この章について述べるのは辛い。
以下の指摘をしなければ、先へ進めないからだ。
この『大いなる逆転』(前編2)の構造は、
『逆転裁判2』の『さらば、逆転』と酷似しています。
『逆転裁判2』未プレイの方は、全力で回避願います。
オマージュ・リスペクト・サンプリング……などを名乗るなら、
元作品を超えるのが、超えようとするのが義務。
だがしかし。御剣と美雲が傍聴した裁判からして、この末期症状を見よ。
1.弁護人の信楽。
裁判官や検事との馴れ合い会話。公私の区別つけて下さい。
2.検事の冥。
証拠品を確かめないまま出廷。Rボタン押して下さい。
3.被告人の美和所長。
発言を慎むように。「異議あり」は論外。
そんな彼ら以上に重罪なのが、この人だろう。
4.裁判官の水鏡。
被告人の言いたい放題に任せ、躊躇なく無罪判決を下そうとした。
それも「証拠品がないなら無罪」と、一見理屈の通った、
しかし実際には非常識極まりない根拠からだ。
水鏡「裁判官は、公平な判断を下さなければなりません。
そこに、私情がはさまれることがあってはならない……のです」
今まで散々私情で動いておいて、今もまた私情で動いていて、何をか言わんや。
冥と信楽の申し出で、一時休廷となったのが一応の救いだ。
さて。
御剣たちがこの裁判所に来たのは、暗殺事件を解くためだったはずだが。
所長どころか、草太やミリカまで現れて、様子はすっかり第2話そのもの。
と言いますか、ミリカの態度が『逆転サーカス』の時と同じってのは如何なものか。
ミリカ「楽しいショーが見られるって聞いてきたんだよ!」
「あはは! ソウタくん、またつかまっちゃいそうだね!」
……まさかこの子も記憶喪失になってるんじゃあるまいな。
あのピエロが見せた裁判では、号泣してたよね確か。
とゆーわけで。ここからは自由行動。
やたら御剣をニュースキャスター呼ばわりする冥はともかく、引っかかったのが信楽の態度。
信楽「だれか、証拠を探してくれる人がいればなあ」
と連呼するより、真摯に頭を下げてほしい。
「信楽さんの頼みを聞くべきだろうか?」みたいな選択肢も欲しかった。
結局。裁判の方は冥と信楽が出来るだけ引き延ばし、
その間に御剣たちが証拠品(を持ってる弓彦)を手に入れてくるという結論に。
草太とミリカも、証拠品探しの協力を申し出た。
と、そこに会いたい本命――水鏡が登場。
まずは取りあえず、暗殺事件について問いただす。
話を拒む彼女に、御剣はチェス盤を用意。
何か隠してる事はないかと探ったら、想定外の情報が乱入してきた。
大統領の話はどうでもいい。弓彦の話もどうでもいい。
今の水鏡の頭にある事柄は、一つだけ。誘拐された相沢詩紋の安否だけ。
水鏡「………………わたくしと、シモンは……”親子”なのです……」
まーた親子かよ。と、醒めたツッコミを入れた後、矛盾に気づく。
水鏡は26歳、詩紋は13歳。年齢が合わない。
名字が違うのは、「相沢」が芸名であるとかで筋は通るが。
その後。明るみに出た異常事態。
水鏡「裁判が始まる直前に、誘拐犯からの電話が……」
「要求はただひとつ。美和マリーの“無罪判決”ですわ……」
「わたくしは、裁判官失格ですわ……」
「さきほどわたくしは……自分のココロだけに従って判決を下そうとしてしまった!」
ああ。失格だな。
いかなる事情があっても、それは反省しなければならない。
てっきり、こういうやり取りがあるんだと信じていた。それなのに。
美雲「親が……子供を見捨てられるわけないじゃないですか!」
御剣「自分の息子をギセイにした判決などダレにも下せはしない」
誰も叱責しない。
身内を守るためなら、他人に迷惑をかけても仕方ない――と考えるような人は、
他人を守る職業に就くべきではない。
そもそも、「身内をとるか、他人をとるか」という問いは、
少なくともこの彼らように、簡単に結論を出せる物ではない。
