どこかの周回で。

真犯人の正体も、自動的に導かれた。
儀式は終わる。もうすぐ終わる。
しかし、閉廷の時間は、まだ遠い。





控え室にて。
王泥喜と心音は、やっと本音を交わし合う。
御剣局長から、かぐやが投降したとの吉報も届いた。
夕神姉弟も、とうとう和解したわけだ。

そこで夕神、今度は自分が検事席に立ちたいと、御剣局長に申し出る。
そこで成歩堂所長、今度は王泥喜を助手ポジションに所望する。
これもまた、『逆転裁判4』第1話の鏡合わせだ。
そして同時に、王泥喜の能力完全解禁の前兆である。



さて開廷。
いつもと全く変わらぬノリの証人に戸惑いつつ、尋問開始。
にっちもさっちも行かない相手に、王泥喜が動いた。
夕神「気に食わねェが、状況が状況だ」
と、夕神の許可も得て、今回限りの「みぬく」タイム開始。

それで色々わかってくるが。
「わけのわからんことを!」
「そんなの言いがかりだろう!」

と、ある種当然の反論をされる。
あ、やっぱり、「みぬく」は法廷パートで使っちゃダメだわ。
なので、証拠品そのもので謎を解くスタイルに戻る。


話は単純。
捜査官なら、幾らでもトリックを量産できる。
世にあふれるミステリに、掃いて捨てるほどある基本の答えだ。

追いつめられた証人は、自らの身分を明かす。
秘密裏に動いていた捜査官だったのだと。

思い出す。
私がかつてこちらで述べた仮説を。
この世界には、人知を超えた組織があると。

そこに心音が再び乱入。
弁護人席は、三人が並び立つ事に相成った。



夕神にも推される形で、ココロスコープ発動。
証人は小細工を重ねて逃れようとするが、限界は近い。

だから惑わせる。
自ら語らず、傍聴人の声を聞かせる。
その混乱を、裁判長が正した。


裁判長「確かに法廷において、感情は証拠品ほどの説得力を持ちません」
     「しかし、希月弁護士の心理学が、真相の解明に協力したことも……また確かなこと」
     「私は希月弁護士の主張を、信じます」
と、新たな尋問を請求した。

これが、揺るぎない真実だろう。
証拠能力が有るか無いか、だけを論点にするから、大切な事が見えなくなる。
話し合うためのきっかけとして機能するなら、変則が許される面もあるのだ。

それに、「みぬく」は個人的主観に過ぎないのに対し、
ココロスコープは客観的に可視化されている点も大きいだろう。



成歩堂「法の暗黒時代の始まりには、ぼくたちと……《亡霊》がいるんだ」
と、成歩堂所長は、証人へ詰め寄っていく。

「亡霊」のDNAが残された証拠品。
それはどこにも存在しない。存在しなかった。
つい先日、還ってきたのだ。
あの現場で起きたからこそ出来た、豪快にして壮麗なるトリックが、
またも明かされたのだ。



そんなこんなで、膠着状態に陥ったところを、舞い戻った御剣局長が制した。
証人は、全てを偽っている。
刑事を殺し、容姿と身元を奪い取り、成り済ました。
だから、彼には素顔もない。
何重にも、他人の顔をただただ徒(いたずら)に弄ぶ。
こんなに変装できるなら、トリックに活用すればいいのにね……ってのは野暮なツッコミですか。



「亡霊」のDNAが残された証拠品。
粉々に砕けたと思われたそれは、他の物と紛れていた。
いよいよ、最後の儀式が迫る。

法廷に凛と響く、「異議あり!」宣言(コール)と共に。
証言台に立つ、一つの姿があった。




自然な感情を持ち得ない人間。
現実には有り得べからぬ存在。

その正体を、私たちプレイヤーは知っている。
私は、こちらで昔から述べている。
感情を持たないのは、PCならではの特徴だ。

そうだ。思い出せ。
7年前の法廷を忘れるな。
私たちプレイヤーの意志から外れて手記を出し、破滅していったあのPCを忘れるな。
誰も見抜けぬ見破れぬ、其れは正しく希代の役者。
証言台の彼こそは、時を超え、世界を超えて顕現した、あの時のPCの成れの果てだ。


作者から読者へ押しつけられた駒(こま)と。
作者に捨てられて読者に救われたPCと。
二人の同一人物が今、対峙した。
そう独自解釈をして、私は読者としてPCとして、神である作者へ叫ぶ。



ぼくは今、本当の意味で、あなたに反逆する!



同じくPCとして、王泥喜と心音も加勢する。
一人では足らなくても、二人なら戦える。
二人なら成歩堂に並べる。二人なら成歩堂を越せる。




真なるPCは、創られた駒へ、最後の証拠品を突きつけた。

さようなら。
ぼくは、きみではなくなります。
きみは、ぼくではなくなります。

ぼくは、きみの罪を赦したい。
ぼくは、きみの罪を贖いたい。
ぼくは、きみの罪を滅ぼしたい。

だけど、もう終わりの鐘が鳴る。
雫れ落ちていた、世界のカケラが消える。
全ての罪を押しつけられたきみを、ぼく達は、”殺す”。





心音「もう逃げられませんよ! 正体を現してください!」
王泥喜「その無感情の仮面をぬいでもらいましょうか!」
成歩堂「あなたの本当の顔で……」

『あなた自身の罪と向き合うために!』

弁護士×3(トリプル)攻撃で、彼は、倒れた。




この段落は、完全に私の夢想だ。
撃たれて伏した「亡霊」の最後の顔は、成歩堂のそれだったのではないかと思う。
DNAなどの身体情報も何故か、本物の成歩堂と同一で。
その理由を、成歩堂と御剣だけは知っている。
運命の向こう側を知る、彼らだけは。
(この仮説に基づいた当方の二次創作がこちらにあります)




本題に戻ろう。
「亡霊」は捕縛された。
これで心音も完全に解放されたのだ。

閉廷後は、穏やかな全員と共に、いつも通りの終わり方。
後日、星成の打ち上げを見守る人々の姿が描かれて、この度の物語は終わる。





――我が愛しの名探偵よ、安らかに眠れ。
次なる戦いの時まで、どうか一時の休息を――。




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