実際、『さらば、逆転』での成歩堂は、もっともっと深く悩んでいたはずで。
で、そんな成歩堂を目の当たりにしていた御剣だって、心を痛めていたはずで。
なのに、なぜ今回は、これほど同調してかばう一方なのか。
もしや、実は誰も水鏡本人のためを思ってないんじゃないかと邪推したりして。
ただ、不幸中の幸いは、(冥と信楽のおかげで)まだ判決が出ていない事。
つまり、証拠品よりも前にまずは、詩紋を無事に保護できれば、事は前へ進むのだ。
御剣と美雲は、水鏡の携帯電話を借り受け、詩紋の捜索に乗り出した。
タイムリミットは、約2時間だ。
三度目の「ビッグタワー」の広場にて。
美雲「ノリ悪いですねー」
と、むくれる美雲を引き連れて、御剣は詩紋の行方を探る。
とゆーわけで。ここからは自由行動。
ここで注目すべきは、広場を出入りしていた青いトラックと、今も停車している青いトラックと。
(同色でヤヤコシイが別物なので注意)
トラックのエンジンが冷めているのを確かめた後、アクション俳優・荷星三郎と再会。
今回もやはり、ボルモスの着ぐるみに入っているとの事で。
もうすぐ空き地での建設工事が始まる件や、またもナツミがウロついてる件などを聞いてから、
詩紋が近づいていたというロケバスをチェック。
分かった事は、機材を入れる大きな箱の紛失と、詩紋の昨夜の練習を記録したテープの存在と。
そんな風にウロウロさまよっているだけで、刻々と過ぎていく時間。
時計を見ると、既に30分が経ってしまっている。
脱線は更に広がる。
ナツミだけでも厄介だったところに、ミキコまでも加わって。
第2話だけじゃなく、第1話まで混ざってしまった。
声をかけると、どうやらミキコ、暗殺事件の不要因子として弾き出されてしまった模様。
御剣が詩紋の写真を見せようとすると、
ミキコは見る前に遮って、自分の見た誘拐事件を話し始めた。
ただし。結論を先に言うと……、
ここで御剣とミキコの間に大いなる食い違いが起こってるわけで。
この場面におけるロジックスペースでの思考は、空論に過ぎない。
この時点ではまだ、詩紋の足取りは不明のままなのだ。
それでもとにかく、話は進む。
御剣と美雲は、タクシーの協力を受け、アヤシイ人物たちの向かった場所へ急行する。
ところが。爆走のタクシーが到着したのは何故か、万才の自宅だった。
ガレージに入ってみると、確かに箱がソコにある。土で汚れ、すり切れた手袋と一緒に。
他の調度品も一通り調べると、ストーリーは強制進行。
ゴトゴト動く、奥の扉を開けてみると、居たのは詩紋――ではなくて。
目下行方不明中の弓彦だった。
あらゆる希望を失って、心を閉ざす弓彦。
御剣は弓彦に、いつものチェス盤で、カウンセリングを試みる。
あるいは、傾聴ボランティアと言った方がいいかもしれない。
そのじつ、弓彦の受けていた傷は深かった。並ぶ敵駒も、最大値の5個だ。
弓彦「お、オレにだけ……オレだけが、何も知らないでバカにされて……!」
言って流すのは、悔し涙か。
だから御剣は、弓彦の間違いを正す。
自分一人でも、立てるように。
父親に引きずられなくても、過保護な奴がいなくても、歩けるように。
その上で、誘拐の事情を整理していく。
弓彦は、万才の手下によってさらわれた。
水鏡の知人として、詩紋と間違われたのだ。
そして万才は、所長を無罪に持ち込もうと企んだ。
弓彦が預けていた証拠品までも隠して。
御剣は訴える。
御剣「私も、真実を知ろうとせず、逃げ続けていた時期があった。
だが……ある友人のおかげで、その間違いに気付かされたのだ」
「検事を続けるかどうかは、自分自身で決めるのだ!」
「キミの道を決めるのは、自分でしかない」
「もっと自信を持ちたまえ! 一柳検事!」
さあ、これで今度は、弓彦と協力だ――!と思ったのも束の間。
何故か弓彦、また全力疾走して失踪。
よって御剣たちは、四度目の広場へ。
既に時間は、1時間15分が経っている。
そこで御剣、裁判中の信楽に連絡を入れる。
当の御剣自身、『さらば、逆転』の時には、即刻電話切ってたのに。
まあ確かに、こんなぐっだぐだの裁判に、いまさら文句つけても仕方ない気もするが。
信楽「凶器がないから被告人の有罪を証明できないわけだよ」
冥「凶器がないからといって、被告人が無罪とは限らないわ!」
……これだけで75分もってたようです。
ともあれ、御剣は電話越しに信楽に、捜査の進捗を説明。
信楽は万才の召喚に打って出る事に。
一方、御剣は改めて証拠品の確認。
走り去ってしまった弓彦の足取りを追って、「ビッグタワー」の倉庫へ向かう。
とゆーわけで。ここからは自由行動。
前回は茜と歩いた場所を、今度は美雲と一緒に。
因みに美雲、「サルマゲどん」の名前を正確に知っていると判明。
……もうここまで来ると、たぶん御剣、今後一生、間違えて覚えたままなんだろうな。
ここで調べるべきは、開け放されている金庫。
中にあったのは、内藤の写真と、彼の私物である指輪やチェスボード、
そして美和所長の記した書類。
「12年前、《花壇の手前側》に眠らせた例のモノは、回収しておいてね」
また「12年」。
以上の品をGetして、屋上へUターンすると、コロシヤと再会。
屋台の店主に化けていたという事は……第4話の時から潜んでいたわけか。
そのコロシヤの目的も、ある意味、御剣たちと同じ。
事件を裏から操っている黒幕を見つける事だ。
ただしコロシヤとしては、あくまでも依頼主へのお礼参りという形になるが。
三日前の夜に了賢が脱獄したという情報を添えて、コロシヤは屋上から立ち去った。
五度目の広場。
水鏡の携帯電話の着信に応じる御剣。
その通話相手こそが、御剣たちの求める黒幕当人だった。
コロシヤに依頼をし、美雲をさらい、万才に籠目を殺させ、詩紋をさらった張本人。
どころか、何と美雲のバッジに盗聴機まで仕込んだという徹底ぶり。
コイツ一人で何役やる気だ。
そこに転けて来たミキコと話をする事で、やっと双方の食い違いを明らかにして。
今度こそ詩紋の捜索開始。
時計を見れば、既に1時間40分が経っている。
とゆーわけで。ここからは自由行動。
まず、ミキコから改めて事情聴取。
何でも彼女、あちらこちらからの無線を傍受していたところ、
ボルモスが炎を吐く音を記録したそうで。
美雲たちの盗聴された様子も録音されているそのテープを、御剣はGetする。
すると、そこに戻ってきた草太とミリカと、あとルーサー。
考えてみれば結果的に、彼らに弓彦探しを頼んだ意味はなかったわけだ。
というより、そもそもこの人たちって、
何の意味があってこんなに出番が多く………………………………あ。
この時、ふと思いついてしまった。1周目当時。
こんな風に、大きな役割を与えられていないにも関わらず、
ひんぱんに登場する人物こそ、意外な犯人の最有力候補者なのだ。
サーカスの公演に向け、
「バルーンに乗って、いっぱい宣伝もしてくれた」(byミリカ)という草太を、疑いたくはないけれど。
何ら信用ならない今作では、「依頼人の潔白」さえフェイクと化す可能性は否定できない……。
なお、草太たちが探していたエリアはというと。
草太「《ひのまるコロシアム》の周りです」
「イベントで人がたくさんいたので、もしかしたらと思って」
そこで御剣、黒幕からの電話に聞こえた破裂音を思い出す。
敵は、花火の上がるような場所に潜んでいるのかもしれない。
以上の会話を済ませた後で。
タクシーの陰にいるイトノコ刑事と、気まずい対面。
糸鋸「自分は、御剣検事がいなくても刑事ッス!」
「刑事は、検事のためだけに捜査するんじゃないッスよ」
「自分は、ヒトリで捜査できるようになるッス」
と、自分なりに考え抜いて、一刑事として生き抜こうとする糸鋸を、御剣は呼び止める。
御剣「検事としてではなく、友人としてお願いする……。
イトノコギリ刑事……チカラを貸してくれないだろうか?」
「友人」言った!
命令でなく、対等な立場で頭を下げられて、逆にノコさん恐縮至極。
糸鋸「自分にアタマを下げる御剣検事は見たくないッス!」
御剣「感謝する……」
と、お互いにわだかまりを無くし、改めての協力関係に。
イトノコ刑事からもたらされた情報は、どれも有力だった。
一つは、ひょうたん湖でさらわれた時の美雲の詳細。
糸鋸「《スヤミン3Z》という、きわめて強力な睡眠薬の成分が出たッス!」
OK。それなら商品名ですね。それならセーフ。
……って、いったい何と戦ってるんだ私は。
もう一つは、「ビッグタワー」のエレベーターに付いている監視カメラの画像。
しかし、事件前である一昨日の分から総点検しても、美雲の姿は確認できなかったというのだ。
そんな地道な努力を重ねているイトノコ刑事に、御剣は詩紋の捜索を依頼する。
仮にも捜査権を持っている味方に、相談するのは当然の事だ。
するとイトノコ刑事、何と詩紋を目撃していた。
その話に従って、「ビッグタワー」のゴミ捨て場を確認。
確かに、詩紋がココに来ていたのは間違いない。
そこで御剣、広場を出入りしていたトラックの件を思い出す。
ゴミ捨て場の錠が開けられ、ゴミが全て回収されている事を踏まえれば……
詩紋の行方は自ずと見える。
目指すゴールは、花火の聞こえる収集所だ。
糸鋸「非公式の捜査にはなるッスけど……自分のツテのある警官たちに手伝ってもらうッスよ!」
そうこうしている内に、タイムリミットの2時は刻々と迫り、そして過ぎていく――。
万才のいる法廷に、トコトコ走って参上した我らが御剣。
そんでもって、
御剣「キサマと美和所長の関係を示す証拠品があるとしたら?」
しれっと検事席――冥の隣に陣取って、
イトノコ刑事と美雲が詩紋を見つけつつある事を水鏡に訴える。
しかし万才は、御剣の追求に黙秘。変わらず、水鏡への脅迫を続ける。
万才「水鏡くんさ。さっさと無罪判決出して終わらせちゃってよ」
と、暴虐を尽くす魔王に向けて―― 一条の光が法廷を貫いた。
弓彦「あ、新しい証拠を持ってきましたッ!」
左右反転は味方の証。
駆けこんで来た弓彦は、恐怖に打ち震えながら、検事として父親と対峙する。
時を同じくして、ケータイ3台分の合奏も鳴り響いた。
イトノコ刑事から御剣へ。美雲から信楽へ。
そして、水鏡の携帯電話にも、吉報が届いた。
コレを境に。息子のために暴走していた邪神の僕(しもべ)が覚醒する。
水鏡「……審議を継続いたしましょう。
これで、思う存分木槌をふるうことができますわ」
冥もまた、ピンチヒッターの役目を終えて、弓彦にエールを送る。
冥「“自分の父親と向き合うこと……”。カンタンではないでしょうね。
どうなるものか……高みの見物をさせてもらうわ」
ただし。肝心の証拠品――了賢のナイフや、内藤のノミなどは、
万才がことごとく廃棄してしまった後だった。
ゴミ処理場まで駆けずり回った弓彦が手に入れたのは、
新聞紙にくるまれていた鈴一つ。
だが、その新聞紙こそが、新しい道を拓く。
刻まれていた痕が、暴くべき犯罪の悪臭を放っている。
あと一点だけを指摘すれば、それで終わる。全部終わる。
弓彦「ダメだなあ……オレはやっぱり一流にはなれないや」
と自嘲する弓彦。
そんな彼の耳元に、御剣はささやきかける。(←推定)
御剣「…………………………勇気を……出したまえ」
そして。
御剣に背中を押されながら、弓彦は最後の矢を射った。
泣き濡れながらも、倒すべき敵に引導を叩きつけた。
弓彦「最後まで、オヤジには嫌われていたけど……。
オレにとっては……ずっと、尊敬する父親だったよ
いままでありがとう。…………さようなら」
さて。やっとこ、美和所長の命運も尽き果てたわけで。
美和「バンサイ、何をやってるのよッ!
アンタが! アンタが……無罪なんて真実なんていくらでも作れるってゴウゴしてたから!
だから刑務所の事件のあとも、真っ先にアンタに連絡したのに!
あたくしの裁判に合わせて子供までさらっておいて、何てことなのッ!」
ぺらぺらぺらと真相を、自分の口から喋ってくれた。
かくて、長きにわたる事件は終わりを告げた――と思ったのは早計だった。
狼「ミカガミ裁判官。まだハッピーエンドには早すぎるぜ」
美和「ロウ……? あなたまさか……12年前の……?」
狼「12年の執行ユウヨは長かったな」
「12年前の《SS-5事件》……。オレにとっちゃ忘れなられねえ事件さ」
また「12年」。
だがしかし。乱入してきた狼の差し当たっての本命は別にある。
王帝君暗殺事件の方だ。
確かに、言われてみればその通り。
そもそもはこっちも、そっちの事件を追っていたはずなのだ。
……あまりにも遠くへ来すぎて、危うく忘れそうになってたけれど……。